>「俺はカイザード。話は後だ、女、そのイノシシはやべぇぞ」

魔族が物陰に隠れてすぐ、赤い服を着た男が現れた。
ナイフと銃を持ち、いかにも荒事に慣れているという風な雰囲気を感じさせる見た目だ。

そして男は即座に銃を構え、猪に数発撃ち込んだかと思うと緑色の光が煌いて、猪の装甲版を深く切り裂いていく。
とどめと言わんばかりにもう一発、頭部へと撃ち込み距離を取った。

>「爆発するぞ!」

「あ、ありがとう!」

膨張する猪の身体に気づき、魔族も忠告通り慌てて離れる。
二人が距離を取った直後、猪は爆散し辺りに破片をまき散らした。

>「危ないぞ、女。俺はカイザード。「早撃ちカイザード」とも呼ばれている。女は守らないと気がすまないんでね。
それより折角そんなに綺麗なのに、銃の多い地帯は危険だ。何かここにいる理由でもあるのか?
銃弾は皮膚を容易く破る。中身を引っ掻き回す。そしてその傷は簡単に癒えることはない」

この不安定な世界において、一つの地域が丸ごと変異するというのはよくあることだ。
考えられる理由は様々だが、二人のような旅人にとっては厄介な問題でしかない。
変異の中でもここに起きている「機械化」と呼ばれる現象は地域の動植物が徐々に機械へと成り代わり、
やがては巨大な工場が出来上がるというものだ。

「……助けてくれてありがとう。私はカリーナ。
 両親を探して旅をしてるの。この辺りにある遺跡に両親がいたって聞いて、探しに来たんだけど…あなたは?」

>「妹を探してずっと旅をしている。この間に色んな女と付き合い、抱いてきた。死んだヤツもいる。

「そう、なら一緒に来てほしいの。機械化が進んでるって分かったならやりようはあるし、仲間は多い方がいいわ」

カイザードの呟きにも似た警告をまともに受け取ることなく、カリーナは平然と返す。
国を出てからずっと言われてきた脅しに、カリーナはもう気にすることもなかった。

「報酬が必要なら言って。あなたの実力は十分なもの、金を払う価値はあると思う」

カリーナは近くの機械化樹木に背中を預け、カイザードの返答を待った。

>「あ〜、お取込み中のトコロ失礼、というかもう終わった後かな?
俺の名はアディーム、遠い世界でトレジャーハンターしているのだけどこちらに迷い込んでしまったようでね」

「あら、放浪者?それにしては魔力を感じるけど……私のご先祖様と同じ世界から来たのかしら?
 私の名はカリーナ。あなたも戦えるようなら、一緒に来る?」

他の世界からこうして人間や他の生物がやってくることは珍しくない。
そういう者は「放浪者」と呼ばれ、故郷に帰るために活動している者が多い。

カリーナの目の前に立っている褐色肌にゆったりとした服を着ている男も、放浪者になってしまったのだろう。
とりあえずは友好的に接しておこうと、カリーナは微笑みながら話した。


【アディ―ムさんも参加ありがとうございます!
 何か世界観について質問があれば受け付けますので遠慮なくどうぞ!】