【伝奇】東京ブリーチャーズ・肆【TRPG】 [無断転載禁止]©2ch.net
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201X年、人類は科学文明の爛熟期を迎えた。
宇宙開発を推進し、深海を調査し。
すべての妖怪やオカルトは科学で解き明かされたかのように見えた。
――だが、妖怪は死滅していなかった!
『2020年の東京オリンピック開催までに、東京に蔓延る《妖壊》を残らず漂白せよ』――
白面金毛九尾の狐より指令を受けた那須野橘音をリーダーとして結成された、妖壊漂白チーム“東京ブリーチャーズ”。
帝都制圧をもくろむ悪の組織“東京ドミネーターズ”との戦いに勝ち抜き、東京を守り抜くのだ!
ジャンル:現代伝奇ファンタジー
コンセプト:妖怪・神話・フォークロアごちゃ混ぜ質雑可TRPG
期間(目安):特になし
GM:あり
決定リール:他参加者様の行動を制限しない程度に可
○日ルール:4日程度(延長可、伸びる場合はご一報ください)
版権・越境:なし
敵役参加:なし(一般妖壊は参加者全員で操作、幹部はGMが担当します)
質雑投下:あり(避難所にて投下歓迎)
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http://mao.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1496836696/
【東京ブリーチャーズ】那須野探偵事務所【避難所】
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/9925/1483045822/ ゚+。*゚+。。+゚*。+゚ ゚+。*゚+。。+゚*。+゚ ゚+。*゚+。。+゚*。゚+。*゚+。。+゚*゚+。。+゚*。+゚ その夜――ノエルはお仕置きの一環としてポチを抱き枕にして寝ていた。
夢の中で、深雪が何者かに話しかけていた。
「おい、そこにおるのだろう? ポチ殿を壊したらただではおかぬぞ」
「――何? ヤキが回った? ヘタレのノエルにほだされただと!? 笑止!
人間などどうでも良い、我はただモフモフした動物が好きなだけだ!
そなたがまた楽しい共食い牧場を始めたらシャレにならぬから言っておるのだ!」
「それと一つ忠告してやろう。あの人間には気を付けよ。読む鈍器で殴り殺しにされかねぬ」
そこにノエルがやってくる。
「深雪……誰と話してたの?」
「さあな――"誰"というべきか"何"というべきかも分からぬ。
実は我もクリスの中にいた頃はこのような明確な姿と自我は持っていなかったのだ。
"人間を殺せ"――というただ漠然とした思念だけがあった」
「お母さんは記憶操作の杖で君をお姉ちゃんに預けた。だとすれば君は"記憶"――なんじゃないかな?
間引かれてきた雪ん娘達の記憶、そして――今日までの人類が雪に抱いた恐怖の記憶」
人間の思念が妖怪を生み出すこの世界において、記憶とは力そのもの。
記憶なら、時に人格を持っているかのように振る舞ってもおかしくはない。
「記憶……か。そうかもしれぬな。
ところで――あの場にいた他の者は気付かなかったかもしれぬが、お前は気付いたな? あの夜、絶対の楔が一つ打ち砕かれた」
他でもない、人狼は銀の弾丸以外では倒せない、という法則のことだ。
「あの場にいたうちのお前以外の誰かが運命を変えたのだ。"運命変転"――それは世界法則を乱す力。
お前のような世界法則の範疇におさまった純粋な存在は決して持たぬ力だ」
あの時、運命を変えたのは誰――? まず思い浮かぶのは祈だ。
雪妖界の価値観では人と妖が交わるのは禁忌であり、子を成すのは大変珍しい事象である。
増してや二代続けてなど、イレギュラー中のイレギュラー。
続いてポチ。彼もまた、送り狼とすねこすりという異色の混血。
大きく分けて犬系とは言えど、あらゆる意味で違いすぎて普通はなかなかそんな仲にはならないはずだ。
それとも、意表を突いて尾弐かもしれない。きっと彼は昔人間だったのだ。
古傷だらけなのは、未だに純粋な妖怪になりきれていない証拠ではないのか。
考えを巡らせるノエルに、深雪は意味深な忠告をするのであった。
「くれぐれも気を付けよ、希望とは最大の災厄なのだから――」
゚+。*゚+。。+゚*。+゚ ゚+。*゚+。。+゚*。+゚ ゚+。*゚+。。+゚*。゚+。*゚+。。+゚*゚+。。+゚*。+゚ そんなこんなで。
温泉と料理を思う存分楽しみ、従者達と母親にお土産もたくさん買い、(今度は送り狼マスコットを購入)東京に戻る日がやってきた。
ちなみにポチがいつシロにアタックするのかと楽しみに見ていたが、ついにアタックどころか話しかけもせずに終わってしまった。
まあそんなものさ、幸い彼らは妖怪、時間ならいくらでもある、と思うノエルであった。
>「シロのことは、儂らに任せておけ。ここなら人間の目は届かん、徐々に新しい環境に慣れることもできるぢゃろう」
>「シロ……。皓。それが、わたしの名前ですか」
>「……わたしには、その名がいい名なのか。悪い名なのか。それはわかりませんが――」
>「誰かに名を呼ばれる。というのは、よいものですね」
「皓はね、雪のように穢れなく輝く白って意味なんだ。とってもいい名前だよ!」
ポチの葛藤も知らずにあっさりと言ってのけるノエル。
>「……東京ブリーチャーズの皆さん。今回のことは、お礼のしようもありません」
>「あなたがたはわたしを救い、そして狼族そのものを救ってくれました。どれだけの感謝をしようと、到底足りるものではありません」
>「もし、わたしに出来ることがあるのなら――いつでも仰ってください。どこへなりとも馳せ参じましょう」
>「それが。仲間の温情に応える、わたしの新しい誇り……ですから」
「いやあ、そんな大層な! ……シロちゃん?」
シロがポチに歩み寄り、そっと身を寄せる。これは急展開来るか!?と息を飲んで見守る。
>「……くれぐれも、ご無理はなさいませんよう。皆さんの仰ることをよく聞き、決して独断で行動してはなりません」
>「特に。今回のような捨て鉢な戦いは、二度としてはいけません。……約束できますね?」
>「あなたの身体はもう、あなたひとりの身体ではないのです。あなたは、これからの狼族を背負って立つ者――」
>「あの方と。そう、約束したのでしょう?」
いい事を言ってくれた! と思うノエル。流石のポチもシロに言われれば素直に言う事を聞くだろう。
>「……げはははは。あぁ、そうさ。そう誓った。
君にも、ちゃんと約束するよ。僕は、君とアイツに恥じない狼で在り続ける。
君を、皆を守る為のこの命を、粗末にしたりしない」
そして、これだけでは終わらなかった。 >「……それに。東京漂白が成った暁には、あなたには是非発奮して頂かなくてはなりません」
>「たった二頭のニホンオオカミを、これから。あなたとわたしで、もっと増やしていかなければならないのですから。……ね」 シロ、まさかの爆弾プロポーズ発言である。しかもシロはその辺から湧いてきた系の妖怪じゃなかったっけ。
今までたった一人で生きてきたのに何というかその辺のことを分かっているのだろうか。
ちなみにノエルは人間も動物もその辺から湧いてくるものだとこの前まで思っていた。
(雑種? 何か二種類混ざっちゃったけどまあいいや的なノリで湧いてくるという認識である)
「ちょっとシロちゃん、大胆過ぎるよ! 意味分かって言ってる!?」
これにはポチも狼狽しきっているのであった。狼だけに。
>「……へっ?え、えっ?ちょ、ちょっと待って」
>「僕、まだ君に何もそういう事言ってないし……あ、いや、嫌な訳じゃないんだよ。
ただそういうのって、僕の方からちゃんと……」
>「――ご武運を」
>「う……うん、ええと……が、がんばってきます……」
――良かったね、ポチ君!
ノエルはそんな仲睦まじい二匹を、自分には無縁の世界だけどなんかいいな、と思って見ているのであった。
ポチにとってはこれからが本当の闘いなのかもしれないけれど。
帰る場所が出来たのだから大丈夫、そんな風に思えた。
「シロちゃん、必ずポチ君を無事に君の元に帰すからさ……ちょっとの間、借りるね!」
そう言ってしまってから、しまった――またうっかり無謀な約束をしてしまった、と一瞬後悔し、
でももうポチ君も捨て鉢な戦いはしないらしいし、まあ、いいか――そう思うノエルであった。 糞はいかなるときも
して良いときにすることを許されている
これを「脱糞権」という
ゆえに、今日も俺はここで糞をする
ブリブリ >「せめてポチ君を待ってあげて……」
「……あの化物が動き出したら俺達は全滅する。直ぐ殺すべきだ」
雪妖の導きと悪鬼の誘い
慈悲持ち己の手を以って殺すか、或いは目を瞑り全てが終わりを迎えるのを待つか
悪意すら感じる選択肢を付きつけられた少女が出した答えは
>「御幸も尾弐のおっさんも、あたしがどんな奴かってのをいまいち分かってねーよな」
>「ポチと勝負しろ、狼王ロボ。ポチの牙に堪え切れたらお前の勝ち。でも傷を受け、血を三滴でも失えばお前の負けだ」
どちらでもない。『選ばない』という答えであった。
他人に与えられた選択肢をなぞるのではなく、誰も知らぬ第三の答えに手を伸ばす
それこそが祈という少女が導き出した、唯一無二の解。
「おい……待て嬢ちゃん。お前さん、自分が何しようとしてるのか判ってんのか?そんなリスクを背負いこむ必要、ねぇだろ」
その答えを前にして、尾弐が見せた感情は戸惑いであった。
己が手に委ねられたのであれば、正しく本懐を遂げた。
祈が弾丸を撃ったのであれば、納得はした。
だが、これは。祈が選んだ、狼王を救うと言う選択は、尾弐にとって理解の範囲の外に有った。
妖壊……或いは災厄の魔物は、人類の天敵だ。
数多の人の命を奪い、絶望を、悲しみを、憎悪をまき散らしてきた存在だ。
無垢な子の命を、子を守る親の命を、人生を共にした友の命を、人類は彼らから理不尽に奪われ続けてきた。
だからこそ、人類は彼らを憎み排斥する――――その義務と権利がある。
だというのに、眼前の少女は彼の存在を救おうとする。
……もし、それが。手を血に染め、他者の幸福を喰らい、罪なき者達を無造作に殺めた存在が、救われる事が許されるのであれば
「……っ」
唐突に胸の内に浮かびあがってきた、自分のものではない感情を尾弐は己の頬肉を噛み切る事で封じ込める。
そうして、ポチと狼王へと視線を向けて見れば……そこには、尾弐にとって目を背けたくなる光景が広がっていた >「――ああ――。今、やっと気付いた……」
>「オレ様はずっと、今までずっと――」
>「ずっと、壊れていたんだな……。群れを喪い、ブランカを喪い、そして……自分自身の心さえ喪った、あのときから……」
確かに届いた、ポチの牙。血を滴らせる狼王
>「……オレ様の負けだよ。坊主」
ポチへと……時代へ繋ぐ様に吸い込まれていく膨大な妖気と、まるで、救われた様なその表情。
>「……いい群れだ……、羨ましい、群れだな……」
>「オレ様は、守ることしか出来なかった……。守ってやることばかりを考えて、仲間たちの力をまるで信用していなかった……」
>「だが、それではいけなかった……。群れの仲間たちは……みな、守り守られて……支え合って、生きていくもの……だったな……」
>「……気付くのが、ちょいと遅すぎたがよ」
毒に侵され、己の力を譲り渡しケ枯れ、見上げる程の巨躯も縮み……だがそれでも
>「だがな――オレ様はテメエらの手にはかからねえ。オレ様は狼王ロボ!王には王の死に方ってモンがある!」
>「見な!『ジェヴォーダンの獣』の最期ってヤツをな……!」
それでも失われる事のない誇り高き姿
銀の弾丸ではない。自らの手で、自らの意志で己を終わらせるという狼王の覚悟
>「……負けるなよ。無様は晒すな……おまえらは、この狼王に勝った。次の時代の王者……なんだからな……!!」
>「ああ――言われなくたって」
>「……おやすみ。狼王……ロボ」
その壮絶な結末を。東京ブリーチャーズの面々の中で、ただ一人、尾弐黒雄は見届ける事をしなかった
途中で背を向け視線から外す事で、彼は狼王の最期から逃げた。
それは、これ以上を直視してしまえば、己の中のどす黒い何かを抑えきる自信がなかったからであり――――
>「……“彼”は。救われたのでしょうか」
>「……あぁ、勿論さ」
そうであるが故に、狼王が救われたか否か。シロが発したこの問いに尾弐黒雄は答える事は出来ない。
「――――ああ、畜生」
だがそれでも、二頭の狼の遠吠えが響く中で尾弐が吐いた悪態は、確かにそこに救いが有った事を示していた。 >「いや〜っはっはっはっはっはっ!失敗失敗!今回ばかりは、さしものボクも死ぬかと思いました!」
>「まあでも、結果オーライ!こうして当初の目的通りにシロさんも救えましたし、ロボも倒せました!何も問題はないですね!」
>「んじゃ、ノエルさん!卓球やりましょう!卓球!卓球で汗をかいて、温泉に入る!やっぱりこれが最高ですね!」
>「……橘音ちゃんってさ、実は尾弐っちよりタフだったりしない?僕なんてまだ首と背中が痛いよ」
>「"いや〜っはっはっはっはっはっ!"じゃね――――――――――――ッ!!」
「はっはっは。まあ、アレだな。こんだけ小気味よく適当に流されたら、さすがのオジサンもいい年して年下の頭を引っぱたきたくなってきたぜ。
というか叩かせろ那須野。俺が言うのもなんだが、お前さんどれだけこいつらに心配かけたと思ってやがんだ」
あっけらかんとした声で笑い、卓球のラケットを団扇代わりにする那須野橘音に投げつけられたのは、東京ブリーチャーズ総出によるツッコミであった。
その勢いは怒涛のもので、あのノエルがボケではなくツッコミに回る程である。
……しかし、ブリーチャーズのこの反応も当然と言えば当然であろう。狼王との戦闘の後、文字通り半死半生の状態で発見された那須野が発見された時は、文字通り修羅場であったのだから。
基本的に人間の社会常識に則った行動を心がけている尾弐が、治療を急ぐあまりに那須野を小脇に抱え、河童の運営する病院の天井をぶち抜いて診察エントリーした事が『ほんの一例』である事が
その混乱具合を明確に示しているだろう
>「さー、慰安旅行のやり直しです!お風呂に入りまくって!卓球もやりまくって!おいしいごはんを食べまくりましょう!」
だが、そんな不穏な空気もなんのその。
相変わらずの掴み所がない様子でのらりくらりと言葉を躱した那須野の提案により、
富嶽への報告もかねた慰安旅行後半戦は行われていた。
温泉宿で卓球のラケットを振るい、インフレしたスポーツ漫画じみた魔球が放たれたり、
尾弐がスマッシュを以って那須野の仮面へ向けて卓球のボールを叩き込んだりと、一頻り汗をかき……
と、そこで狼犬の姿に戻ったポチがとことこと尾弐とノエルの元へと歩み寄り口を開いた
>「尾弐っち。一緒にお風呂行こうよ。怪我、まだ治ってないでしょ?
>ノエっちもさ、こないだ来た時は僕、お風呂って気分じゃなかったから……今度は一緒に、どう?」
ポチからの男同士の風呂の誘い
意外な提案に、一瞬、ノエルと視線を合わせた尾弐であったが
>「もちろん。ポチ君、水に浸かるのが苦手ってわけじゃなかったんだ」
「おう、付き合うぜ。噛まれたり殴られたりはオジサンの身体にゃキツイからな。折角だし男同士の話でもするか?」
冗談めかした笑みを作りながら、その誘いを快諾した。 そうして温泉――――ならぬ冷泉に浸かり、運動で温まった体を冷ました所で、ポチが小さく……けれど、はっきりと聞こえる声で言葉を紡ぐ。
>「……昨日は、ごめんね。僕、勝手な事ばかりして」
>「僕、何のお詫びも出来ないけど……もう、二度とあんな事はしないから。
>だから、だから、僕……やっぱりまだ、ブリーチャーズのポチで、いてもいいかな」
それは、謝罪の言葉
……先の狼王との戦いの中で、心理的にも状況的にも仕方がない部分があったとはいえ、ポチが指示に反する事を行ったのは事実だ。
結果的にはそれで上手くいったとはいえ、それでも、その事はポチの中に棘として引っかかってしまっているのだろう
>「もう、本当にそうだよ! お前のようなかっこつけ野郎は除籍、除籍だ――――――――――ッ!!
>勝手に二階級特進狙ってんじゃね―――――――――!」
「落ち着け色男。お座り。ステイ。ハウス」
そんなポチの言葉に興奮して立ち上がったノエルの腕を引き、水風呂の中に引き込む尾弐
けれど言葉は止める事無く続けさせるのは、ノエルがポチを傷つける言葉を吐く事はないだろうと踏んでの事。
>「……と言いたいところだけどそれを決めるのは橘音くんだ。
>何しろ僕は雇用どころか報酬すら貰ってないボランティアだからなあ!
>それでも何かお詫びしたいと思うならここに滞在してる間毎晩僕の抱き枕だ!」
そして、案の定。ノエルはポチが命令違反を犯した事に怒っていなかった。
彼が怒っているのは、ポチが捨て鉢な行動を取った事に対してだけ……つまる所、ノエルという青年は優しいのである。
そんなノエルのおどけた様子を、腕を組みながら見ていた尾弐であったが、
>「そして甘いな――計画通りにいかないことも全て橘音くんの計画通りだ。
>橘音くんね――ポチ君は狼、犬じゃないって言ってた。飼い慣らせないことぐらい最初から分かってたんだよ。
>それでも上手く使うのが狐の知略ってものさ。
>というわけでクロちゃん、頑張ったポチ君に"オヤツをくれてやれ"!」
「ゴハッ!?……お、おいノエル、お前さんなぁ……!」
突然、矛先が自分に向けられ、尚且つ、アドレナリンが大量分泌されていた状態での台詞を言われた事で、思わず咳き込み口の端を引き攣らせる。
だが、ポチの相談自体は至極まじめなものなので無視する訳にもいかず、尾弐は冷水を掬い自身の顔に浴びせ、小さく呻いてから口を開く
「まあ、あれだポチ助。確かにお前さんのした事は危険だったし……命令違反でもある。
だけどな……そんくらいで仲間を見限るつもりなんて、毛頭ねぇよ。悪さして叱られて、反省してるんだ。今回はそれで充分だろ」
そこまで言ってから、片目を瞑り、但しと付け加える
「但しそうだな……オヤツじゃねぇが、次、同じような事をやったら、お前さんには御洒落をくれてやる。
具体的には――――お前さんの毛を刈って、プードルみたいにするからな」
冗談交じりにそう言う尾弐。
そんな弛緩した解答を受けたポチ。彼は……尾弐とノエルの様子に一度安堵の空気を見せてから、しかし急に真剣な様子を作り口を開いた。 >「もしそれを許してもらえるなら……一つ、助けて欲しい事があるんだ」
>「僕……あの子と、シロちゃんともっと仲良くなりたいんだけど、どうすればいいのかな」
「……ん、んん?」
真剣な口調で放たれた言葉。だが、その意味が理解出来ずに首を傾げる尾弐。
>「あの子は確かにブリーチャーズの仲間になったよ。
>だけどそれって、僕も、尾弐っちも、ノエっちもブリーチャーズでしょ?
>僕は……その、それじゃ嫌なんだ。我が儘言ってるって、分かってるけど……」
しかし、補足として語られた内容を聞いて、その言葉の真意を理解し
>「ええい、当たって砕けてこい! 駄目だったら僕が胸を貸してやる!」
「は―――――ははははは!よーし、オーケー判った。そういう事ならオジサンがいっちょ力になろうじゃねぇか!」
尾弐にしては珍しい程に楽しげな笑い声を出しながら、ノエルの応援と重なるようにしてその依頼を了承した。
「いいかポチ助。女を口説きたいなら、まずは清潔感だ。前提として、汚ぇものが好きな奴ってのは少ねぇもんだ。特に嗅覚が鋭い狼―――」
そうして、アドバイスをしたり励ましたり応援したりしつつ、男達の語らいは遅くまで続いた……。
―――――― かくして、旅行の最終日。旅立ちに相応しい快晴の空の下で、東京ブリーチャーズの面々は旅館の玄関先に荷物を以って立っていた。
>「シロのことは、儂らに任せておけ。ここなら人間の目は届かん、徐々に新しい環境に慣れることもできるぢゃろう」
>「また、いつでも遊びにいらしてくださいね。従業員一同、心よりお待ち致しております」
「ああ、次は金払って普通に来るぜ。宿代代わりの労働は真っ平ごめんだからな」
見送りに来たのは、富嶽と笑の二人。
笑はまだしも、富岳が見送りに来た事を意外に思いつつ、荷物を纏めていた尾弐は二人に対して手をひらひらと振り答える。
そして、そんな挨拶の最中、宿へと残る事となったシロが口を開いた。
>「シロ……。皓。それが、わたしの名前ですか」
>「……わたしには、その名がいい名なのか。悪い名なのか。それはわかりませんが――」
>「誰かに名を呼ばれる。というのは、よいものですね」
>「皓はね、雪のように穢れなく輝く白って意味なんだ。とってもいい名前だよ!」
「……そうだな。キレェな名前が有って、それを呼んでくれる相手が居るってのは幸せだ。自分が今そこに居る事を認めて貰えるって事だからな」
名前――――これまで、ニホンオオカミという種族名しか持ち合わせていなかったシロの感慨に対し、
ノエルの言葉に続ける様にして、尾弐もそう言葉を吐きだす。
その言葉には小さな影が混じっていたが、それは次にシロが口に出した言葉と行動とによって吹き飛ばされてしまう
>「……くれぐれも、ご無理はなさいませんよう。皆さんの仰ることをよく聞き、決して独断で行動してはなりません」
>「特に。今回のような捨て鉢な戦いは、二度としてはいけません。……約束できますね?」
>「あなたの身体はもう、あなたひとりの身体ではないのです。あなたは、これからの狼族を背負って立つ者――」
>「あの方と。そう、約束したのでしょう?」
彼の純白の狼は、激励の言葉と共にポチへと寄り添うと
>「……それに。東京漂白が成った暁には、あなたには是非発奮して頂かなくてはなりません」
>「たった二頭のニホンオオカミを、これから。あなたとわたしで、もっと増やしていかなければならないのですから。……ね」
そう言って、ポチをペロリと舐めたのである。
>「――ご武運を」
>「う……うん、ええと……が、がんばってきます……」
告白の準備を通り越して、まさかの逆プロポーズ。その意外性と、女という生き物の強さを見せつけられた尾弐は、
口元を手で覆い、湧き出る笑いを堪えている。
>「……もしかしてロボも、こんな感じだったりしたのかなぁ」
「くっくっ……こりゃあ、何が何でも生きて幸せになんねぇとな。頑張れよポチ。同じ男として応援するぜ?」
そうして、なんとか堪え切るとポチの呟きを耳ざとく拾い、その背中を軽く叩くのであった。 >「……ゲ……ハハハッ、ゲハ……ゲハハハハッ、ハハ……」
狼王が口を開く。まず発せられたのは嗤いだった。
尾弐の制止を振り切って言葉の罠を仕掛けた祈は、
その嗤い声を聞きながら、魔滅の銀弾をいつでも投擲できる構えを僅かにも崩さない。
狼王は続ける。
>「……なかなか……いい作戦だ……。オレ様が……提案から遁げることはねェと……そう、踏んでの策か……よ……」
>「だがな……お嬢ちゃん。その手には乗らんぜ……。オレ様が、その勝負を……受けることは……ねえ……」
「――そうかよ」
祈は狼王の返答に目を細めた。
策は成らず。祈の言葉の罠は、雑な悪足掻きに過ぎなかった。
だとすればこの銀弾を投擲し、ロボを消滅させる他に道はないのだろう。
>「だって、よ……」
>「もう、その必要は……ねェんだ、から……な……」
しかし、ロボの言葉には続きがあった。
魔滅の銀弾を放り投げる体勢に入っていた祈は、その言葉で体勢を崩し、銀弾を落としかける。
必要ないとはどういうことか、という疑問は、ロボの首元を見たことで氷解する。
首元から流れ、銀毛を汚していく赤色。血液。
どう少なく見積もっても三滴以上の量がある。それは即ち、ポチの勝利を意味していた。
「……罠なんて必要なかったな」
祈は崩れた体勢を立て直すと、銀弾を握りしめた右手を開く。
そして銀弾を親指に載せ、ピンと弾く。落ちてきたのをキャッチすると、ポケットに仕舞い込んだ。
ポチの牙はロボの肉体どころか心にまで届いたらしく、
狼王ロボは、敗北したことで正気を取り戻した様子だった。
その金色の瞳は澄んだ蒼へと変わり、憑き物が落ちたように穏やかな空気を纏っている。
もうロボにこの弾丸は必要ない。
ロボは己が狂っていたことに気付いたと明かし、そんな自分を止めてくれたポチに礼を述べた。
それを受けたポチは、ロボに勝利したことが嬉しいのかそれとも悲しいのか、
あるいはその両方か。その瞳から大粒の涙を流す。
そんなポチの頭を、ロボは宥めるように、讃えるように優しく叩いてやるのだった。
>「……オレ様の負けだよ。坊主」
そしてロボが敗北を認めると。その体から銀色の妖気が奔流となって噴き出す。
暴風のように吹き荒れ、月光を反射しギラギラと禍々しく光るそれは、ポチへと流れ込んでいく。
>「なんだ……!?」
ノエルが警戒したように声を上げるが、依然、ロボに敵意は見えない。
ということはこれは攻撃ではないことになる。しかも妖気を噴き出させるロボの肉体は力を失い、
徐々に萎んでいくところを見るに、今行われていることは――。
>「い、嫌だ……やめろ、ロボ!こんな力、僕はいらない!だってこれは、君の!」
――狼王ロボの、獣(ベート)の力をポチに与えている、ということだろうか。
>「やめてくれ! ポチ君を認めるなら猶更そんなものを背負わせるな! だってそれは……」
拒絶の姿勢を見せるポチを見て、ノエルが警戒を強める。
>「……何も、驚くことはねェ……。自然のことだ、当然の成り行きだ。おまえだって、オオカミならわかるだろう?」
>「若いオオカミが老いた長を破り、新たな長となる。旧い長の持っていたもの、そのすべてを継承する――」
>「ただ、それだけのことだ」
しかし、ロボは事も無げに言った。
>「"ただそれだけのこと"って……」
ノエルがその言葉に、納得できぬような表情で呟く。
ポチは狼王の言葉に納得したのか、それともそうせざるを得ないと思ったのか、
その力を受け入れる体勢に入っていることであるし、
祈には、どうやらポチはロボから強力無比な獣(ベート)力の一端を勝者の証として貰える、というような話に見え、
くれるんだったら有難く貰ったらいいんじゃないか、とも思うのであるが、
精霊に近い妖怪で様々な気に敏感なノエルのことだ。
妖壊だったロボから放たれた妖気がポチに宿ることに何か気掛かりなことでもあるのかも知れなかった。
ロボは尚も体から妖気を迸らせ続け、ポチへと送り込む。
更に、その力に呑まれるなと、俺のようになるなとポチにアドバイスを送り、ブリーチャーズを見渡すとその群れを讃えた。
それらを終えた頃には、すっかりその妖気は枯れ果てて、三メートルほどもあった肉体は見る影もなく萎み切っていた。
その身に宿る妖気、妖力。その全てをポチへと継承し終えたのだろう。 >「おまえはオレ様の轍を踏むなよ。――女房を守ってやれ、手前の命が尽きる瞬間まで。くれてやったソレは――本来、そのための力だ」
>「オレ様ができなかったことを……おまえが、やるんだ。期待してるぜ、小さな狼王――」
そして力だけでなく願いもポチへと託すと――急にポチを突き飛ばした。 既にポチとロボを拘束していたノエルの呪氷は剥がれており、
ポチはあっさり押されてしまう。また、反動でよろめいたロボの体は、ビルの淵へと近づく。
>「……うん、約束するよ。僕は、君とあの子に恥じない狼になる」
突き飛ばされたポチだったが、ロボが突き飛ばすのを知っていたかのような、
穏やかな声でその期待に応えることを約束する。
この辺りで、何かがおかしい、と祈は思い始める。
ロボはよろめきながらも、ビルの淵で踏みとどまった。その誇り故か決して膝をつくこともせず、
改めてその輝く蒼の双眸でブリーチャーズを見渡すと、高らかに言う。
>「よくもオレ様を破ったもんだぜ、東京ブリーチャーズ……!褒めてやる!」
>「だがな――オレ様はテメエらの手にはかからねえ。オレ様は狼王ロボ!王には王の死に方ってモンがある!」
>「見な!『ジェヴォーダンの獣』の最期ってヤツをな……!」
『最期』と聞いて、祈が止める間もなく。
「ああっ!?」
ロボはその右爪を己が胸に突き立て、肉を裂き骨を割き。ついには心臓を抉り出してしまう。
祈が救うことのできないものは幾つもあるが、その中の一つが、救いの手を自ら手放す者だ。
己が命をここで使うと決め、誰の手をも拒む者。それは強固な意志で、祈の手を逃れてしまう。
たとえ、ここで河童の軟膏を持ってきて強引にロボを治療した所で、ロボはきっと再び命を絶とうとするに違いない。
いや、でもと、逡巡する祈。しかし、最期を迎えようとする者の迫力に気圧され、動けずにいる。
流れる血もそのままに、強く脈打つ心臓を掴んだままに、ロボは荒く息を吐き、言葉を重ねた。
>「オレ様を斃した褒美に、ひとっつだけ忠告してやる……東京ブリーチャーズ」
>「本当の敵を見誤るな。今回の東京での、おまえたちとオレ様たちの戦いには……裏で絵図面を引いているヤツがいる」
>「そいつにとっちゃ、オレ様もクリスも単なる兵隊に過ぎねェ。いや、オレ様たちだけじゃない……おまえたちブリーチャーズもだ」
>「オレ様たちが戦い、斃れていくこと……それもすべて、そいつの計算のうち。オレ様たちは都合よく踊らされてるのさ」
>「そいつを見つけ出して叩け。でないと……この戦いは永遠に終わらねえ……!」
その言葉群に、祈は戦慄する。
今まで東京ブリーチャーズと東京ドミネーターズの戦いとは、
『妖怪大統領』が東京侵略を目論み、ブリーチャーズがそれを阻止すべく迎え撃つ、という構図であった。
だがロボの言葉が真実であれば、この構図は第三者が介入し組み立てたことになる。
この両者をぶつけようと思えば、
少なくとも侵略する側である『妖怪大統領』を唆すなどして東京にけしかけたであろうことが窺え、
更には。もしかすれば。
東京ブリーチャーズの結成すらもその第三者によって仕組まれた可能性だってあるのだ。
そのことにまで考えが及び、祈はぞくりとする。一体いつから、どこまでを仕組まれているのか。
考えられる目的は妖怪大統領側と日本妖怪側という巨大な妖怪勢力同士をぶつけ合わせ、
あわよくば共倒れさせる、というようなものだが、そこにどんな利益があると言うのだろう。
目的も理由も姿も、その全てが不透明で。余りに不気味だった。
更にロボは次に会うであろうドミネーターズが
ロボでさえ避けたい“最強のバケモノ”であり、“化生の天敵”であると不吉に告げると――、
抉り出した己の心臓を握り潰し、
>「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ――――――――――――――――――――ン!!!!!!」
遠吠えを上げて。凄絶な、誇り高き死を迎えるのだった。
>「……“彼”は。救われたのでしょうか」
諸手を広げ、遠吠えを上げ、立ったままに死を迎えたロボ。
その姿を見て、静かにシロが問う。
>「……あぁ、勿論さ」
その問いかけに、ポチが答えた。
助けることはできなかった。だがこれで良かったのだろう。ポチが言うように、これでロボの魂は救われたのだろう。
しかし。 (尾弐のおっさんは、――嫌なんだろうな。こういうの)
救われぬ者もいるのかもしれない。
祈は振り返って、この光景から目を背ける尾弐の背を見つめた。 尾弐はどうやら、妖壊というものに対して並々ならぬ憎しみを抱いているようであり、
また、“人に仇成す妖壊は滅ぼすべきでありそこに一片の慈悲も救いもあるべきではない”、
というようなことを考えているようでもあった。 確かめた訳ではないので本当のところは祈には分からないのだが、少なくとも表面上はそう見え、
もしそんな風に妖壊を憎んでいるとするなら、憎き妖壊たる狼王ロボが救われて誇り高い死を迎える様とは
どれ程に辛く、どれだけ耐え難い苦痛なのだろう。
申し訳ない気持ちが込み上げるが、ブリーチャーズとして一緒に戦い続けるのなら、
今後も似たようなことは起こり得る。
尾弐が妖壊を殺そうとするのなら、祈は妖壊でもなるべく助けようとする。
妖壊退治におけるこの姿勢の差異は、いずれ尾弐と祈の間に軋轢を生むのかもしれない。
いつか、尾弐が祈を疎ましく思う時だってくるのかもしれない。
そしてその時、尾弐が自分を憎んだり嫌ったりできるように、謝るなんてことはしちゃいけないのだろう。
(……あたしは誰かに死んで欲しくない。そんで尾弐のおっさんにだって、できたら……)
尾弐は妖怪を前にすると目の色が変わる。
憎悪の色が込められて、お前を今から殺してやると、その目が口程に語るようになる。
そうして相手の存在、その全てを否定しようと拳を振るう。
だが普段その目は橘音を見る時に穏やかで、その手はポチを撫でる時には優しくて、
ノエルにツッコみを入れる時でさえ傷付けないように注意を払っていることを祈は知っている。
そんな優しく穏やかな尾弐もまた真実で、
というよりもきっとその優しい姿こそが本来の尾弐なのだろうと祈は思う。
そこには、そうあって欲しいというような祈の願望も多分に含まれているのかもしれないが、
とかくそんな優しい尾弐にこれ以上、その手を血で汚して欲しくないな、なんてことを祈は少し思うのだった。
シロとポチの遠吠えが長く響く。ロボの死を悼むように。
戦いの後、祈は後処理をした。放置できないことが3つ程残っているからだった。
まず、ノエルが潜った後の天神細道を使って、ロボの死体を彼の故郷と思しきフランスはジェヴォーダン地方の、
誰にも見つからない場所へと送ってやった。
このような大きな騒ぎがあったのだから、ビルにいつ誰が登って来るとも分からないのであり、
見つかれば更なる騒ぎになってしまうと思われたからである。
次に。このビルに誰がくるともわからない以上、そこを根城にしているというシロも誰かに見つかってしまう可能性がある。
その為一時的に事務所に保護することにした。祈は事務所の鍵は持っていなかったが、
幸い中には居候の妖怪がいるので、その妖怪に鍵を開けて貰って事なきを得た。
そちらにシロを預けると、ついでに天神細道も事務所に置いておき。これにて後処理は終了と言った所だろうか。 >「いや〜っはっはっはっはっはっ!失敗失敗!今回ばかりは、さしものボクも死ぬかと思いました!」
後日。一行は再び迷い家を訪れていた。
場所は遊戯室。快癒した橘音は浴衣に着替え、すっかりくつろぎモードである。
ラケットを団扇代わりに己に向けて振りながらそんなことをあっけらかんと言い放っていた。
>「……橘音ちゃんってさ、実は尾弐っちよりタフだったりしない?僕なんてまだ首と背中が痛いよ」
その様に呆れるポチ。
>「"いや〜っはっはっはっはっはっ!"じゃね――――――――――――ッ!!」
ロボとの戦闘を終えた後、橘音を心配して天神細道を潜り、病室へと誰より早く向かったノエルは吠えて、
>「はっはっは。まあ、アレだな。こんだけ小気味よく適当に流されたら、さすがのオジサンもいい年して年下の頭を引っぱたきたくなってきたぜ。
>というか叩かせろ那須野。俺が言うのもなんだが、お前さんどれだけこいつらに心配かけたと思ってやがんだ」
半死半生の橘音を見て珍しく狼狽していた尾弐などは、もはや目が笑っていなかった。
>「さー、慰安旅行のやり直しです!お風呂に入りまくって!卓球もやりまくって!おいしいごはんを食べまくりましょう!」
総ツッコミを受けながら、しかしこんなことを明るく言い放てる橘音は大物なのだろうけど。
「ちょっとは反省しといた方がいいよ橘音。そのうち尾弐のおっさんにほんとに引っぱたかれるよ」
ラケットを人差し指の上でくるくる回しながら、橘音と同じく浴衣に着替えた祈も呆れ顔で言うのだった。それに加え、
「ね。そう思わない?」
なんて、シロに唐突に振ってみたりする祈。
今回迷い家を訪れた一行の数は、前回よりも一頭多く、シロの姿もそこにあった。
世間のほとぼりが冷めるまで迷い家で保護することになったので連れてきたのである。
それをシロも嫌がっている様子はないし、納得しているようだった。
こうしてシロを迷い家に連れてこれたのも、シロを無事守り抜き、ロボを打倒できたからだ。
数キロに及ぶロボの死の咆哮は、それを聞いた者に、
巨大な肉食獣に今まさに狙われている、襲われている、食べられている、というような非常に強いイメージを与えたらしく、
耐性のない者の中にはショックで亡くなった者もいたようだった。東京の街は混乱に落とされ、犠牲はあったものの。
一人でも、一頭でも多く生き延びることができたのは喜ばしい事だろう。
そしてもう一つ、魔滅の銀弾を使わずに済んだのも僥倖だっただろうか。
祈的にはロボを完全消滅させずに済んだことは勿論、
橘音が言うにはそれは『すべての妖怪を葬り去る銃弾』であるので、
『妖怪大統領』や、その裏に控える黒幕めいた第三者と対峙する際の切り札となるかも知れないからである。
いま魔滅の銀弾は事務所に厳重に保管されているらしい。
ロボが示唆した戦いの絵図面を引く第三者の存在や、次のドミネーターズのことなど、
不安の種は尽きないが、なんであれ。こうして再び仲間達と生きて旅行ができるのは喜ばしいことであり、
この世の物とは思えない絶品とも言える料理や、極楽のような温泉を堪能できるのは素直に嬉しいものであるので、
気持ちを切り替えて、時間が許される限りはそれを楽しもうと思う祈であった。
早速、橘音の言う通り温泉にでも入りまくるかと遊戯室を後にしようとする祈の耳に、
>「尾弐っち。一緒にお風呂行こうよ。怪我、まだ治ってないでしょ?
>ノエっちもさ、こないだ来た時は僕、お風呂って気分じゃなかったから……今度は一緒に、どう?」
こんなポチの声が届く。
見遣れば、ほとんど黒一色になった体毛や、額から背中へと走る一筋の銀色が目に入る。
ロボとの戦いの後、ポチの姿には多少変化が見られたのだが、
変化が見られたのはどうやら見た目だけではなかったようで、
以前のような焦燥や、仲間への壁のようなものが見えなくなり、心の余裕が窺える。
そして見えなくなったものの代わりに、心なしか仲間への親愛の情とも言えるものを覗かせてくれるようになったようだ。
どうやらポチの誘いに応じてノエルも尾弐も一緒に仲良く温泉へ向かうらしく、
それがなんだか微笑ましくて、祈は笑ってしまう。
祈は祈で温泉に向かい、湯に浸かった。やはり心地良く、ここ数日の疲れが吹き飛んでいくようだった。
博物館でロボと出会って以来それとなく不調であった体も、風火輪を無理に使ったことでケ枯れ気味だった妖力もすっかり回復したようで。
湯に浸かって伸びをしながら、男三人だけで仲良くしてるのもずるいし、今度温泉に入る時はシロも誘ってみようか、なんてことを考える。 そうして続いたブリーチャーズの旅行の後半戦だったが、ついに東京へと帰る日が訪れた。
それを迷い家の玄関で見送るのは、シロとぬらりひょん富嶽、女将の笑と従業員の一本ダタラであった。
>「シロのことは、儂らに任せておけ。ここなら人間の目は届かん、徐々に新しい環境に慣れることもできるぢゃろう」
富嶽は見送りに立ち、そう請け負って、
>「……その言葉、信じるからね、お爺ちゃん」
ポチがそれに応じた。
シロはそこでようやく、シロという名が己の物であることに気付いたようで。
>「シロ……。皓。それが、わたしの名前ですか」
>「……わたしには、その名がいい名なのか。悪い名なのか。それはわかりませんが――」
>「誰かに名を呼ばれる。というのは、よいものですね」
そんな風に呟く。その呟きに何か言いたいことがあるようにそわそわしているポチだったが、
結局口を開くことはできず、
>「皓はね、雪のように穢れなく輝く白って意味なんだ。とってもいい名前だよ!」
と、ポチより先にノエルから、その名前についての説明が入ってしまった。
へぇ、そういう意味なんだと祈は勉強した気になる。
博識なのは何百年と雪の女王の元でその資質を磨いた乃恵瑠の人格が統合されてる故だろうか。
咄嗟にこのような説明ができるのは流石である。。
>「……そうだな。キレェな名前が有って、それを呼んでくれる相手が居るってのは幸せだ。
>自分が今そこに居る事を認めて貰えるって事だからな」
尾弐もシロに同意し、今シロが感じている幸せを改めて言葉にして伝えてやるのだった。
>「また、いつでも遊びにいらしてくださいね。従業員一同、心よりお待ち致しております」
穏やかな笑みを浮かべ、心地良く送り出してくれる女将の笑。
笑はいつもにこやかで綺麗で、優しい人だった。
>「ああ、次は金払って普通に来るぜ。宿代代わりの労働は真っ平ごめんだからな」
「元気でね、笑さん。……あたしびんぼーだから多分もう来れないと思うけど。
ぬらりひょんのじっちゃんも、一本ダタラさんも元気でね」
尾弐に続き、祈も別れの挨拶を交わす。
>「こちらの依頼をこなしたのをいいことに、思う存分飲み食いしおって。ほれ、さっさと東京へ帰れ。もうお主らに用はないわい」
笑とは反対に苦い顔で、嫌味めいた言葉で送り出す富嶽。
祈の様々な質問にも答えることなく、のらりくらりと躱しきったぬらりひょん富嶽。
まったくもって食えない妖怪であったが、どこか憎めないお爺さんだったと祈は思う。
無口で働き者な一本ダタラや、従業員の妖怪達。
趣のある旅館、木陰の涼しさ、温泉の熱。おいしいコーヒー牛乳。たまらないご馳走の数々。
その全てと……そして仲間になったばかりのシロとまでも今日でさよならだなんて。
そんな風に祈が少ししんみりした気持ちになっていると、シロが耳をぴくっと耳を振るわせて、口を開く。 >「……東京ブリーチャーズの皆さん。今回のことは、お礼のしようもありません」
>「あなたがたはわたしを救い、そして狼族そのものを救ってくれました。どれだけの感謝をしようと、到底足りるものではありません」
>「もし、わたしに出来ることがあるのなら――いつでも仰ってください。どこへなりとも馳せ参じましょう」
>「それが。仲間の温情に応える、わたしの新しい誇り……ですから」
シロはブリーチャーズを、己の仲間達を誇らしげに見渡した。
仲間から一人離れてしまう側のシロがそう言ってくれたことで、
祈の中にある寂しい気分も消えていく気がした。
>「いやあ、そんな大層な! ……シロちゃん?」
シロの言葉に謙遜して見せるノエルだが、そのシロはまだ個人的に伝えたい言葉があったようで、
ポチに寄り添うと、無理をしてはならないだとか、捨て鉢な戦いをしてはならないだとか、
もう一人の体ではないのだとか、約束しなさいだとか。なんだか心配性な母親のようなことを言って、ポチを狼狽させた。
そしてポチに約束させると、
>「……それに。東京漂白が成った暁には、あなたには是非発奮して頂かなくてはなりません」
>「たった二頭のニホンオオカミを、これから。あなたとわたしで、もっと増やしていかなければならないのですから。……ね」
こんなことを言うのだった。
>「ちょっとシロちゃん、大胆過ぎるよ! 意味分かって言ってる!?」
>「……へっ?え、えっ?ちょ、ちょっと待って」
>「僕、まだ君に何もそういう事言ってないし……あ、いや、嫌な訳じゃないんだよ。
>ただそういうのって、僕の方からちゃんと……」
ノエルもポチもシロの言葉に慌てふためくが、そんな二人を見てもシロは動じることなく、
>「――ご武運を」
と言って、ポチの顔をぺろっと舐めた。狼なりのキス、と言った所だろうか。
>「う……うん、ええと……が、がんばってきます……」
想い狼からのキス。それにはポチもへたりこんでしまい、もはや頷くことしかできない様子だった。
離れていくシロを見送りながら、
>「……もしかしてロボも、こんな感じだったりしたのかなぁ」
呆然と呟くポチ。
>「くっくっ……こりゃあ、何が何でも生きて幸せになんねぇとな。頑張れよポチ。同じ男として応援するぜ?」
それを見て、尾弐が楽しそうに言う。
>「シロちゃん、必ずポチ君を無事に君の元に帰すからさ……ちょっとの間、借りるね!」
またしてもうっかり約束を、今度はシロとしてしまうノエル。
その横で祈は小首を傾げながら、「ねぇ御幸、発奮しなきゃならないってなに?」とか言っていた。
こうして、祈の夏休みは終わっていった。
祈は再び学校へ通うことになり、そこでモノとしばらく振りに顔を合わせた祈は、お土産のストラップを彼女に手渡した。
最初は散々憎まれ口を叩いたモノであったが、ツンデレっぽい台詞と共になんやかんや受け取ってくれた。
目玉のオ○ジよろしく、気持ちよさそうにお椀の湯に浸かる鎌鼬のマスコット。
モノとお揃いのそれは、祈が持つ橘音から仕事用にと渡されたスマホのストラップホールに取り付けられて、以来ずっと一緒だ。
モノの方でもどうやら意外にも大切に持ってくれているようであり、
祈はなんだが、友達ができたようで少し嬉しくなったりしたのだった。 おや、弥助の女房が珍しく鉄漿(かね)をつけてるぞ。めかし込みやがって。
新兵衛がとこの女房は髪なんて梳いてやがる。普段はいつ髪結に行ったかもわからないほつれ髪のくせに。
ふふん。村に何かあるんだな。
なんだろう、秋祭かな。祭なら、太鼓や笛の音がしそうなものだ。それに第一、お宮にのぼりが立つはずだけど……。
あいつの家にも、いつになく人が出入りしてるな。……いや、違う。あいつの家にみんなが集まってるんだ。
あれは―― あれは。葬式だ。
あいつの家の、誰が死んだんだ?けれどもあいつの家に住んでるやつなんて言ったら……。
……葬列が出ていく。あいつめ、手向けのつもりか白装束なんて着やがって。
いつもは、真っ赤な唐芋みたいな顔してやがるってのに。今日は、しなびた茄子みたいに元気がないや。
…………
…………
……そうか。
あいつのおっ母が死んだのか。そういや、あいつのおっ母……具合がよくなくて、ずっと床に就いていたもんなあ。
ああ……。
あいつが普段は獲ろうとしないうなぎなんかを、ずぶ濡れになって獲っていた理由がわかったぞ。
きっと、床に就いていたおっ母が、あいつにうなぎが啖いたいと言ったんだ。
この世の名残に、いいもんを啖いたいって……。それで、あいつがはりきり網を持ち出したんだ。
ところがボクがいたずらをして、せっかく獲れたうなぎを盗って来てしまった。
だから、あいつはおっ母にうなぎを食べさせることができなかった。そのままおっ母は死んじゃったに違いない。
ああ、うなぎが食べたい、うなぎが食べたいと思いながら、死んだんだろう。
ボクのせいで。
…………
…………
……あんないたずら、しなけりゃよかった。 あいつが、井戸端で麦をといでいる。
ボクと一緒で、ひとりぼっちのあいつ。
……いや、ボクはひとりぼっちじゃない。ボクにはともだちがいる。いつかの冬、山の中で出会ったあの子。
ボクのことを呼んでくれる。ボクを撫でてくれ、ボクに笑ってくれ、ボクと一緒に眠ってくれるあの子。
でも、あいつにはもう誰もいない。おっ母も兄弟も、女房も子供も。ともだちも。
…………
………… いわし売りが弥助の家のそばにいる。
弥助の女房に呼び止められて、いわし売りはいわしを載せた大八車を道端に放り出して、弥助の家に入っていった。
……ちょうどいい。
このいわしを五、六尾も失敬しちまおう。そして、あいつの家に投げ入れてやれ。
うなぎのお詫びってんじゃないけれど、おっ母の分まであいつがうまいものを啖えれば、ボクのいたずらも帳消しになるかもしれない。
いわしなんて大したもんじゃあないが、あいつが日頃啖ってる味気ない粟飯に一品増えりゃ、上等だろう。
きっとあいつも喜ぶはずさ。ああ、いいことしたなあ。なんて気分がいいんだろう!
…………
…………
…………
…………
えへへ。今日は、どっさり栗を拾ってきてやったぞ。あいつ、きっとまた喜ぶな。
あれ?あいつ、なんであんな怪我しているんだろう。ほっぺたに青あざをこしらえたまんま、なんだかぶつぶつ言っているぞ。
……いわし屋に盗人と間違えられて、ぶん殴られただって……?ボクが、あのときいわし屋からいわしを盗んだから……?
また、迷惑かけちゃったみたいだ。
で、でも。でもでも。
この栗は、盗んできたものじゃない。ボクが山へ行って、あの子と一緒に拾ってきたものだ。
だから。
……食べてくれると、嬉しいな。 「ムジナさんから報告書が届きました」
秋も深まった、11月のある日。自らの探偵事務所にいつものメンバーを集めると、橘音は開口一番そう切り出した。
「だいぶ危ない橋を渡って頂いていたようです。ムジナさんに感謝を――それで、報告の内容なのですが」
「妖怪大統領の正体を突き止めた……とのことです」
一気に東京ドミネーターズの首魁である妖怪大統領の秘密に迫った、というのだ。これが本当なら大スクープである。
機能性一辺倒の味気ない所長用事務机の傍らに立つと、橘音は右手に持った数枚のレポートをヒラヒラと振ってみせた。
「妖怪大統領の正体。それは――」
「バックベアード。かつてアメリカに出現し、大破壊をもたらしたと言われる存在です」
バックベアード。
アメリカ出身の妖怪と言われる存在で、書籍によっては西洋妖怪のボスとするものもある。光化学スモッグの化身とも言われる。
巨大な単眼を持ち、そこから生物を幻惑したり、破壊したり、盲目にするといった各種の瞳術、光線を放つという。
「少し前の妖怪ブームなどで、バックベアードもある一定の知名度を持つようになりました。が――」
「正直なところ、バックベアードという存在が何者なのかについては、まったくと言っていいほどわかりません」
「文献に記されている通りの姿なのか。妖術も目から発するものなのか。そして何より、何が弱点なのか……」
「『何もわからない』のです。何故なら、これも。人間が『そうあれかし』と望んだから」
「『バックベアードは正体不明』と、人類が定義したからです」
そのトレードマークである巨大な一つ目が弱点である、という説はあるが、文献(やアニメなど)では倒してもすぐに復活している。
何より、あの強大な力を持っていた東京ドミネーターズのクリスやロボが恐れ、服従を誓っていた相手だ。
当然、東京ブリーチャーズが今まで戦ってきたどんな妖壊とも比較にならないほど強い、と思うべきだろう。
「……まあ、ぶっちゃけた話、判明したのは妖怪大統領の正体だけ!倒し方だとかは依然わからないまま!ということです」
「でも、大きな前進と言えるでしょう。『何もワカランということがわかった』というだけでも、ね」
わからないことに無理矢理リソースを割く必要はない。
つまり、こちらは従来通り東京ドミネーターズの来襲に対処し、ひとりずつ幹部を倒していけばよいということだ。
妖壊大統領に関しては、今後もムジナに情報収集してもらえばいい。
狼王ロボとの決戦の後、東京ドミネーターズの幹部が直接(祈以外の)ブリーチャーズの面々と顔を合わせることはなくなった。
もっとも、だからといって何もなく平和であったということではない。
この数ヶ月の間に、ブリーチャーズはドミネーターズが差し向けてきたと思しき妖壊の何体かを撃破している。
とはいえ、さすがにクリスやロボほどの強さを持つ者はいない。ドミネーターズも人材不足、ということだろうか。
現状、東京ブリーチャーズと東京ドミネーターズの戦いは膠着状態にあると言ってよかった。
「彼らがボクたちの前に姿を現さないこと、それは彼らがボクらに尻尾を掴ませず、秘密裏に行動しているということ」
「それは由々しき問題です。こちらも懸命に彼らの足取りを追っているのですが……よい結果は得られていません」
「クリスとロボは妖怪大統領の配下ではありましたが、妖怪大統領の計画より自分たちの目的を優先させた――」
「だからこそ、こちらも対処をすることができましたが、これからはそうはいきません」
「クリスとロボが前哨戦……とは言いませんが、ここからが西洋妖怪との戦いの本番と言っても過言ではないでしょう」
「次に彼らが姿を見せるときが、大きく状況の動くとき。それをくれぐれも忘れず、皆さん戦いに備えていてください」
珍しく茶化したりおどけたりすることなく、橘音はそう言って全員に注意を促した。
それだけ、これからの戦いは激しいものになるだろうということだ。
もっとも、今までだって決して安楽な戦いをしてきたわけではないが――いずれにせよ、油断はするなということだろう。
……が。
「……ま、だからと言って、あんまり気を張り詰めていても疲れるだけです。ゆる〜く行きましょう、ゆる〜く」
「大切なのは柔軟性です。どんな状況に対しても臨機応変に対処できるようにってことです」
「じゃっ!辛気臭いお話はここまでにして、お茶の時間にしましょう!笑さんがお饅頭を送ってくださったんですよ!」
祈にお茶を淹れるように言うと、橘音はひと仕事終えたとばかりに所長用の椅子へぼすんと腰掛けた。 「祈、一緒に給食を食べましょう」
午前の授業が終わり、給食の時間を告げるベルが鳴る。
学校でも一番楽しみな時間の到来だ。
モノがさも当然といった様子で向かい合わせに机を移動させてくる。
祈の中学校に転入し、不戦協定を結んでからというもの、レディベア――モノはその約束を忠実に守っている。
東京ドミネーターズや東京制圧計画のことに関しては、一言も口にしない。クリスとロボが敗死した際も、モノは何も言わなかった。
それこそ、この少女は妖怪大統領の名代レディベアではなく、ただのモノ・ベアードなのではないかという錯覚を起こすほど。
モノは祈に懐き、何かグループ単位で行動する必要がある際はたいてい祈とペアを組みたがった。
お蔭でこの数ヶ月、クラスの中で祈とモノはすっかりニコイチと認識されている。
そんなこんなで、今日も。ふたりで給食を食べようとしているのだが――。
「……祈。食べながらでよいですから、わたくしの話をお聞きなさい」
パンを小さくちぎって口に運びながら、不意にモノが言う。
いつもは日常のどうでもいい話題を明るい調子でまくしたてるのだが、今日に限ってはやけに神妙な表情をし、声を潜めている。
隻眼で祈をじっと見据えると、モノは僅かな逡巡の後、
「今夜。貴方がた東京ブリーチャーズを潰しに行きます」
と言った。
「今までのような、虚弱貧弱無知無能の雑魚妖壊をけしかけるのではありません。わたくしが直接出向きます」
「フィールドは、怪人65535面相が用意致しますわ。気が付けば、貴方たちはもうあの者の結界の中に陥っているでしょう」
「その結界の中に蠢くのは、あの者の用意したおぞましき妖異。まったく、どこからあんなものを見つけてくるのやら」
おかずのミートローフをフォークで切り分けながら、モノはふる、と一度身を震わせた。
今回カンスト仮面が用意した敵というのは、妖怪であるモノをして怖気を揮うような存在であるらしい。
それをモノ、レディベア自身が指揮して東京ブリーチャーズにぶつける。それはつまり、橘音の言っていた状況の大きく動くとき。
しかし。
「まあでも、心配はいりませんわ。少なくとも貴方の安全はわたくしが保障致しましょう」
モノはにっこり笑うと、不意にそんなことを言ってきた。
「今夜、わたくしはひとり供を連れてきますが――」
「その者に、貴方のことも守るように申し伝えておきましたから」
妙なことを言い始めた。
「わたくしひとりでは危ないというのでお父さまが用意した護衛なのですが、頼りになる者なのです」
「敵対すれば死あるのみ――そんな者ですが、味方となればあれほど心強い存在もおりません。……尤も、少々変わり者なのですが」
「とにかく、貴方は大船に乗ったつもりでいなさいな。それも、クイーン・エリザベス級の大船に……ね」
そう言うモノの眼差しからは、祈への純粋な好意がほの見える。
罠に嵌めるとか、真意の見えない言葉で惑わせるといったことではなく、正真祈のためを思って言っているのだろう。
「本来、ここでこのようなことを言うのは協定違反。罰されて然るべきことであるのかもしれません」
「それでも。ここだからこそ言うのです、ここでは貴方とわたくしは敵同士……では、ありませんから」
「ふ、ふん。別に、情にほだされたわけではなくてよ?貴方がいないと、人間社会の案内役がいなくなる。ただそれだけですわ!」
そう言って、モノはちぎったパンを優雅な手つきで口に運んだ。
そんな遣り取りを行いつつ、時間は過ぎてゆく。
そして――
夜が訪れる。 ガタンゴトンと揺れる車内で、東京ブリーチャーズは目を覚ました。
周囲を見回せば、自分が電車の中にいることがわかるだろう。よくある在来線の、壁際に長いシートが据え付けられている車両だ。
一見新品に見える車両には中吊り広告の類はなく、代わりに壁や天井、床にところどころどす黒い染みがある。
出入り口の自動ドアの上に設置された液晶モニターも、黒いままだ。
が、異常なのはそんな車両の様子ではない。
『なぜ、自分たちはここにいるのか』ということだ。
東京ブリーチャーズの面々は、確かに自分の居室で。塒で。各々眠りについたはずである。電車に乗った覚えなどない。
だというのに、自分は今、確実に電車に乗っている。
ノエルなら自分の知らないうちに電車に乗っていたという夢遊病チックな可能性もあるかもしれない(?)が、他の者は違う。
第一、ポチは電車に乗れない。だというのにノエル、祈、尾弐、ポチ、橘音の五人は紛れもなく電車の中にいた。
「……ん……、うぅ……ん……ムニャムニャ……。えへへ、もうそんなにきつねうどんは食べられませんよお……」
シートにほとんど横倒しになり、テンプレな寝言を言いながら橘音がいまだに眠りを貪っている。
だいぶぐっすり眠っているらしく、どれだけ揺すっても起きない。
そんな中で電車はガタン、ゴトン、と規則正しい線路の音を響かせ、わずかに揺れながら、どんどん進んでゆく。
窓はあるが、外の様子は見えない。まるで暗幕が張り付いているかのように、無窮の闇が景色を覆い隠している。
と。
《次は〜活け造り〜 活け造り〜》
車内アナウンスが聞こえた。――活け造り、とは駅の名前だろうか。
だが、普段は都民として生活しているブリーチャーズには、都内にそんな名前の駅などないということは容易にわかるであろう。
アナウンスが流れても電車が駅に到着する気配はまるでなかったが、不意に車内にひとつ変化が起こった。
自動ドアの上方に設置されている液晶画面がパッとついたのだ。
普通、ドア上の液晶には天気予報だとか、コマーシャルだとか、電車の遅延情報などが表示される。
が、ブリーチャーズの面々の前で起動したそれに映し出されたのは、単なるお役立ち情報ではなかった。
『ぎゃああああああああああああああ!!!!』
液晶モニターの横に埋設されたスピーカーから、大音量で絶叫が迸る。
映し出されたのは、酸鼻を極める殺戮の様子だった。
ブリーチャーズの面々の乗っている車両とよく似た、いや同じ内装の車両の中に、男がひとりいる。
その男の周りには、四匹の小さな猿が群がっている。身長は50センチもなく、みなお揃いの緑色の上着に制帽をかぶっている。
いわゆる駅員の格好だが、その猿たちが持っているのは切符を確認するための機械でも、警笛でもなかった。
刃物を持っている。
四匹の猿たちは男に群がり、出刃包丁のような刃物で男を切り刻んでいるのだった。
『ひぃぃぃぃ!!!助けてっ!!!たすけ……たす、たすけ……――』
男の懇願もむなしく、猿たちは歯茎を剥き出しにし癇高い鳴き声をあげながら男を解体してゆく。
腹を割き、臓腑を取り出し、散々オモチャのように弄ぶ。
男はまさに魚の『活け造り』のように臓腑を抉られ、腹の中をからっぽにして息絶えた。
それと同時に、ブツン……と液晶モニターの映像が暗転する。
終わり、ということらしかった。 《次は〜えぐり出し〜 えぐり出し〜》
活け造りが終わって、十分程度も経っただろうか。
また、車内アナウンスが響く。
今度は『えぐり出し』。もちろん、そんな名前の駅などないというのはわかりきっている。
再び、ドア上方の液晶モニターが点灯する。そこもやはり電車の中で、髪の長い女性が呆然と立ち尽くしている。
と、そこへ後方車両の連結ドアが開き、先程と同じ格好をした二匹の猿が入ってきた。
『ひ……ひぃぃ!!いやっ、こないで……こないでぇぇぇぇ!!!』
女性は悲鳴を上げたが、猿たちが止まることはない。耳触りな鳴き声と共に女性へと殺到する。
先程、猿たちは包丁のような刃物を持っていた。女性も先程の男性のように、切り刻まれてしまうのか。
……しかし、猿が今回持っていたのは刃物ではなかった。
銀色に輝く、一見するとスプーンのような器具。――だが、スプーンではない。
ノエルならば、その器具が何であるかわかることだろう。
それは、アイスクリームディッシャー。アイスクリームの塊から、球状にそれをくり抜くための道具。
『やっ……、やめっ……やめて……いや、いやぁぁぁ……!やめ、やっ、やめやめやめ……いぎゃあああああああ!!!』
女性もその器具に気付いたらしい。にじり寄る猿たちに怯えて後ずさりしたが、猿たちは止まらない。
一匹の猿が身体にまとわりつき、女性を転ばせる。どっとうつ伏せに倒れ込んだ女性の髪を掴んで顔を上げさせ、二匹目の猿が嗤う。
二匹目の猿が、恐怖に大きく見開かれた女性の眼窩にアイスクリームディッシャーを突っ込んで――。
……ブツン。
映像は、そこで途切れた。
電車は相変わらず一定の速度を保って走り続けており、停車する気配はない。
自動ドアも、そして窓も開かない。尾弐の怪力で殴りつけたとしても、窓ガラスはびくともしないだろう。
連結部のスライドドアも同様に動かず、別の車両に移動することも叶わない。
それは、東京ブリーチャーズの面々が車両の中に閉じ込められてしまった、ということを意味していた。
《次は〜挽肉〜 挽肉〜》
十分後、またアナウンスが流れる。ブラックアウトしていたモニターが点灯し、電車内の様子が映し出される。
ショートカットの二十代くらいの女性が、恐怖に引き攣った表情で一匹の猿と対峙している。
今度の猿はなにやらハンドルのついた器具を持っている。ミートグラインダー(挽肉製造機)だ。
その不吉極まる器具で、女性をミンチにしてしまおうというのだろうか。
先程までは、ブリーチャーズはそれを見ていることしか出来なかった。――が、今回は状況が些か異なる。
その光景は、隣の車両で繰り広げられていた。
『いやあああああああああああ!!!』
女性が悲鳴を上げ、猿に背を向けて逃げ出す。自分の今いる車両から、前方車両へ――
東京ブリーチャーズの面々のいる車両へ。
「た、助けてっ!助けてください!猿っ、猿が……!」
それまで開かなかった車両連結部のスライドドアが開き、女性が転がるように車両へ入ってくる。
女性はほとんど倒れ込む形でノエルに縋りつくと、
「お願いです、助けて……!たっ、助けてください……!」
と、息も絶え絶えに懇願してきた。 ノエルに縋りつく女性の背後で、カララ……と音を立てて車両連結部のスライドドアが開く。
そこから現れたのは、短躯にグリーン色の上着を着て制帽をかぶった、駅員姿の猿。
しかしその顔は本物の猿には程遠く、シンバルを叩く猿のおもちゃをグロテスクにしたような醜貌をしている。
両手で抱えるようにミートグラインダーを持った猿は、扉を背にしばし東京ブリーチャーズを観察するように眺めた。
「ひっ……」
女性が猿を見て引き攣った悲鳴を上げ、ノエルに一層強くしがみつく。
東京ブリーチャーズの面々が猿から女性を守ろうとするそぶりを見せると、猿はブリーチャーズを敵と認識したのか、
「ウッキャ――――――――――ッ!!!」
血走った眼をこれ以上ないほど丸く見開き、歯茎を剥き出しにすると、鉄製のミートグラインダーを振り上げて襲い掛かってきた。
猿は動きが素早く、床だけでなく壁や天井までも利用して電車内を縦横無尽に跳ね回る。身体が小さいぶん打撃も当てづらい。
攻撃方法は鈍器として使ってくるミートグラインダーの一撃と、爪によるひっかき。歯を使った噛みつき。
ただの人間からすれば、この猿はまさしく脅威と言えるだろう。
電車内はそう広くはなく、長い得物を振り回すにはスペースが足りないし、派手な立ち回りもしづらい。
また、たまに車両が揺れるため、足場も安定しない。
……とはいえ、東京ブリーチャーズは今までもっと不利な状況下で凶悪な妖壊たちと戦ってきている。
この程度の相手なら、せいぜいが『チョコマカ動き回って面倒くさい相手』と感じるくらいであろうか。
猿はあくまで物理攻撃に終始するのみで、妖術などを使ってくる気配はない。
壁を走る、天井の中吊り広告用のバーにぶら下がる等、猿は散々ブリーチャーズを手こずらせるも、攻撃を受けると後方へ飛び退いた。
「ウキキキッ……キキッ……!」
猿の背後のスライドドアが音もなく開く。目と歯を剥き、威嚇めいた声をあげながら、猿は元来た後方車両へと消えた。
あの猿はいったい何なのか。そして、この電車は。自分たちの置かれている状況は。
……と、そんなとき。
猿が退却した場所とは反対の、前方車両側のスライドドアが開き、そこからふたりの人影が車両の中へと入ってきた。
そのうちのひとりに、ブリーチャーズの面々は見覚えがある。
「東京ブリーチャーズの皆さま!切符を拝見いたしますわ!」
猿の着ていたものとはまた違うデザインの黒い上着にタイトスカート、同色の制帽。
やはり駅員とおぼしき服装に身を包んだ、ツインテールに隻眼の少女――レディベア。
その後ろには、ワイドネックのカットソーにグレーのパーカーを羽織り、ジーンズを穿いた二十代後半くらいの青年が佇んでいる。
一見細身だが、揺れる車内において微動もしていない辺り体幹がしっかりしているのだろう。
短い金色の癖毛に澄んだ碧眼の整った顔立ちは、中性〜女性寄りなノエルとはまた違った男性的な美しさがある。
つまりイケメンだ。街を歩けば、モデルか芸能人かとさぞかし人目を引くことだろう。
そんな、東京ブリーチャーズの面々にとっては初見となる青年を従え、レディベアが高らかに告げる。
「夢の世界へようこそ!そう……ここは夢の中。現実世界の貴方たちは今、睡眠状態にあるのですわ」
軽く右手をブリーチャーズへと伸ばし、隻眼を細める。
「夢の中では、誰もが無防備になるもの。どんな強者であろうと、夢の結果には抗えない。従うしかない」
「その果てにあるものが、死……だったとしても」
大きく裂けた口許からギザギザの歯を覗かせ、レディベアは昏く嗤った。
「この夢から覚めるには、死ぬしかないのですわ。夢の結末は絶対的死。それしかないのです」
「それがこの世界のルール。この『猿夢』のね……うふふふ、あっはははははは……!」
ガタンゴトンと揺れる列車の中で、レディベアの笑い声がいやに反響する。
ひとたび乗り込んでしまったが最後、死体となる以外に下車する方法はない。
夢の中で臓腑を掻き出され、目玉をくり抜かれ、挽肉になって死を迎え。それが現実世界にも反映される――
それが『猿夢』。 「さあ、東京ブリーチャーズの皆さま。この夢の中で、どう無様な抵抗を見せて下さるのか……楽しみにしておりますわ?」
「わたくしたちはその姿を、隣の車両からじっくり楽しませて頂きますから!では――」
「……ちょっと待った、レディ!」
思うさま挑発をして前方車両へ去ろうとしたレディベアを、不意に青年が制する。
レディベアは胡乱に青年を見た。
「なんですの?」
「まだ、わたしの挨拶が終わってないよ?」
「は?何を言っているのです、もう話すことなど何も――」
「いいから、いいから!折角こうして会えたんだ、自己紹介くらいさせてほしい!やあやあ、諸君!はじめまして!」
「ちょ、ロ――」
レディベアの制止も聞かず、青年はにこやかに笑うと両手を広げ、無造作にブリーチャーズたちへと歩み寄ってきた。
そして五人(一人は寝ている)を順番に見遣り、まず最初に祈へと手を伸ばす。
「いや〜、キミがイノリちゃんか!よろしく!故あって今は名を名乗れないんだけれど……」
「そうだなぁ。わたしのことは謎のイケメン騎士Rとでも呼んでくれると嬉しいな!はっはっは!」
青年、改め自称イケメン騎士Rが祈の右手を取り、ねんごろに上下に振って握手する。
ノリが軽い。とても東京制圧――ひいては世界征服を企む妖壊集団のメンバーとは思えない。
Rは祈へと一歩距離を詰めると、他の者に聞こえないようそっと耳打ちした。
「……レディから話は聞いてるよ。レディの初めてのともだちになってくれて、ありがとう」
「もうね……最近のレディときたら、口を開けばほとんどキミの話ばかりで。よっぽど気に入ったんだと思うよ、うん」
「これからも、レディのいい友人でいてくれると嬉しい。彼女、ああ見えて寂しがり屋だから」
そう言って、ぱちりと茶目っ気たっぷりにウインクする。
次にRはノエルに向き直ると、同じように握手をしようとした。
「やあ――次期雪の女王陛下!クリスの妹ちゃん?それとも弟くん?どっちで呼べばいいかな?」
「クリスのことは……本当に惜しい女性を亡くした。心から、お悔やみを申し上げるよ」
Rは胸元に左手を添え、一瞬悼む表情を見せたが、すぐにまた笑顔を向ける。
「彼女はずっとキミのことを案じていたよ。でも……立派に成長したキミを見れば、きっと安心するだろうね」
「彼女とはもっと仲良くなりたかったんだけどねえ、主にベッドの中で!ほら……彼女、すごく魅力的な身体をしてただろう?」
「まっ、彼女はわたしなんて眼中になかったみたいで。まったく見向きもされなかったんだけど!ははは!」
あっけらかんと笑う。どうも青年なりのジョークらしい。
それから、Rはポチの方を見ると、その傍に跪いた。
「はじめまして、新しい狼王殿。あのロボがまさか、自分以外の誰かを認めて後を託すとは……俄かには信じられなかったけれど」
「ここへきて、その疑問も氷解したよ。なるほど、キミからは強い意志の力を感じる。彼が認めるのもうべなるかな、だ」
右手を伸ばすと、Rはポチの頭を撫でようとする。
「彼とは仲良くできなかった。だから、わたしには彼の心のうちを理解することはできなかった」
「けれども、彼に託されたキミなら、きっと彼の遺志を継いでくれることだろう」
「……彼の魂が。キミと共に在りますように」
軽く胸の前で十字を切ると、Rは立ち上がった。 「さて」
Rが尾弐と対峙する。
その細身の佇まいからは、妖気は感じられない。見た限りでは、ただの人間以外の何者でもない。
祈やノエルにそうしたように、Rは人懐っこい笑みを浮かべると、尾弐へ右手を差し出しかけた。
が、握手を求めようとはせず、すぐに手を下ろしてしまう。 「シェイクハンドはノーサンキュー、という顔をしているね。そんなに警戒しなくてもいいよ、ミスター」
「少なくとも、わたしはキミたちと戦うためにここへ来たわけじゃないからね。あくまでわたしはレディの護衛だ」
「キミたちがレディに危害を加えるというのなら話は別だけれど、今回のキミたちの相手は我々じゃない……だろう?」
「まっ!わたしはギャラリーということで、背景か何かと思ってもらえると嬉しい!」
ホールドアップ!という感じで、笑いながら諸手を挙げてみせる。
「それにしても、話には聞いていたが――予想以上に面白い」
「イノリちゃんやノエル君、ポチ君は、まったくもって正義の味方。愛と勇気に満ち溢れた、キラキラ輝く魂を持っているけれど――」
尾弐の姿を見遣りながら、碧色の双眸を細める。
「ミスター。そんな色の魂を持つキミが、どうして正義の味方なんてやっているのかな?」
「キミにふさわしい居場所は、そんなキラキラした場所より。むしろ……」
そこまで言いかけると、Rはハッとして口を噤んだ。苦笑を浮かべ、一度かぶりを振る。
「いや。失言だった、許してほしい。やっとキミたちに会えた嬉しさから、ちょっぴり饒舌になってしまったみたいだ」
「いつまでお喋りしているんですの!親睦を深めるために貴方の随行を許したわけではなくってよ!?」
レディベアが叱責する。Rは軽く肩を竦めると、東京ブリーチャーズから離れてレディベアのところへ戻っていった。
「ふん。余計な時間を使ってしまいましたわ。――では、貴方たちがこの夢の世界で果たしてどれほど耐えられるか」
「せいぜい無様な足掻きでわたくしを楽しませてくださいな!アデュ……あ、あら?」
最後まで余裕の口ぶりでそう言い放つと、レディベアは前方車両へと退去しようとした――が。
ドアが開かない。
レディベアとRが東京ブリーチャーズに接触しに来た際はあれほどスムーズに開いたスライドドアが、ビクともしない。
取っ手に両手をかけ、レディベアは渾身の力を込めてドアを開こうとしたが、押しても引いてもドアは微動だにしなかった。
レディベアは狼狽した。
「ど、どうなっておりますの……!?」
すると、車両内に不気味なアナウンスが入る。
《次は〜つらぬき〜 つらぬき〜》
レディベアが開けようとしている前方車両のドアの代わりに、後続車両のスライドドアが開き、駅員姿の猿たちが入ってくる。
その数、五体。みな丸い目を血走らせ、歯を剥き出しにし、キッキッと不快な鳴き声をあげている。
猿たちはアイスピックのようなものを持っている。考えるまでもなく、それで車両の中にいる者たちを貫こうというのだろう。
そう。『この車両にいる者たちすべて』を。
「ま、まだわたくしが退避しておりませんわよ!?なんとかなさいな、R!」
「と言われても……。嵌められちゃったかな?こりゃ参った!あっはっは!」
「笑い事ではありませんわぁぁぁぁぁぁ!!!??」
想定外の事態に慌てるレディベアとは対照的に、まるで危機感というものがなく笑うR。
そんなふたりのことなどまるでお構いなしに、五匹の猿たちは一声高い叫び声をあげると、どっとブリーチャーズへと襲い掛かってきた。 23 創る名無しに見る名無し sage 2017/10/19(木) 12:03:47.59 ID:DW1ZWGEl
ハイパーウンコ!参加希望してくれー!
おい、ウンコGM
ちゃんとこっちでも謝罪してスレ畳めやw 【スレをご覧の皆さま、参加者の皆さまへ
上記の書き込みについて、ご説明させて頂きます。
発端はこことは別の私が参加していたスレへの嫌がらせの書き込みです。
書き込み自体は個人を攻撃するものではなく、創発TRPGすべてを誹謗中傷するものだったのですが。
その書き込みの犯人が私はどうしても許せず、怒りがどうしても抑えられず。
その挙句、目には目を、歯には歯をとこちらも誹謗中傷の犯人と思しきスレに下劣な書き込みをしてしまいました。
愚かなことをしたと、悔やんでも悔やみきれない気持ちでいっぱいです。
そちらのスレの方々にも、また、これまで一年近く遊んで頂いた当スレの方々にもご迷惑をおかけする結果となってしまいました。
本当に、申し訳ありません。
発端となったスレには陳謝し、お顔を合わせるのも忍びないと思い、引退をお伝え致しました。
こちらのスレでも、本来はそうすべきなのだと思います。
私は怒りに任せた軽率な行為で、皆さんの信頼を裏切ってしまいました。愚かなGMです。
何を言われても仕方ないと思います。
どのようなお叱りの声も、自分のやったことの因果応報であるとして、受けとめたいと思います。
ただ、もしお許し願えるのでしたら、こちらのスレは存続させて頂きたいと思います。
自分勝手なことばかり言って、申し訳ありません。
GMの資格などもうないのでしょうが、それでも、こちらのスレには愛着があるのです。
最後まで続けたいのです。
本当にごめんなさい。私は、皆さんのことを裏切りました。
けれども、どうか。
もう一度だけチャンスを頂けませんでしょうか。
何卒宜しくお願い致します。
橘音PL】 ブレモンは愛着ねえから糞まみれにして逃げるけど、自スレは愛着あるから続けたいと
クソフト以下のゴミだなお前は つーか東ブリの連中って前からドラリンに対してもこういうこと繰り返してんだろ?
悪いことやってりゃいつかバレんだよ、カス クソフトのスレは未来永劫荒らし続けるとか言ってたし
東ブリ改めウンコブリーチャーズも同じ目に合う覚悟はあるということだな?
お前が消えない限り永遠に荒らし続けるよ!やったね! >>104
絶対に許さない
ってか最初に荒らしの避難所に誘導したよなお前?
あのなな板荒らしとも同一人物ってか
最悪だね ブレモンには盛大にウンコバーストスプラッシュ浴びせておいて
自分のスレは愛着あるから続けたいですぅ〜ってか
んなもん通るわけねえだろw 何も悪くないブレモンの人達にあれだけ迷惑かけといて
こっちのスレでは何もなかったように続けたいってのはそりゃ無理だよ
本当に申し訳ないと思ってるなら、さっさとスレ畳んで消えてくれ というか真ちゃんの人にマジで申し訳ないと思わないの?
これだけ迷惑かけられたのに、批判上等でお前のこと受け入れるとまで言ってくれてるんだぞ
それで糞ブリだけ再開とか本物のウンコなんじゃないかお前 那須野くんよぉ
あんたは低俗な輩なんかじゃないと信じていたが・・・心底失望したよ 家で不労所得的に稼げる方法など
参考までに、
⇒ 『武藤のムロイエウレ』 というHPで見ることができるらしいです。
グーグル検索⇒『武藤のムロイエウレ』"
V1JUT695IV 知り合いから教えてもらったパソコン一台でお金持ちになれるやり方
参考までに書いておきます
グーグルで検索するといいかも『ネットで稼ぐ方法 モニアレフヌノ』
DYDMH 中学生でもできるネットで稼げる情報とか
暇な人は見てみるといいかもしれません
いいことありますよーに『金持ちになる方法 羽山のサユレイザ』とはなんですかね
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