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非リレー型バトルロワイアルを発表するスレ part38 [無断転載禁止]©2ch.net
0001創る名無しに見る名無し垢版2016/10/11(火) 20:30:25.65ID:9XK6guSh
1999年刊行された小説「バトル・ロワイアル」

現在、様々な板で行われている通称「パロロワ」はリレー小説の形をとっておりますが
この企画では非リレーの形で進めていきます。

基本ルール
・書き手はトリップ必須です。
・作品投下前に登場キャラクター、登場人数、主催者、舞台などを発表するかは書き手におまかせです。
・作品投下前と投下後にはその意思表示をお願いします。
・非リレーなので全ての内容を決めるのは書き手。ロワに準ずるSSであればどのような形式、展開であろうと問いません。
・非リレーの良さを出すための、ルール改変は可能です。
・誰が、どんなロワでも書いてよし!を合言葉にしましょう。
・ロワ名を「〜ロワイアル」とつけるようになっています。
〜氏のロワは面白いでは、少し話題が振りにくいのでAロワ、Bロワなんでもいいのでロワ名をつけてもらえると助かります。
・完結は3日後だろうが5年後だろうが私は一向に構わんッッッ!!

前スレ
リレー型バトルロワイアルを発表するスレ part37
http://hayabusa6.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1452525053/

非リレー型バトルロワイアルwiki
ttp://www26.atwiki.jp/anirowakojinn/pages/1.html
004248◇家族関係 ◆YOtBuxuP4U 垢版2017/04/23(日) 04:13:43.68ID:7flaZGxo
 
「え」
「気付いた?」

 姉さんは笑った。
 赤子にそうするような、慈しみのある微笑み。でもどこか違和感がある。
 瞳の奥が笑っていない。嘲っている。見下している。目だけがそうだから、ひどく歪んで見えた。
 記憶の中でも、こんな目をされた。そう、大学の講義室のような場所で。
 忘れるわけもない。わたしは。わたしは。今ここにいるわたしは――その場所から始まった。
 それまでのわたしを殺されて、別のわたしとして生かされ、殺し合わされ、生き残って。こうして戻ることができた。
 戻ることが出来たけれど、取り戻すことが出来たけれど、でも、別物になってしまった。
 させたのは。
 そうさせたのは。

「き」

 そうさせたのは、あなただったの?

「奇々、怪々……?」
「あらら。実の姉に向かって、いったい何を言ってるの? 鈴女ちゃん」

 あの殺し合い実験の主催の一味。
 奇々怪々と同じ姿、同じ顔をした姉さんは。まずそう言った後、

「なーんて。いまさらはぐらかしても、雰囲気でばれちゃいますよねえ……ふふ、あはは、正解ですよ正解。
 私が奇々怪々です。その通り。そして、貴女の姉でもある。
 殺し合い実験の脱出者の姉が、殺し合い実験の進行者だった……なかなか奇々怪々な出来事だと、思わない?」
「……姉さん……な、なんで……」
「なんでもなにもない」

 唐突に、類語辞典に挟んでいた一枚の紙を、わたしに見せるようにして広げた。

「復讐ですよ」

 わたしは目を見開いた。
 それは紙ではなく、写真だった。

 見覚えのある、写真だった。

 家族写真だった。

 わたしの家の、家族写真だ、四人家族が、映っている。

「……あ……」
004348◇家族関係 ◆YOtBuxuP4U 垢版2017/04/23(日) 04:14:16.92ID:7flaZGxo
 
 七年前の、七五三だ。
 思い出す。思い出せる。
 わたしはまだ七歳で、姉さんのことはお姉ちゃんと呼んでいた。
 お姉ちゃんはいまと変わらずわたしのことをすずめちゃんと呼んでいた。
 お母さんはまだ健康で元気で、着物を着てはしゃいでいるわたしたちを見て、しょうがない子たちねと笑っていた。
 うん。覚えてる。着物の感触と特別感が面白くて、じっとしてなさいって言われてもじっとしてられなかったんだ。
 お父さんはといえば、そんなわたしたちを見て、後ろで優しく微笑んでいた。

 お父さんはけっこう無口な人だった。
 口下手だといつも言っていた。
 けれど、わたしにとっては、お父さんこそが、わたしの、ヒーローだった。

 自衛隊で鍛えた大柄の体は、たくましくて、頼もしくて。
 町内運動会なんかじゃ敵なんていなくて。
 釣りとか、キャッチボールとか、お仕事で忙しくてもわたしと遊んでくれて。
 疲れたらおんぶして運んでくれて。その背中があったかくて好きで。

「あ……え……?」

 その背中を、わたしはずっと目指そうと。
 お父さんみたいな、ヒーローになろうって、思って。
 なのに――なのに、写真で見る、その顔は。見覚えがありすぎるくらい、見覚えがあって――。

 わたしは言葉を、思い出す。

 “なにしろ、無作為選出ですので。調べでは近親者はいないはずですが、親戚や知人くらいならいるかもしれません。”

 参加者の選出に対する、奇々怪々の言葉。
 わたしたちはあの時点では、その言葉を信じるしかなかった。
 だけどあれは、あくまで「今回の参加者の中で」という枕詞がついた言葉でしか、なかったのだ。 
 目の前にいる「主催者側」である彼女との間に近親関係があっても、適用されなかった。
 そしてもうひとつ。

 “そしてもう一つは――”己だけが前回のルールを引き継いでいる”ということだ。”
  
 前回のルールを引き継いで、「前回の参加者の延長戦」としてゲームに挑んでいた彼も、ルールの適用外だった。
 つまりそういうことだったのだ。
 だから。
 でも、なんで。
 どうして、じゃあ、あの時?

「分からなかったでしょう?」

 類語。並べられた一見違う三つの単語は、実のところすべて同じ意味。
 奇々怪々は――わたしの姉さんは――“鬼塚雷鳥”は。
 わたしに語り掛ける。
 わたしに語り倒す。
 わたしを、語りで、殺す。

「それが、ルールでしたからね。
 『この人間関係を、悟られてはならない』。それがあの男が課されていた、本当の首輪。
 あの男は――傍若無人は、「貴女を守る理由を貴女に知られることなく、貴女を生き残らせなければ」いけなかった。
 そうしなければ首輪を爆発させると、私は言いました。ふふ、そのうえで私はあの男を、ひたすら虐めてあげました。
 苦戦するあの男を見るのは最高に笑える娯楽だったし、それを乗り越えても、すでにそのときにはもう、貴女は反転に堕ちていて。
 死ぬほど滑稽でしたよぉ? 抱きしめたくて堪らないだろう愛娘が、ぼろぼろに死にたがりながら、自分の元に向かってきて!
 それを慎重に、慎重に! 取り返しのつかない痛みを与えないように慎重に、返り打たないといけないあの男を見るのは!
 あのまま、あの男が貴女を殺してしまうというのが一番面白かったんですがねぇ♪
 結局、ゲームはあの男の勝ち。死んで勝ち逃げされて、私は腹の虫が収まらないんですよ。
 だから、こうして貴女の前で“種明かし”をするのだけを楽しみにしていたの」
004448◇家族関係 ◆YOtBuxuP4U 垢版2017/04/23(日) 04:15:13.72ID:7flaZGxo
 
 ぎぃ。と音が鳴った。油が挿さっていない学習机の椅子が、ひどく耳に刺さる音を出した。
 姉さんは類語辞典を机の上に置いて立ち上がった。わたしは立ち上がった姉さんに見下げられる形になった。
 そう、分からなかったわたしに、分からせるように。知らなかった話の雨を降らせる側だと、見せつけるように。
 見下した。
 ……喉が渇く。眼がそらせない。夢から醒めても悪夢は終わっていなかった、なんて、そんな言葉さえ陳腐化するような状況。
 朝の寒さが背中を這い回る。やってしまったこと、させられていたこと、わたしの、わたしは、わたし……。
 そんなわたしの震える姿を楽しそうに見つめて、にっこりと笑って、姉さんは続ける。

「私、養女なんですよ」
「……ぇ……」
「髪の色が違うでしょう? 血がつながってないんですよ、私と鈴女ちゃん」

 ――家族唯一の黒髪をくるくる遊ばせて。
 種明かしは、まだ終わらない。

「もともとは孤児でした。ショッピングセンターに置き去りにされた、両親の帰りを待つ純粋無垢なこども。鈴女ちゃんも、会ったでしょう?」

 わたしは思い出す――あの悪い夢の中、最後の最後に出会った小さな女の子がいた。
 無我夢中に、自分を忘れて、理由も忘れて、待ち続けているあの子。
 あの女の子も、黒髪だった。
 あの女の子も、姉さんの類語だった?

「そのこどもは、悪くない大人に娯楽施設から体を移されても、
 ずうっと、ずうっと。お父さんとお母さんの帰りを待っていました。待ち続けていました。
 でもある日、子宝に恵まれない一組の夫婦に、カワイソウカワイソウと言われながら引き取られたんです。
 それがあの男と、あの女。自分たちの都合だけで私を自分たちの間にぶら下げた、偽善者たちです」
「……!」

 そんな言い方、と反論しようとしたわたしを遮るように、姉さんはまくしたてる。

「ああ……言い過ぎだという意見も、貴女以外になら言われてあげましょう鈴女ちゃん。
 でも貴女にだけは、言う権利がないはずですよ?
 鈴女ちゃんは私よりは頭の回転が遅いけれど、その答え……計算できないわけないですよねえ?
 だって、その計算式に代入する変数が、自分自身なんですから」

 口から出かかっていた言葉を、強制的に飲み下させられる。
 姉さんのヒントで、わたしは確かに答えを導いてしまう。
 わたしがいること。わたしが産まれて、ここにいること。

「貴女が産まれてこなければ。私も私を受け入れられていたかもしれません。
 偽物の親と偽物の娘だけで過ごした3年間は、はっきり言って、悪くありませんでした。
 娯楽施設に私の一部を取り残して、いろいろを割り切った今の私を作る程度には、悪くありませんでした。
 たとえそれが望んだ暖かさと違っても、ぬるま湯につかった氷が暖かく溶けていくように。
 意固地に凍った私のこころは、たしかに溶かされていたんでしょう。……でもお前たちは本物になった。私を置きざりに、本物になった」

 子宝に恵まれなかった夫婦が、子宝を手にしてしまった。
 もう別の場所から子宝を譲り受けていたというのに、そういうことをして、そうなってしまった。

 お姉ちゃんになるのよ。お姉ちゃんにならなきゃね。最初はそう言われただろう。
 そして姉さんも受け入れただろう。そうなろうとしただろう。
 でも、でも。
 ……お父さんもお母さんも間違いなくいい人だ。悪い人だなんてわたしが言わせない。
 だけど想像できてしまう。今目の前にいる姉さんの憎しみに満ちた目が、何を見てきたのかを。
004548◇家族関係 ◆YOtBuxuP4U 垢版2017/04/23(日) 04:16:32.87ID:7flaZGxo
 
 どれだけ頑張ったとしても、人は誰かと別の誰かを完全に平等には愛せない。
 あるいは、どれだけ愛されてるのかなんて、愛された側にしか判断ができないもの、測ることこそ冒涜だ。

 それでも、偽物の姉と、本物の妹。わたしとお姉ちゃん、どちらが愛されていたか。それを俎上に載せるのなら。
 わたしから見て、姉さんから見て、お父さんから見て、……お母さんから見て、どうだったんだろう?
 少なくとも、姉さんから見てそれは……。

 わたしと姉さんは他人行儀な関係。もっと昔はそうじゃなかったのに。
 それは、どうしてだったろう?
 ああ、どうしてだったっけ?
 お母さんが病に倒れてしまって、
 何もできないまま死んでしまったとき。
 あのとき、姉さんが、それほど悲しくなさそうだったからだっけ?

「だから、復讐です。
 私を置いて幸せになったあなた方への、復讐です。
 私は、誰もかれもを恨むことしか、もうできないんですよ。鈴女ちゃん、貴女のせいで。
 いまだに私を迎えに来てくれない本物のお父さんとお母さんも、
 私で満足せずに貴女なんかを作ってしまった偽物のお父さんとお母さんも、
 私が受けるはずだったものをいっぱいたくさん死ぬほど持って行ってしまった貴女も、恨むしかないんですよ」

 薄ら笑いを浮かべて姉さんは言う。
 それは、決定的な破綻の先にある笑顔だった。
 つい少し前に見たばかりの顔で、今まで知らなかった顔であって、ほんとは、知っていなければならなかった、歪み。

「同じように幸せになれないなら、せめて同じだけ苦しんで欲しい」

 同類に。
 類語に。
 なってほしい。

「貴女が苦しんでくれることだけが、私の幸せなんです」

 それが、姉さんがわたしに、
 鬼塚雷鳥が鬼塚鈴女に向けた、ただ一つの感情だった。

「ねえ鈴女ちゃん――苦しい? つらい?
 大好きだったお父さんをその手にかけた気分はどう?
 私は大嫌いだったあいつを殺せて今とってもとっても気分がいいよ。天まで飛べそうなくらい。
 死にたい? でもまだまだ死なせてあげないよ。すべての始まりである貴女だけは、もっと苦しめないと気が済まないから。
 だから生き残ってくれて、本当に嬉しかった。
 死んでいった人たちの分まで、鈴女ちゃんは、生きなきゃ、いけないですもんねえ?
 ……あはは、あははは。その顔。その顔が、見たかったんですよ。
 いっぱい恨みあって、永遠に殺し合いましょう? かわいいかわいい鈴女ちゃん……」
「姉さ……」
「でも、今日はここまで。今回はここまでで終わり。
 今日はあなたを底まで突き落としに来ただけだから。
 これから、私が孤独を噛み締めた時間と同じだけ、鈴女ちゃんにも絶対の孤独を味わってもらいたいから。
 だからここまで。いったんこのお話には栞を挟んで閉じるの。開けさせない、進めさせない。
 二年後、また会いましょう。今度はもっといっぱい、恋しく故意して、愛しく意図してあげる」
「姉さん!!」
004648◇家族関係 ◆YOtBuxuP4U 垢版2017/04/23(日) 04:17:56.83ID:7flaZGxo
 
 じゃあね。と手を振られた。
 言いたいだけ、やりたいだけやって、姉さんはそんな別れ言葉を私に送った。
 姉さんが消えてしまうような気がして、わたしはベッドから跳ね起きた。手を伸ばして、立ち上がって、姉さんの服をつかもうとした。
 でも、《悪い予感は、的中してしまう》。
 《確かに届くはずだったわたしの手は、奇々怪々なまでに空を切った》。
 バランスを再度崩して、カーペットに膝をつく。
 《姉さんはすでにわたしの部屋の扉を開けていた。》振り返って、わたしを嘲る。

「ふふ、だめですよ、鈴女ちゃん。《触れられないかもと考えた時点で、私には触れられないんですよ》。
 最悪の想像は現実になる。ほんの少しの疑いが真実になる。それはもう、奇ッ怪至極に。あなた方の悪い予感は的中する」
「ルール、能力……! 《奇々怪々》の……!!」
「ご名答。別に夢の中じゃないと使えないとか、そういうことはないんです。文字さえそこにあればいい。
 貴女の枕の下にも、ありますよ。今使っても、意味はあまりありませんけれど。いずれまた、使ってもらいます。では」
「……待ってください! まだ、まだ、何も……何も聞けてない! 何も言えてないです!」

 わたしはごちゃごちゃの頭から言葉を絞りだす。

「姉さんも! わたしは、姉さんも憧れでした!」

 いまにも消えてしまいそうな姉さんを前に、何を言えばいいかなんて考える時間も余裕もない。
 それは、ほとんど条件反射で出たような、剥き身の言葉だった。
 取り戻したばかりの、本心だった。

「父さんの、ヒーローみたいに強くて優しくて、大きくて頼れるところと、同じくらい!
 何でも知ってて、頭がよくて、でもそれを自慢したり鼻にかけたりしない姉さんのことが、わたしは、誇りだったし、憧れでした……っ!」
「……」
「だからわたし、勉強だって頑張って! 生徒会長だって、似合わないと思ったけどやって。
 でも母さんがあんなことになって。いろいろあって。少し他人行儀になって。でも、それでもわたしは、……わたしは!」
「…………」
「わたしは、姉さんのことを、本当の姉さんだと思います。
 たとえ姉さんが、偽物のまがいものだと思っていたとしても、わたしは……父さんだって母さんだって、きっと!!」
「………………解釈違いですね」

 瞳を細めて。眉間にしわを寄せて。
 嫌なものを見るような顔で、姉さんは、わたしに向かって呟いた。

「いいでしょう。では、解釈合戦といきましょうか。
 歴史上の死者がのちのちの人々に好きなように解釈されるように。貴女はそのまま、本当はすべてが正しかったのだと信じてください。
 私が勝手に愛の差を感じて、貴女たちを羨んで、妬んで、間違って、それでこうなってしまったと。
 そうやって私を馬鹿にすれば、いいと思いますよ」
「馬鹿に、なんて」
「もう届かないんですよ。口当たりの良い、当たり障りのない正論は、私には一切ね。
 誰からも愛されなかったと、世界から愛されなかったと、そう解釈してしまう以外に、生きる動力が湧かないんです。
 そんな私の解釈を、否定するというのなら。結局、殺し合うしかない。
 私と貴女の終末は、血まみれの泉の中でひとりが斃れ、ひとりが勝ち残る風景以外にはありえません。それ以外を、望みません」

 姉さんは冷たく言い放つ。

「私を救えるだなんて思わないでくださいよ? 小さなヒーローさん」
004748◇家族関係 ◆YOtBuxuP4U 垢版2017/04/23(日) 04:21:19.75ID:7flaZGxo
 
 そして扉に手をかける。閉じていく扉が、わたしと姉さんとの間に絶対の断絶をつくるのを、わたしは黙って見ている。
 その瞬間のわたしの感情を、どう言葉にすればよいのだろう。
 最悪の出来事に巻き込まれて。
 自分の自分たる根源を沢山奪われて。
 残った少しの自分らしきものを頼りに戦おうとして、
 なのにその意思すら嘲笑うように反転して、間違えさせられ。 
 制御できずにだだ流して、すり減らして、すり減らして、枯渇して、赤く染まって。折れて、崩れて、ばかになって、振り乱して。
 そんなわたしだったのに、助けられて。
 間違えたからって間違え続ける必要はないって、言ってもらえて。
 もう一度、前を向けるくらいになったのに。
 助けてくれた人たちのほとんどには、ありがとうさえ言えず。
 すごすごと帰ってきてみれば、すべてを奪われた後だった。
 そして今。
 すべてを奪ったその人を、絶対にわたしは救えない。

 そんなの。
 そんなのって。
 そんなのって――。




 認められないに、決まってる。

 だめだ。
 だめだ、勇気凛々。
 その四字熟語は、ここで何もしないような意味合いだったのか?
 違うだろ。
 
 唇を精一杯噛みしめてから。
 扉が閉まり切る寸前に、わたしは心の蛇口をありったけ捻って、叫んだ。

「それでも、助けます!」

 空気が震えるような声。学校の、合唱コンクールでも、応援合戦でも出したことのないような声。
 扉は閉じ切らない。止まった。姉さんは――振り返らない。
 声量に驚いて扉を引く手を一瞬、止めただけ。

 言いたいだけ言って、遮断してしまったのかもしれなかった。
 わたしの言葉はもう聞こえていないのかも、届いていないのかも、知れなかった。
 それでも叫ぶ。
 それでも叫ばずにはいられない。
 そうだ。
 だってわたしは、勇気凛々だった。
 失敗を恐れず。危険も恐れず。勇ましく気力を振り絞って、物事に立ち向かうという意味の四字熟語だった。
 わたしがわたしに帰ってもその文字は、わたしの中に、刻んである。

 わたしはわたしで。
 わたしは勇気凛々で。
 沢山貰って、沢山学んで、あの場所で、変えてもらえた。

 なのに、今。
 これだけされて。
 これだけやられて。
 それで、何にも言い返せずになんて――――終われるか!
004848◇家族関係 ◆YOtBuxuP4U 垢版2017/04/23(日) 04:22:54.30ID:7flaZGxo
 
「助けます。救ってやります。あなたの望みなんて知らないです。
 あれだけわたしをめちゃくちゃにしておいて、望み通りにしておいて! 自分だけ望み通りに終われるだなんて、思わないでください!
 ぜんぶ、ぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶ、ぜんぶぜんぶぜんぶっ、否定してやる!
 あなたのその、恨むだけの人生ってやつも! 血まみれの結末なんてものも! そうするしか無いなんて、そうなるしか無いなんて、絶対に、言えなくしてやる!」

 沢山の言葉に助けられたから分かる。
 自分が文字になってしまっていたからより分かる。
 紙に書き起こす。言葉に出す。 
 そうしてこの世に産み出した文字には確かに、姉さんが最初に言った通り、不思議な力がある。
 それは、祝福かもしれないし、あるいは呪いかもしれない。
 どちらでもいい、わたしに力をくれるなら。
 空気が変わるまで吠えてやる。
 未来が変わるまで、戦ってやる!
 
「言ってくれれば、よかったんだ! つらいなら、苦しいなら、悲しいなら、もっと早く吐き出せばよかったんだ!
 わたし、知りませんでした、気づけませんでした、姉さんはいつだって、いつだって、わたしの知ってる姉さんのままだったから!
 わたしは不器用なんです! 父さんだって同じです! ううん、誰だってそうです!
 人の気持ちなんて、そうそう分からないんですよ! 心の中に、夢の中にまで隠してるものを、察しろったって無理です!
 ううん、違う、察されようとも、してなかったんですよね!?
 姉さんは過去にすがって、後ろだけ見て口を閉じて! 恨んでばっかりで変わろうとしなかった!
 死んでも変わってやらないって思ってる! それが、一番、いちばん許せない!
 敢えて言います!
 あなたの意固地なわがままに、わたしを付き合わせないで下さい!
 わたしは、やりたいようにやります! 生きたいように生きます!
 もっともっと、もっと力強く、勇ましくなって! 救いたいように救って、変えたいように人生を変えてやる!
 だから、だから! わたしは、わたしが、姉さんを助ける! 殺し合いをするような人たちから引きはがして、全部の罪を償わせる!
 誰よりそばで見てたから! 誰より、あなたに憧れてたから! あなたを無理やり変えてでも、あなたに生きていてほしいんです!!」

 わたしの感情の高ぶりに呼応したのかもしれない。《手のひらがいつの間にか、一緒に戦い抜いたあの剣を握っていた》。
 考えるより前に先が動く。わたしは《りんりんソード》を床に突き立て、強引に立ち上がった。
 何年も寝たきりの病人みたいに動かない足を無理やり動かして、前へ。進む。
 大質量のその銀色は、わたしにだけは重くない。扉に《りんりんソード》をぶつける。
 扉なんていらない。二度と閉じたり開いたりしなくなってしまえ。それでわたしと姉さんとの間にあるものが取り払われるなら、それでいい。

「《りんりん》……《ソード》ッ!!」

 こじあけた、というか、ぶち破ったら。
 《案の定、姉さんは不可思議な闇の中に吸い込まれて消えようとしていた》。逃げようとしていた。
 ああ。案の定だとか。悪しき諦念が脳裏によぎっている。
 これだけ勇気を振り絞っても、まだ今のわたしにはここまでだ。
 それでも、虚勢は張ってやる。
 ヒーローならばそうするとかじゃない。文字ならばそうすべきとかじゃない。わたしがそうしたいからだ。
 わたしがわたしでありたいからだ。
004948◇家族関係 ◆YOtBuxuP4U 垢版2017/04/23(日) 04:24:11.34ID:7flaZGxo
 
「絶対に、助けます」

 そんなわたしに背を向けて。姉さんは捨て台詞を放った。

「絶対に、助けられてあげません」

 当然それは、類語なんかじゃなかった。
 とびっきりの反語だった。

 偽物を恨み続ける姉さんと、本物だったと信じ続けるわたし。
 救われることを拒絶する姉さんと、救うことを押し付けるわたし。

 意固地に主張する真逆の意味を。
 折れずに掲げる正反対の願いを。
 どちらも譲らないのであれば、それは確かに、解釈合戦の始まりだった。


 ■■■■

 ■■■■
 
 ■■■■


 こうして、少女がひとり、冷たい部屋に残る。
 薄暗い部屋の中、ベッドの縁に頭をのせて、天井を見つめている。
 終わりのあとの種明かしも終わって、彼女の殺し合いはこれで、ひと段落。

 生きている限り、お話は終わらない。
 たった今、その勇気で破った扉の先に、再びの戦が彼女を待ち迎えている。
 それでもせめて、朝日がこの部屋を照らすまでは。
 彼女がどんな顔で時を過ごしているかは、誰にも分からないようにしよう。

  

【鬼塚家・2F 鬼塚鈴女の部屋】

【勇気凛々/女子中学生】
【状態】
【装備】なし
【持ち物】なし
【ルール能力】勇気を出すとりんりんソードを具現化できる
【スタンス】救ける。
0050家族関係 ◆YOtBuxuP4U 垢版2017/04/23(日) 04:27:02.33ID:7flaZGxo
投下終了です。

エピローグでありプロローグみたいな感じですね。
今日中に第49話を投下して四字熟語ロワは完結になります。
wikiの編集とかしなきゃ。
005249◇死句発苦 ◆YOtBuxuP4U 垢版2017/04/23(日) 22:34:51.98ID:7flaZGxo
 

 ――世界は解釈しだいで姿を変える。

 目で見て、形と色を定義して。
 鼻で嗅いで、匂いと刺激を感知して。
 耳で聴いて、音と声とを認識して。
 手で触って、感触と湿度を確かめて。
 口に含めば、味と温度を理解する。

 それはまだ、受け止めただけで止まっているただの情報にすぎない。
 情報を情報のまま処理するのなら、人間と他の動物は何も変わらない。

 その情報をさらに脳で変換して、意味を付加する。
 言葉に変える。
 それが、解釈のひとつめ。
 ひとりひとりやり方は違う。言葉の選択も、表現の仕方も。
 故に人それぞれの解釈で、世界は虹めいている。

 そして。
 なぜ文字にするかと言えば、他の誰かに伝えたいからだ。
 自分だけが持っている情報を、体験を、解釈を。物語を。ほかの人と共有したいからだ。

 だから人間は文字を使う。
 そこに凝縮した他人の解釈を解きほぐして、明らかにし、自分の中に入れる。
 それが、解釈のふたつめ。
 記号の羅列から意味を読み解く、人間にしかできない行為。
 人と人を繋いで、生かし合うための行動だ。
  
「だから、解釈で殴り合うなんてことをやる時点で、言葉の使い方間違ってんだよ。
 ましてや解釈で殺し合うだなんて、それこそ履き違えの極致だな。
 おい会木ィ、今度そんな戯(ざ)れたことほざいたら秒で赤点つけるから覚悟しなさい」

 ……以上、現文のリリリ先生こと刑利則(しおき・としのり)先生より、
 赤点控え選手の高校生、会木巡(あいき・じゅん)が受けたありがたい補習講の一幕だ。
 
「いやどんなことを口走ったらそんな講義受けんのさ」
「それは秘密で」
「ええー。じゃあなんであたしにその話をしたのさ」
「なんとなく。七晴さんがどう思うか聞きたくなったというか」

 放課後ゲーセン、音ゲーコーナー。
 俺は右手と左手を交差させ、ボタン6とボタン3を同時に押した。
 げっ、と声を出しつつ、隣の台の七晴(ななはれ)さんはボタン5に手をひっかけた。
 アップテンポにオーケストラを重ねてダブステで煮込んだボス曲のスコアアタック。
 終盤のさみだれ入り乱れの譜面を処理するには先の交差押しが必要なのだが、その入りをミスするということは、

「うぎゃ〜崩れた〜」

 98873 vs 96325 で俺の勝ち。
 ううん、あとgood5減らせれば新スコアだったけど。
 腕が鈍ってないのを確認できただけで御の字か。

「脇が甘いですね七晴さん」
「てかスコアタ中に話しかけんなクソガキ」
「すみません、俺ゲーム中以外はコミュ障なんですよ」
「せめて選曲中とかにしてよねもー」
005349◇死句発苦 ◆YOtBuxuP4U 垢版2017/04/23(日) 22:37:56.07ID:7flaZGxo
 
 愚痴口しつつ、マニキュアを塗った右手でぽりぽりと頭を書く七晴さんは、近くのアパレル系の会社で働くOLだ。
 見た目ファッション勢ながら実はこのゲーセンでは音ゲ勢の古株で、
 高校の頃から「ゲーセンに通うから近い会社行くわ」と宣言し、実行したつわものだという。
 そんな七晴さんに今の話を振ったのは、上記のステータスを見てではない。

「で、どう思いました? 何かの解釈で揉めるのは、間違い、なんでしょうか?」
「そうねえ。抽象的な話だから、いまいちピンと来ないけど。
 あたしとしては……一理あるけど、結局はそれもあんたの解釈じゃないの、って感じかな。
 あたしは別に解釈でガチりあってもいいと思うよ。AxBとBxAみたいなもんでしょ?」
「掛け算なら答えは同じじゃ?」
「ビンタしていい?」
「すみません」

 七晴さんは同人活動家でもあるのだ。
 ジャンルはもちろん音ゲーである。
 初めて知ったときは、世界って広いな、と感心したものだ。

「xの奥深さに関しては話の腰じゃないから無視して先に進むと。
 解釈ってのはそれこそ、10人居たら10通りあるわけでしょ?」
「そうですね」
「で、当然いろんな解釈があるわけじゃない。
 パッと見の印象だけの解釈と、読み込んで自分の中に落とし込んだ解釈。
 ハッピーな方向の解釈と、バッドな方向の解釈。
 自分本位の決めつけ解釈に、誰かの影響を受けまくりの解釈……」

 七晴さんは小気味よく腕を動かし、空中にぽすぽすと解釈を並べる。

「自分に近い解釈とか、はっとさせられる解釈とか、まあ美味しいものも多いと思うけども、
 人間ってグルメだから、舌が受け入れにくいのもあるわよね。
 受け入れられるなら頂けばいいけど、
 受け入れられないなら、そういうのは視界から消すしかないわけよ」

 ぺし、と空中の解釈をその場から払う。

「解釈の、取捨選択。
 いいものだけを食べていく。
 転じて、より多くの人に食べられた解釈が、強い解釈になっていく」
「……う」
「その、国語の先生? の解釈を混ぜるなら、きっとそういうのも人間のつくりなのよねえ。
 強い解釈が生き残って、弱い解釈が淘汰される。
 そういう仕組みにしておかないと、解釈が増えすぎて支離滅裂になるんだと思うわ――って、ジュンくん聞いてる?」

 七晴さんが俺の方を向いた時、
 俺は胃の中から込み上げてきた吐き気を抑えようと口に手を当てていた。

「……どしたの」
「すみません」
「?」
「いえ、気にせず。続けてください」

 大丈夫。一、二回くらいならそこまででもない。
 俺はすぐに姿勢を直す。
 七晴さんは頭にクエスチョンマークを浮かべていたが、
 まあジュンくんがそういうならいいけどね、と言って話を続けてくれた。
005449◇死句発苦 ◆YOtBuxuP4U 垢版2017/04/23(日) 22:39:21.01ID:7flaZGxo
 
「ま、結局、解釈ってのは殺し合いになる運命なのよ。
 みんながみんなの解釈を自然と受け入れられたら、いちばん平和なんだろうけどさ。
 どんな解釈でも楽しめ、許せ、受け入れろってのは、横暴よね。言ってしまえば、愛が足りないとさえ感じるわ」
「愛、ですか」
「思い入れの強さとも言うかな。たとえば10年同じジャンルで同じカプの本書き続けてる子とか知り合いにいるけどさ、
 そのレベルまでいくともう、自分の解釈が自分そのものと一緒なのよ。
 あのカプといえばあの子、みたいなのを超えて、あのカプイコールあの子になるくらいの感じね。
 そういう子の前でその解釈を否定することは、その子の全部を否定する事になりかねないでしょ」

 人差し指を使って、顔の前でバツをつくる七晴さん。

「人それぞれに譲れないものがあって――だからこそ誇らしいものがあって――だからこそ戦争になる」
「七晴さんは言った経験があったり?」
「ないねえ。あたしは空気と譜面だけは人より読めるから。帳簿はあんまり読めないけど」
「仕事大丈夫なんですか……」
「意外とピンチ。タカとかラックあたりもらってくれねーかしらん」
「あの人らはゲームバカなんで無理では」
「別にジュンくんでも構わないけど?」
「えっ」
「冗談でーす。もう五年後なら分かんないけどね。――で、長々言ったけど、アンサーになった?」
「……はい。十二分に」
「そ。じゃ、もう1クレやろっか」

 台待ちベンチからさっぱりと立ち上がると、七晴さんは俺に手を差し伸べた。

「タカとかラックもだけど、あたしらもそうでしょ?
 こうやってないと死んじゃうって、自分で自分をそう解釈して、ゲームやってるようなバカなんだから。
 死んでも戻ってくると思ってたよ。おかえり、ジュン」
「……ただいまです」

 このあとめちゃくちゃ音ゲーした。
 途中でタカさんとラックさん(ゲーセンの最常連、もはやゲーセンが仕事勢)に声をかけられ、格ゲやらSTGやらカード系やらビビるほどやらされた。
 再会祝いということでクレは全て向こう持ちだった。ありがたやありがたや。いつか返さなきゃ。
 閉店の間際まで続いた宴は、俺にやっぱりゲーセンは楽しいのだという現実を、嫌というほど教えてくれた。

 ちょっと前まで。
 俺は、あんなに楽しかったゲーセンのことを、楽しめなくなってしまっていた。
 上手さとか正しさとかそういうものに囚われて、楽しむ心を見失っていた。
 自分の解釈を、殺していた。
 
 でも。世界は解釈しだいで姿を変える。
 いっとき灰色に見えてしまっていた世界は、世界が灰色になったのではなくて、
 世界を見る俺の目が灰色に見えるように変わってしまっていただけだったのだ。
 蓋を開けてみればなんてことはない。楽しもうとする心を、忘れていただけのこと。

「タカさん、ラックさん、あざす」
「いいってことよ。久々にジュンの技を喰らえたからな。それに喰い返せたし」
「まさかまだあんな繋ぎがあったなんて……抜けてました。研究します」
「休憩してた分のビハインドは重いぞ〜? もう俺たちに追いつけないかもしれねーな、くくく」
「大丈夫です、赤点さえ取らなければめっちゃ張り付くんで」
005549◇死句発苦 ◆YOtBuxuP4U 垢版2017/04/23(日) 22:41:54.51ID:7flaZGxo
 ぱき。
 ラーメン屋のカウンター席で、割り箸を割る。
 極太麺とシャキリとしたもやし、絡む豚骨スープが深夜の胃袋にこってりと染みる。
 閉店後の感想会。
 いつもは門限の関係で断っていたけれど、今日は親に無理を言って参加している。参加したかった。

「今日は、マジでありがとうございました」
「おう?」
「何だよお前急に改まって」
「いやその、いろいろと。気を使って貰ったというか」
「ああ、七晴を呼んだことか? お前が呼べって言ったから呼んだだけだぞ」
「あいつどうせ暇なんだから気にするこたねーよ」
「てかラーメン喰いに来いってのな! 肌なんてどーせいつも荒れてんのに!」
「全くだよな」
「いやその……それもなんすけど。何も言わずに消えてたの、もうちょっと突っ込まれるかと思ってたんで」
「あ?」

 小さくつぶやくと、タカさんとラックさんは不思議そうな目で俺を見た。

「おいおいジュンよお。そいつはどうにも解釈違いってやつだぜ」
「そういうとこ考えすぎるのはよくないぞ若坊」
「……そうなんすか?」

 驚いた顔の俺に、あきれ顔の二人。

「遊びはあくまで遊び。やりたい時にやって、やめたいときにやめて。
 戻りたいときに戻ってくることができる場所。そういうのが俺たちの理想なの」
「あと、プライベートなことはむやみに持ち込まないってのもな。
 相談されたら話は別だが、自分からは突っ込んでいかない。
 そのへんは忘れて楽しめる場所であってほしいってのが、俺たちの本音だよ」
「戻ってきたってことは、嫌いになったわけじゃなかったってことだしな」
「そうそう。まあ強いて言うなら、そうだな……」

 タカさんは何かの力仕事かで鍛えた腕を使って、俺の頭頂部をがっしと掴むと自分の方を向かせた。
 顔が近い。
 めっちゃ見られる。

「な、なんすか」

 ここまできてBのLな展開は勘弁なんすけど。

「――いや、やっぱちょっと変わったよなと思ってな」
「か、……変わった?」
「それな。精悍になったというか。修羅場を超えたというか。いい顔つきになったよな」
「いない間にどっかで修行でもしてたのかお前?」
「そ、れは……」

 驚いた。
 何も言ってないのに。
 さすがは、人生の先輩なだけはある。
 俺はやんわりとタカさんの腕を払うと、

「や、秘密っす」

 と言って、豚骨スープを喉に流し込んだ。
005649◇死句発苦 ◆YOtBuxuP4U 垢版2017/04/23(日) 22:43:24.88ID:7flaZGxo
 
 いくら何でも言えるわけがない。
 人生三回やり直しても遭遇しないような夢の中で、文字になって解釈で殺しあっていたなんて。
 ゲームの設定にしたって、チープが過ぎるものだから。

 ラーメンは、死ぬほど美味しかった。

「食い過ぎたな……」

 若干ぽっこりと膨らんだお腹をさすりながら、帰路、マンションの階段を登る。
 午前一時。月の明かりだけの世界、冷たい空気が頬を冷やす。
 満腹の胃袋の苦しささえどこか心地よく、自然と俺は微笑みを浮かべていた。
 好きに生きている実感がある。
 あらゆる現象を前向きに考えられている確信がある。
 深夜、一人でも寂しくない。廊下の奥の暗闇に恐怖を感じない。
 回り道なんてしなくても、心を準備するためのタイムラグがなくても、今ならきっと、すこしだけ強く生きていける。

「ただいま」

 もう寝ているだろう親や兄弟を起こさないように、そっと玄関のドアを開けた。

「――よう。遅かったな」

 待っていたのは、顔の半分を失った優柔不断さんだった。
 まるで痛みを感じてないかのように笑って、フレンドリーに語り掛けてくる。

「人を殺して食うラーメンは美味いか?」
「美味しかったですよ」

 俺も笑って、優柔不断さんの胸のあたりに思い切り手を伸ばす。
 ずぶずぶ。
 ケーキにフォークを入れるくらいのゆるやかさで、手刀は優柔不断さんの体へと突き刺さる。
 生ぬるい、肉の感触。
 隙間からこぼれていくラズベリーソース色の血液。
 たとえ胡蝶の夢の残滓だと分かっていても、それはどこまでも悪趣味で。俺は小さくため息をつく。

「デザートがあなたじゃなきゃもっと美味しかった」
「おいおい情緒がねえな。久々の登場なんだからもっと歓迎して欲しいんですけど」
「すみませんが、もう眠いので。化けて出るのは明日とかに回してくれませんか?」
「おいやめろ、突っ込んだままぐちゃぐちゃ搔きまわすな。っていうか、もうちょいびびれ?」
「昨日猪突猛進さんが出てきたときはそりゃあびびりましたけど、二日続けられるとこっちも冷めるっていうか……」
「ずいぶん勝手なことを言うようになったなお前、言っとくがオレは――」

 一気に腕を引き抜いて、放っておくといつまでも喋り倒してくるであろうその口を塞ぐように、優柔不断さんの半分の顔を掴む。
 そのまま靴を脱いで、玄関から家に上がる。
 その一歩のアップダウンの動きを使い、優柔不断さんの顔を一瞬掴み上げ、そのまま思い切り床に叩きつけた。

「ぐわレ」

 断末魔のトーンがなんとも微妙だった。
 赤い水風船が弾けたみたいになって、優柔不断さんの頭部が元の形を失くし、そのまま動かなくなった。
005749◇死句発苦 ◆YOtBuxuP4U 垢版2017/04/23(日) 22:44:55.63ID:7flaZGxo
 
 振り返らず、自分の部屋に歩を進める。
 でも、そうそう上手くはいかない。
 ぐいんと伸びてきた左手が、俺の右足に爪を立てる。
 どこからか、優柔不断とは程遠い、強く決断的な声がする。
 反響する。

『後悔だぜ』
「……」
『前に前に歩くのは、別に止めないけどなぁ……辿ってきた道を振り返るのを止めるなよ?』

 わかっている。
 わかり切っている。
 優柔不断さん、あなたは、「僕」の後悔だ。
 だってあなたは、あの場所で「僕」が唯一、唯一無二、ただひとりだけ。
 棒立ちな理由でもなく、前向きな理由でもなく、……後ろ向きな理由をもってして殺した人間なのだから。

『忘れるなよ。閉じたままにするなよ? そして一切、脚色するなよ?
 凛々ちゃんの手前じゃあ、ごまかしの言葉も言わせてやったけど……お前って人間は』
「……」
『お前って人間は。オレだけは。オレのことだけは、「嫌いだから」殺したろ?』
「……はい」

 そうだ。
 その通りだ。
 「僕」は、優柔不断さんに関してだけは、一回も言っていない。
 殺してしまって申し訳ないだなんて、一回も言っていないんだ。

「嫌いでした。
 あなたの事は、好きになれませんでした。
 僕が、苦しんで苦しんで人を騙しているときに、
 僕を疑わずに信じてしまうあなたがただ憎らしかった。
 僕が、苦しんで苦しんで人を切り捨てているのに、
 自分も生き残った上で他人も救っているあなたが憎らしかった。
 僕が、苦しんで苦しんでリョーコさんを信じているときに、
 凛々ちゃんと何の疑いもない信頼を結んでるあなたが、羨ましくて、憎らしかった……」

 敵として対面していた、破顔一笑や、先手必勝さんたちや、傍若無人とは違う。
 たとえ一時的だったとしても……仲間の体をとっていたにもかかわらず、生まれてしまった感情。
 吐き捨てるように、俺は言った。

「あなたも僕も、人殺しなのは同じなのに。
 あなたも僕も、弱いのは同じにのに。
 あなたも僕も、生き残ろうとしてるのは同じなのに。
 どうしてこんなに違うんだろうって、思ってしまったんだ」
『だよなあ』

 声は心の深いところで反響する。
 嘲笑うような納得の呟き。そうだ。解釈は口に出せば納得を生み出す。
 うん、そうだ。
 俺はあなただけは、仕方なく殺した訳じゃない。
 最後の一押しを自分の手で出来なかっただけで――そこには、惨めで汚い、嫉妬色の悪意が隠れていたんだ。

 だから――後悔だ。

 一生後ろに引きずって悔い続けなきゃいけない、「僕」の罪だ。
005849◇死句発苦 ◆YOtBuxuP4U 垢版2017/04/23(日) 22:47:03.53ID:7flaZGxo
 
『まあ、わかってんなら良いんだよ、オレはね。
 これからもいつまでだって、お前がちょっといい気分になって帰ってきたときに、
 こんな風にお前の心をちくちく刺しに現れてやるってことだけ、わかってんなら。
 どんだけ雑に殺し直されようと、笑って見過ごしてやるよ。
 特別じゃねえさ、誰にだっているもんさ、世の中には……どうやっても好きになれないやつも。
 どう足掻いても許してもらえねえことをしてしまった奴も。いくらでも。ありふれているのさ……』

 オレたちは、だから人間なんだぜ。
 くは。くははは。
 くはははは。
 俺の脳を揺さぶるような不快な笑い声を、俺はつとめて聞くようにした。
 それを聞き続けることだけが、俺にできる償いだったから。

 じきに足にかけられた爪の重みも融ける。
 足りない懺悔は明日に回して、今日はもう寝る時間だ。
 
 部屋の扉を、開ける。

「あうー」
「……ただいま、××××」
 
 閉じた扉のこちら側には、四角い紙が乱雑にピン留めされている。
 現実感を喪失させる、病的に白いその紙には、「胡蝶之夢」の七色の文字が光っている。
 俺の部屋の扉は夢と現実の境界線になっている。
 そして、俺の部屋のベッドの上には、××××がいる。
 首輪につながれたまま、手足をばたばたさせて無邪気に俺を出迎える。

「うー、たらいまー、おにー」
「こういうときはただいまじゃなくておかえりって言うんだよ」
「おかえいー? おかえいー! おかえーいー!」
「……まあ、いいや」

 はしゃぐ××××を半ば無視して、俺は机の上に向かう。
 机の上に置いてある本を手に取って、ベッドへと歩いていく。
 昨日新しく買ったその本は、四字熟語辞典だ。

「今日もおやすみのまえに、言葉の勉強をするよ」
005949◇死句発苦 ◆YOtBuxuP4U 垢版2017/04/23(日) 22:49:24.64ID:7flaZGxo
 
 ――あのとき。
 最後の部屋での最後の瞬間、××××が最後に使った文字は、「自己否定」だった。
 自己の否定。
 事故の否定。
 世界を否定し、あらゆる結末を否定し、
 あらゆる死を否定して生きようとし続けた彼女が最後に否定したのは、それでも殺されようとしている自分の存在だった。
 心臓を撃ち抜かれた瞬間に使われたその文字は、撃ち抜かれた自分という事実を否定した。
 それと同時に、彼女自身の存在も否定した。
 結果、残ったのは――生き残ったのは。
 全てを忘れ、全てを失くし、自分でも自分を何と読めばいいのかわからない、××××。
 《読めない文字》だけだった。

 もう俺にも、彼女が何と呼ばれていた存在だったのか、思い出すことはできない。
 ただ、彼女が人間ではなく文字であることと。
 絶対に許してはならず、殺さなければならない憎むべき存在であることは、しっかりと覚えている。
 彼女が俺たちの人生を歪ませた張本人だということは、間違いない事実だ。
 だから俺は、××××に首輪を付けた。
 夢に閉じ込めたまま、俺の部屋から動けない様にして。××××の命を、握り返してやった。

「えへー、おにー」
「何だよ」
「えへーへー、ほんー、おにーのほんー、たのしいー」
「……絡みついてこないでくれ」

 この状況は俺にとって、決して悪いものではなかった。
 こうなって良かったと言ってもいい。
 まず、俺の命が助かったということが一つ。完全に刺し違える覚悟だったから、何よりの僥倖だった。
 次に、彼女の命を握ったことで、俺の安全が保障されたことが一つ。
 どうやら、彼女の存在は俺たちをあの実験に巻き込んだ勢力において、信仰と崇拝の対象だったらしい。

 『そうですか。そう、なりましたか。分かりました。貴方には、もう手が出せません。
  私達に関わりに来ない限り、貴方の人生の平穏を約束しましょう。貴方の勝ちです――私達の、負けですよ』

 番号の分からない電話の主にそんなことを言われたのが昨日、殺し合いから開けて初日のことだ。
 勝ちだの負けだの言われてもいまいち感慨はなかったし、勝手なことをとしか思わなかったが、
 ともかくこうして、俺は普通に生き続ける権利を得た。
 リョーコさんと約束したように。精一杯生き続けるための、切符を得たのだった。

「じゃあ、今日は4ページ目から」

 でも、それで納得ができているかといえば、そんなことはない。
 自分を失くしてしまったとはいえ――無邪気で何も知らない、まっさらな《読めない文字》になってしまったとはいえ。
 ××××が生き残ってしまっていることを、俺はやはり、許せていない。
 優柔不断さんの言う通りだ。
 世の中には、どう解釈したって許せないやつが、一人くらいはいる。

 かといって、今の××××をただ殺したところで、なんの意味もない。
 こうして××××に文字を教えているのは、一種の実験を兼ねている。
 幼児のように何もわからなくなってしまった彼女に、文字を教え続ければ。
 いつか自分が自分をなんと読むのだったのかを思い出すのではないか、そういう期待を込めている。
 もし、うまくいって、彼女が自分の読み仮名を思い出すそのときがきたら、今度こそ――――。 
006049◇死句発苦 ◆YOtBuxuP4U 垢版2017/04/23(日) 22:50:42.04ID:7flaZGxo
 
「この文字は、切磋琢磨」
「せつさーたーくまー」
「この文字は、破顔一笑」
「はーがんいっしょ」
「この文字は、鏡花水げ――うえっ」
「にー? どしたー?」
「何でもない。この文字は、青息吐息。この文字は、以心伝心。この文字は、一刀両――――う、えええっ」
「おにー!?」
「……ごめん。ちょっと、トイレ」

 それと、もうひとつ、この時間は、俺のリハビリも兼ねている。
 急に嗚咽をし始めた俺を心配そうに見つめる××××をその場に置き去りにして。俺はふらふらと部屋を出る。
 トイレに入ると、勢いよくうずくまり、胃の中身を吐き出し始めた。
 バケツをひっくり返したような勢いでどざーーーー。そのあと、ちょろちょろ、ぼとり、ぼとり。
 ラーメンと酸が混じったひどい匂いと汚い色の吐しゃ物が便器の底にたまるのを、どこかふわふわとした視界でじっと見つめ続けた。
 ああ、やっぱり。
 いくつも続けて耳に入れるのは、まだ無理だったみたいだ。
 どうしてもそれがただの文字に思えない。
 どうしても、聞き流すことが出来ない。

「……今日は、ここまで。続きはまた明日」
「あしたー」
「おやすみ」
「……おやすみー」

 三、四回ほどトイレと部屋を往復しつつ授業を終えて、部屋の電気を消す。
 おやすみの四文字を機に、すぐさま××××は隣ですやすやと寝息を立て始めた。
 まったく――人の気も知らないで。
 なんて、文字でしかない彼女に、言うことではないのかもしれないけれど。


◆◆◆◆


 こうして、「紆余曲折」を経て――俺は悪夢を終えて、日常へと帰ることに成功した。

 ちょっとだけ、強くなって。

 家に帰ると夢見が悪くなって。

 年の離れた妹が出来て。

 あと――四字熟語が、吐くほど苦手になったけれど。

 それでも俺は、この世界を、生き延びていく。



(終)
0061 ◆YOtBuxuP4U 垢版2017/04/23(日) 22:53:11.27ID:7flaZGxo
投下終了です。

紆余くんの物語はひとまずここまでとなります。
四字熟語ロワ、本当に紆余曲折ありありでしたが完結となります。

読んでいただいた方、ありがとうございました。
0062創る名無しに見る名無し垢版2017/04/23(日) 23:50:01.79ID:4zGODs70
完結おめでとうございます。
投下乙です。
雷鳥関連のネタバラシといい紆余曲折側の後味といい最後の最後までらしい話でした
00646話 運が良い  ◆2C/2roNgWQ 垢版2017/04/28(金) 13:59:12.89ID:QQE2IRa3
島に飛ばされた鯊倉はまず初めに、背中に背負ったデイバッグを地面に下ろして中身を確認した。
一生の内一回は人を殺してみたいと思っていた鯊倉にとって、この状況は僥倖といっても過言ではない。
何せ首輪を嵌められて、24時間の監視体制の中、絶海の孤島で殺し合いをさせられているのだ。
こんな異常な状況下ならば、例え一人くらい殺しても免訴される可能性が高いだろう。そう鯊倉は考えた。

「こんな凶行を警察サマや政府の方々が見逃してるわけないし……さっさと一人くらいは殺しとかないとな」

そうする為に、まずは人を殺す武器が必要である。刃物、鈍器、銃火器…とにかく凶器となるものが存在しなければ話にすらならない。
だが覇轟という謎の男曰く、支給品はランダムに支給されるとのこと。
つまりは人を殺せない武器や、そもそも武器ですらないものまで支給されるということだ。
それを聞いて鯊倉は、人を殺せない可能性に悲観するわけでもなく、人を殺せない可能性に対して怒りに身を震わせるわけでもなく――ただただ喜んだ。
揺るぐことのない確信が胸の中を渦巻いていく。

「ふっ、はっはっは……何が出るんだろうなあ〜♪」

上機嫌となった鯊倉は口笛を吹きだし、満面の笑みを浮かべながらデイバッグの中身を取り出す。
彼は疑わない。自身のデイバッグに入っている支給品が、当たりの中の当たりであることに。
傍から見ればそれは呆れるくらいに、根拠もヘッタクレもない、出鱈目な信頼。
――しかしその信頼に裏打ちされた結果があるからこそ、鯊倉は根拠も無しにこうなると決めつけることができてしまうのだ。

「……! ハハハッ! やっぱりな! 俺はツイている!」

デイバッグの中に入っていた支給品を取り出し、鯊倉はそれがなんであるか確かめる。
それは間違いなく、凶器と呼ぶに相応しい代物であった。

「"アイスピック"……これさえあれば俺はどんなやつでも殺せる……!」

鯊倉に支給されたもの、それは氷を小さく割る為の道具、アイスピック。
先端が非常に鋭いこの道具を人体に刺すことができたならば、刺された当人は痛みに悶え苦しむことになるだろう。
心臓や首、顔に刺されば常人ではひとたまりもない。

「さぁて、武器も手に入れたし、標的探しますか!」

デイバッグの中を探してみたものの、これ以外にめぼしい支給品は無かった。
しかし鯊倉はそのことに気にする様子は微塵もない。上機嫌で鼻歌混じりに街へ向かって歩き出す。
最初にして最後となる殺人を実行する為に。

【E-3/森/一日目・日中】

【鯊倉 尭尾】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]支給品一式、アイスピック
[思考・行動]
基本:一人くらいは殺す
1:標的探し

【鯊倉尭尾(ハゼクラ ギョウビ)】
運が良いと自称する高校二年生。性格はかなり楽観的な上に傲慢
ズレたポジティブ思考の持ち主で、大抵の不幸を気にしない。というか不幸だと思ってない
些細なことでも自身にとって良い結果ならば幸運だと感じてしまう、少々おめでたい人物
その為おみくじの結果が何であろうと、良い結果に解釈することができてしまう
0066 ◆ymCx/I3enU 垢版2017/05/30(火) 10:27:20.41ID:H6WMMrv/
お久しぶりです、ymです
現在新たにロワ執筆中です、生存報告です……
仕事の方が物凄く多忙でしてストレスやら何やらで長らくこっちで活動してないですが
何とかぼちぼち執筆中です
ある程度書き溜めたらその内投下しようと思っていますのでよろしくお願いしまづ
0067 ◆ymCx/I3enU 垢版2017/05/30(火) 10:28:13.08ID:H6WMMrv/
そして皆様投下乙です
まだまだ非リレーは生きていますね……良かった
0068◇js6o2luy垢版2017/06/04(日) 19:13:17.09ID:ngT4c+IM
投下します
第1話「厨病激発ボーイ」
エリアB-4のかぶき町。

そこを少年、鏡音レンは歩いていた。

(殺し合い…何て事を…許せないな…!)

支給品はすでに確認してある。

黒カードは2枚。

中々切れ味が良さそうな鋼の剣に、塩酸が入っている瓶。

(これで、僕たちに殺し合いを…)

(…いや、それよりも、今はこれからの事を考えないと…殺し合いに乗っている人がいるかもしれないし…)

レンがこれからの事を考えていた、その時だった。

一旦切ります
0069創る名無しに見る名無し垢版2017/07/10(月) 04:51:36.67ID:ugHrL6M5
☆ 日本人の婚姻数と出生数を増やしましょう。そのためには、☆
@ 公的年金と生活保護を段階的に廃止して、満18歳以上の日本人に、
ベーシックインカムの導入は必須です。月額約60000円位ならば、廃止すれば
財源的には可能です。ベーシックインカム、でぜひググってみてください。
A 人工子宮は、既に完成しています。独身でも自分の赤ちゃんが欲しい方々へ。
人工子宮、でぜひググってみてください。日本のために、お願い致します。☆☆
0071クライシス・ロワイアル ◆Dbja0ebxMY 垢版2017/10/25(水) 15:06:26.42ID:WDQh9lG8
【フォーエバー・クライシス/宇宙最後の7日間】


 ザマスとの死闘を終えたトランクスは、全王によって消滅した世界から、
 分岐しているであろう世界へと向かうために、タイムマシンに乗り込んだ。

 時間流の中で、最愛のパートナーであるマイと共に、
 新しい世界への期待。やっと訪れるであろう平穏な世界へ思いをはせ、
 一抹の不安を抱えながらも心は穏やかであった。

 タイムマシンが強い光に包まれる。
 時間移動の終わりを告げるそれを見届け、そしてトランクスは世界から消えた。


 トランクスが異変に気付いたとき、そこは、闇の中だった。


 ■


 バットマンは高台からゴッサムを見下ろしていた。
 彼の眼下には夜だというのにめまぐるしく光が行きかっている。
 世界は一時的に平和を謳歌している。この街も例外ではない。
 しかし今、バットマンの胸中にあるのは地球を守って殉死した友への想いだった。
 
 彼は――スーパーマンは、異星人だった。
 半神存在とも謳われ、それでも地球を愛し、人間の為に力を振るった。
 彼の正義には疑問を感じることも多かったが、彼の正義感と優しさだけは、
 リーグの誰よりもバットマンは認めていたのだった。

 しかし、彼は死んだ。

 半神存在――世界最強の超人――の死が、これから世界に何をもたらすのだろう。
 世界最高ともいえる頭脳にすら、その答えは出せない。

 考えを巡らせていると、ふと、空にシンボルが浮かび上がる。
 それは自分を求めるサインだ。ここ最近、やっと街の人々の心に、
 恐怖の、あるいは希望のシンボルとして、
 自身の存在が認知されてきた証左でもあった。

 肩を唸らせ、バットマンは跳躍した。

 そして、彼は世界から消えたのだった。
0072クライシス・ロワイアル ◆Dbja0ebxMY 垢版2017/10/25(水) 15:07:23.73ID:WDQh9lG8
 ■


 前へ、ひたすら前へ。
 血肉の壁を斬り崩し、戦列を真っ向から斬り伏せ、
 アンデルセンはアーカードへと向かう。

 この幽鬼どもの奥で、アーカードは笑っているのだろう。
 傲岸不遜に、吸血鬼として、鬼として、怪物として。
 アンデルセンは理解している。

 これは少佐の、あの狂った男の掌の上であると。
 壊滅するロンドン。武装神父隊。吸血鬼の親衛隊。そして自分。
 あの狂った男は、50年の歳月をこの瞬間の為に用意していたのだろう。
 ただそれだけの為に生きてきたのだろう。

 それほど周到な男が、「この後のこと」を考えていないわけはない。
 だからこそ、いや、それも含めてアンデルセンは血の道を駆け抜ける。
 あんな男の思い通りになど、させるものか、と。
 あの男が、あれほど執着していることを。
 アーカードを倒すことを。戦争に勝利することを。
 あの男の筋書きを、あの男の50年を台無しにしてやろうじゃないか。
 横っ面を殴りぬけて、せめて悔しがらせてやろうじゃないか。
 でなければ茶番劇のコマにされ、他人の筋書きに踊らされ、舞い上がり、そして哀れに死んだ。
 一人ぼっちで死んだマクスウェルが浮かばれない。
 先生として、アンデルセンとして、あの大ばか者をただの大ばか者で終わらせるわけにはいかない。

「シィィィィィッッツ!!」

 バヨネットを振り斬る。血潮を巻き上げ薙ぎ払われた兵士の果てに、
 愛しき怨敵は立っていた。アーカードは立っていた。

 ほんの一瞬、疲れからか呼気が漏れるとともに気が抜ける。
 口から茹った吐息が頬を伝わり、アンデルセンは再び気を引き締めた。

「さすがはイスカリオテ、さすがはアレクサンド・アンデルセン」

 アーカードが笑う。混じりけのない歓喜の笑みだ。
 そうだろう、お前はやっと。お前の願いはここで適うが、叶わないのだ。
 笑え。
 笑え。

 アンデルセンが腕を振りぬく。隠し持っていた切り札の感触を確かめたその時。
 彼の意識はぷつりと途切れた。
0073クライシス・ロワイアル ◆Dbja0ebxMY 垢版2017/10/25(水) 15:07:51.57ID:WDQh9lG8
 ■


 
「闇にようこそ。愚かな生物たちよ」

 トランクスの視線の先に、光がともった。
 光はあっという間に膨れ上がり、トランクスが遥かに見上げるほど大きな形となった。

 甲虫を思わせる赤い鎧。人工物を思わせる巨大な爪を携え、
 赤いヘルメットから光る両目らしきものがトランクスを見下ろしていた。

「な、なんだおまえは!? ここはどこだ!?」

 自分をこの闇の世界に連れてきたのは、間違いなくこの『何か』だ。
 確信があった。目の前の『何か』はこれまでかつて感じたことのないまがまがしい気を放っている。
 剣に手を伸ばす。ワケは全く分からないが、こいつは敵だ。

「我が名はオンスロート。怒れる神なり」

 オンスロートの声は、トランクスの体を震わせた。
 地平線の果てまでも響きそうな重低音は、オンスロートのおぞましさを助長している。
 オンスロートは、まるでトランクス以外にも話をするように続ける。

「貴様等には今から殺し合いをしてもらう。拒否することはできぬ」
「なっ!?」


 ■


「……どういうことだ?」

 闇の中、バットマンは眼前に揺らぐオンスロートに言った。
 静かな声が闇に溶けていく。物怖じしないのは決して強がりではない。
 バットマンは世界最高の探偵でもある。
 現状を瞬時に分析し、少しでもオンスロートから情報を引き出そうとしているのだった。

「聞き返すとは、らしくないのではないか? 世界最高の探偵よ」

 オンスロートもまた、超越した態度を崩さず答えた。
 おそらくバットマンの意図を把握しているようだった。
 やはり並の相手ではない。手こずりそうだと思った。

「今私は異なる次元ごとに同時に話している。私の選びし戦士たちに、だ。
 私はすべての生物を滅ぼすもの。全能の神である。
 その私が告げる。ミュータントも人類も、全ての生物に生きる価値はない」

 バットマンの脳裏に、アンチモニターと名乗った破壊神が浮かぶ。
 なるほど。オンスロートもまた、その手合い。
 超人類という意味での神ではなく、
 その力――あるいは全能性において、真の意味で神に名を連ねるものという事だろう。
0074クライシス・ロワイアル ◆Dbja0ebxMY 垢版2017/10/25(水) 15:08:16.59ID:WDQh9lG8
 ■


「神だと……」

 アンデルセンはかつてないほどの憤りを感じていた。
 怨敵との決着。高まっていたモチベーションをフイにされ、
 あげく目の前の『こいつ』は高らかに全能の神を自称している。

 まるで自身を怒り狂わせるためだけに存在しているようなやつだ。
 ここに自分が居合わせることに、主の意図を感じずにはいられない。

 アンデルセンはバヨネットを構えた。
 千切れかけていた腕は、オンスロートの力によるものか元通りである。

 しかし、そこまで。
 体はピクリとも動かず、身震いすらできなかった。

「ぐぉお、おおお……」
「愚かな。私の力を理解できぬかイスカリオテのユダよ」
 
 
 ■


「くそおおおおっ!!」

 トランクスもまた、剣に手をかけたままピクリとも動けずにいた。
 筋肉を動かす動かせないという話ではない。
 超サイヤ人になることさえできないのだ。
 まるで意志以外の全てをオンスロートに握られているようだった。

「無駄な抵抗はよすがいい。今私の前で貴様らが存在できているのが、
 私の単なる気まぐれであることすら分からないのか?」

 オンスロートの言いたいこと、それは自身がトランクスの力の規格を
 はるかに超える力を有しているということだった。
 トランクスは全身に力を込める。
 父ベジータがここにいれば『限界を打ち破ることがサイヤ人だ』と激を飛ばすだろう。
 神を名乗るモノに翻弄されたまま終わっていいのか。
 
「う、うああああああああ!!!」

 少し、ほんの少しだがトランクスの指が動いた。
 得体のしれない力に押さえつけられた肉体がぎりぎりときしむ。
 ヘルメットをしているから、と言うわけではなく、オンスロートの表情はうかがえない。
 淡々と言葉を紡ぐさまを見るに、まるで眼中にないのは確かだが……。

「参加する全生物の名前だけは、貴様らの脳に直接送りつけよう。
 舞台はある宇宙全域だ。貴様等ごときの力ではどうあがても破壊できぬ牢獄を用意した」
0075クライシス・ロワイアル ◆Dbja0ebxMY 垢版2017/10/25(水) 15:11:47.95ID:WDQh9lG8
 ■


「ふざっけんじゃねぇ!!!」


 トランクスの耳に、バットマンの耳に、アンデルセンの耳に、
 闇を引き裂くような怒号が炸裂した。
 バットマンが振り返ると、しかしそこには闇しかない。
 だが、目に見えないが、確かにそこから言葉にできないほど
 膨大なエネルギーがあふれ出してきている。

「てめぇ! オンスロートとか言いやがったな!!
 てめぇもラ=グースの一味……、神の軍団の一人か!!」

 エネルギーの正体を、バットマンは察する。
 これは怒りと憎しみ感情だ。感情がエネルギーとして具現化し、
 声の主からあふれ出しているのだ。

 オンスロートは、自身を貫かんばかりの怒号を受けて、
 初めて笑みを浮かべた……のかもしれない。

「貴様等の力など私に通じぬことがまだわからんのか」

 オンスロートが優雅に爪を振るうと、背後の闇がカーテンのように開かれ、
 オンスロートをはるかに超える巨人が現れた。

 新たなる脅威かとバットマンが身構えたが、すぐに疑問が浮かんだ。
 巨人は、深緑のフードをかぶっていた。ブーメランパンツをはいており、
 体系、骨格こそ人間体だが陶器のように色白の肌は、とても人間のそれではない。
 そしてなによりの疑問がある。巨人は既にボロボロになっていた。顔は力なく項垂れており、
 見上げ果てた先にあるであろう両腕は、何かに縛られて固定されている。
0076クライシス・ロワイアル ◆Dbja0ebxMY 垢版2017/10/25(水) 15:12:18.60ID:WDQh9lG8
「スペクター!!! は、ハルか!!?」

 またどこからか声が響いた。
 スペクター……、バットマンは考える。
 どこかで聞いた名だ。どこかで見たことがある様な気がする。

「きょ……、脅威が……」

 巨人――スペクターは振り絞るように声をだした。
 それを合図にしたように、オンスロートは初めて明確に笑みを見せた。
 狂気的な、ものを。

「我が力を見るがよい。私に逆らうとどうなるか知るがよい」

 オンスロートがスペクターに手をかざすと、スペクターは苦しみ始めた。
 体の内側から光が溢れだし、そして――――爆発した。

 スペクターを木端微塵にしたオンスロートは笑う。


「さぁ、ゲーム開始だ。我を楽しませるがいい」 


【スペクター@DCコミックス 消滅】

【主催】オンスロート
【クライシス・ロワイヤル:ゲームスタート】 
0077クライシス・ロワイアル ◆Dbja0ebxMY 垢版2017/10/25(水) 15:12:56.19ID:WDQh9lG8
【キャラクター簡易解説】
『オンスロート』
 マーベルコミックスに登場。X-MEN創始者プロフェッサーXと宿敵マグニートの
 負の感情と能力が混ざり合って生まれた怪物。
 世界最強のテレパス能力と世界最強の磁気操作能力を有し、
 全ての人類、ミュータントを滅ぼすことを決めた。
 のちにジャガーノートのサイトラックの魔石(持ち主を無敵にする石)、
 現実改変能力=全能のミュータントであるフランクリン・リチャーズ、
 際限のないパワーを持つX-MANのネイト・グレイを取り込み、
 事実上全能の神的存在=コズミック・ビーイングに等しい存在になった。
 『オンスロート』本誌においてマーベルヒーローがほぼ全軍で挑み、
 X-MEN以外のヒーローチーム。ファンタスティック・フォー、アベンジャーズの
 犠牲を払って滅ぼすことができた。 

 当ロワのオンスロートは全能の力は有しているようだが……?

『スペクター』
 DCコミックスに登場する天使。人間を依り代とする復讐の精霊。
 主(プレゼンス)から「そうあれかし」と望まれる範囲まで全能の力を行使できる存在。
 DCコミックス全体でも上位に入る力を持つ存在であり、
 DCにおけるコズミック系の話の際にはよく主役級として登場する。
 普通のヒーローとして扱うにはあまりにも強すぎるためか、
 大型クロスオーバーではしょっちゅう噛ませ犬にされる可哀想な存在でもあるが、
 本領を発揮した場合は少なくとも普通のヒーロー、ヴィラン程度では全く歯が立たないほど強い。
 初代はジム・コリガンという刑事。二代目はハル・ジョーダンだが、
 当ロワのスペクターははたして……?
0078クライシス・ロワイアル:名簿 ◆Dbja0ebxMY 垢版2017/10/25(水) 15:13:54.27ID:WDQh9lG8
【主催】オンスロート

【虚無戦記】
虎/夢幻弥勒/真田幸村/霧隠才蔵/ラ=グース細胞
5/5
【DORAGON BALL】
孫悟空/ベジータ/ブルマ/クリリン/セル/フリーザ
6/6
【DORAGON BALL Z】
ブロリー/クウラ/ターレス/孫悟飯(未来)/ヤムチャ
5/5
【DORAGON BALL 超】
ゴクウブラック/ザマス/ヒット/トランクス(未来)
4/4
【BLEACH】
黒崎一護/藍染惣右介/井上織姫/日番谷冬獅郎/浦原喜助/更木剣八
/バラガン・ルイゼンバーン/グレミィ・トゥ・ミュー/アスキン・ナックルヴァール/ユーハバッハ
10/10
【ハートキャッチプリキュア!】
花咲つぼみ/来海えりか/明堂院いつき/月影ゆり/ダークプリキュア/サラマンダー男爵
6/6
【ジョジョの奇妙な冒険】
空条承太郎/ジョルノ・ジョバーナ
2/2
【ジョジョの奇妙な冒険・アイズ・オブ・ヘブン】
天国に到達したDIO
1/1
【HELLSING】
アーカード/アレクサンド・アンデルセン/セラス・ヴィクトリア
/インテグラ・ファルブルケ・ウィンゲーツ・ヘルシング/少佐(モンティナ・マックス)
5/5
【SUPERMAN】
スーパーマン/スーパーマン/ロイス・レーン/レックス・ルーサー
4/4
【BATMAN】
バットマン/ジョーカー/ジム・ゴードン/カーマイン・ローマン・ファルコーネ/レッドフード(ジェイソン)
5/5
【JUSTICE LEAGUE】
ワンダーウーマン/グリーンアロー/ダークサイド/デスストローク
4/4
【X-MEN】
ウルヴァリン/フェニックス/ケーブル/アポカリプス
4/4
【AVENGERS】
キャプテン・アメリカ/アイアンマン/ソー/ハルク
4/4
【DARK AVENGERS】
ノーマン・オズボーン/セントリー
2/2
【キルズ・マーベル・ユニバース/What'IF】
パニッシャー
1/1
【FANTASTIC FOUR】
リード・リチャーズ/Dr.ドゥーム/モレキュールマン/シルバーサーファー
4/4
【WATCHMEN】
Drマンハッタン/オジマンディアス/ロールシャッハ
3/3

【総勢】79/79
0079 ◆Dbja0ebxMY 垢版2017/10/25(水) 15:14:31.04ID:WDQh9lG8
以上です。よろしくお願いします。
0080 ◆Dbja0ebxMY 垢版2017/10/25(水) 16:29:53.92ID:WDQh9lG8
投下します。あと名簿は75名でした。すみません
0081ティータイム&M ◆Dbja0ebxMY 垢版2017/10/25(水) 16:30:35.65ID:WDQh9lG8
「はぁ〜、マジかよ」

 持参した水筒からカフェオレを注ぎながら、ナックルヴァールは尽きることが無い
 どうしようもなさに頭を抱えていた。
 尸魂界侵攻。まぁOK。霊王宮に攻め込んだ。まぁOK。
 ワイルドリーゼントに追いかけられた。まぁまぁOK。

 だがそこから記憶が、というか意識が途切れて、気付いたら
 オンスロートなるバケモンに殺し合いに参加させられているこの現状。
 全くOKではない。
 なんでこんな面倒なことに自分がまきこまれなければならないのか……。
 とはいえ、ナックルヴァールはその辺のやつに殺される気はさらさらない。
 問題は別にあった。

「なーんで陛下まで参加してるかな〜コレ」

 オンスロートの言ったように、念じると頭に名前がずらずらと並ぶ。
 参加者一覧という事だろうが、その中にユーハバッハの名前があったのだ。
 おまけにグレミィ・トゥミューの名前まである。
 よりによって聖十字騎士団きってのバケモノと、
 自身が絶対敵わないと確信を持って言える人物が同じ舞台に立っているのだ。

「陛下と殺しあう? ムリムリムリ。勝てるわけねーだろオイ」

 もうこの時点でヤル気ゼロである。勝ち残れる気もゼロである。
 もっと恐ろしい事実は、陛下やグレミィですら『参加者側』として
 オンスロートに連れてこられていることだ。

 つまりあのオンスロートはグレミィや陛下を同時に相手取っても
 余裕であしらえるくらい強い可能性があるという事だ。
 ますますもって気落ちする。
 カフェオレが気持ちいつもよりまずい気がする程度に。

 そのほかにも藍染惣右介だの、黒崎一護だの、浦原喜助だの、更木剣八だの、
 特記戦力がほぼ全員そろってるじゃねーかと思わず突っ込みを入れた。

「あ〜ダメだわコレ。やる気でねーわ」

 カフェオレを飲み終えてごろんと寝ころんだ時、ナックルヴァールを呼ぶ声が響いた。
0082ティータイム&M ◆Dbja0ebxMY 垢版2017/10/25(水) 16:31:22.09ID:WDQh9lG8
「おい! 貴様! 何者だ!?」

 しんどそうに眼を開いて相手を見る。
 その人物は空に浮かんで両手を組み、力強い目つきでこちらを見下ろしていた。
 全身紺色のぴっちりタイツ。逆立った黒髪。

「はぁ〜っ。なんだオッサン? 俺に何か用?」 

 変態の類な格好のそいつは、もう普通ではないことは明らかだ。
 見るからに強そうだし、ていうか死神や滅却師みたいに足場作って空を歩くとかじゃなく、
 どうみても空飛んでるし。

「貴様はこのくだらんゲームに参加しているのか」
「…………」
 
 見てわかんねーのかよオッサン。ナックルヴァールは心の中でツッコんだ。
 意気揚々と、殺し合いしよーぜヒャッハー! な奴が
 カフェオレで一息ついて寝っころがろうとするかフツー。

「参加っていうかやる気ねーよ。つかオッサン見てわかんねー? 俺そんなにイケイケな奴に見えてる?」
「だったらこんな目立つところで堂々と寝ころぶな! 
 このゲームには恐ろしいバケモノが参加しているんだぞ!!」
 
 知ってます―。思わずまた心の中でツッコんだ。

「オッサンさぁ」
「ベジータだ! オレはベジータ様だ! オッサンではない!」
「へいへい。名乗られたからには名乗ってやるか。
 俺はアスキン・ナックルヴァール。このゲームとやらは、端っからやる気がわかないってトコロさ」

 ベジータと名乗る男はナックルの正面に降り立つと、フンと鼻を鳴らした。

「アンタこそ殺し合いにノってるわけじゃないよな?」
「当たり前だ! このベジータ様があんなクソヤローの言うとおりに動いてたまるか!!」

 ベジータって他にいるのかよ……。という突込みは置いといて、
 とりあえずナックルは立ち上がった。髪を整えて、ふぅと息を漏らす。
0083ティータイム&M ◆Dbja0ebxMY 垢版2017/10/25(水) 16:32:36.14ID:WDQh9lG8
「それがいいぜ。どうせ陛下には誰も敵わねェんだ」
「陛下? 誰だそれは」
「知らねぇってのは幸せだぜ。ベジータさん」

 ナックルは半ば投げやりに陛下のことを話した。
 『全知全能』のこと、滅却師のこと、死神のこと、今この場にいる知る人物のこと。
 
「とまぁ、こんな感じだ。わかっただろ? 陛下には誰も勝てねぇって」
「そうか?」
「ハァ!?」
 
 あっけらかんと即答したベジータに、ナックルは驚き、飽きれた。
 自分の説明が足りなかったとさえ思った。

「いやいやいや、陛下はなぁ」
「未来を改変するだと? じゃあ今ぶっ殺せばいいだけだろう」
「いや、だから今って時は――」
「そんな奴より、魔人ブウの方が問題だ」

 哲学的な話になりかかる前に、今度はベジータが語り始めた。
 フリーザ、セル、魔人ブウ。どれもこれもナックルの予想を斜め上にぶっ飛んだ話だった。

「星の地上げ屋に、究極生物に、神さまぶっ殺しまくりの魔人……。
 ゴメン。なんつーか確かに陛下にも勝てるかもしれねーなそいつら……」
「フン、だがフリーザとセルのヤロウはオレからすれば大したことはない。問題は魔人ブウだ」
「…………」 

 全ての話をとても信じる気にはなれなかったが、ベジータの口ぶり、
 話からすれば魔人ブウ以外の二名は簡単に倒せるとのことだった。
 ナックルは考える。

「……なぁ、ベジータさん。俺アンタについてってもいいか?」
「なんだと?」
「俺は搦め手ってやつには強いんだけど、単純なパワーの押し付け合いには弱いのよ。
 ましてやその魔人ブウってやつは、星を簡単にぶっ壊す様な奴なんだろ?
 そんなやつら相手にしてたら俺なんかあっという間に殺されちまうぜ」
「……いいだろう。ただしオレについてこれるならな……!」
 
 ベジータが空に浮いた瞬間。しかしナックルは座り込んだ。

「まぁ待ってくれって。もうちょっと話しよーぜ」
「チッ」
 
 舌打ちを鳴らしながらも、ベジータは再びナックルの隣に降りた。
0084ティータイム&M ◆Dbja0ebxMY 垢版2017/10/25(水) 16:33:22.09ID:WDQh9lG8
【尸魂界、改変された霊王宮を再現した惑星/一日目朝】


【アスキン・ナックルヴァール@BLEACH】
[状態]:健康
[装備]:カフェオレ入り水筒
[道具]:基本支給品(七日分の食料入りホイポイカプセル)
[思考]
基本:やる気なし
1:ベジータについていく。
2:陛下を始め、知っている人物にはなるだけ会いたくない。
3:ベジータの話した奴らとも会いたくない。
[備考]
※参戦時期はグリムジョーに追いかけられていた途中。
※フリーザ、セル、魔人ブウ、孫悟空について知りました。

【ベジータ@DRAGON BALL】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品(七日分の食料入りホイポイカプセル)
[思考]
基本:オンスロートをぶっ殺す
1:フリーザとセルをまず殺す。
2:カカロットを探す
3:魔人ブウと遭遇したなら戦う。
4:陛下とやらも殺す。
[備考]
※参戦時期は原作42巻。生き返った直後です。
 生き返った直後ですが、問題なく全力で戦えます。
※BLEACHの参戦キャラについて知りました。
0087天使vs悪魔 ◆Dbja0ebxMY 垢版2017/10/26(木) 09:43:01.93ID:rYaFRYFX
 散弾のように放たれたエネルギー弾が地面で炸裂する。
 連鎖的に吹き荒れた爆風を突き抜ける様に、高速で彼女は飛翔する。

 月影ゆり――キュアムーンライト。
 伝説の戦士プリキュアたる彼女は激闘を繰り広げていた。

「ハァッ!」

 左、右と拳を突出し間髪入れずに側筋に回し蹴りを放つ。
 拳速の余波が巻き上げられた土ぼこりを引き裂いて敵に直撃した。

 しかし、敵は微動だにしない。
 ムーンライトはもう片方の足で敵の胸を蹴り飛ばし、距離をとった。

「なんてやつなの……」

 ムーンライトの顔に、険しい表情が浮かぶ。
 金色の逆立てた髪。隆起した筋肉。ファンタジックな装いのズボン。碧眼の目。
 自身の上背より2回りは大きい背。そして目に見えるほどはっきり具現化した金色のオーラ。

 口角を吊り上げ、余裕の笑みを浮かべる悪魔。
 そいつの名はブロリー。

 ブロリーはムーンライトが森を歩いている所を、いきなり攻撃してきたのだった。
 両の手を軽く広げ、緑色の球状のオーラを纏ってゆりの眼前に現れると、
 雄たけびと共に殴り掛かってきたのだった。
 辛うじてその一撃を躱したゆりは、即座にムーンライトに変身した。
 ゆりは、こいつは話し合える相手ではないと、狂喜に歪んだ眼を見て瞬時に理解していた。 

 ムーンライトは再び距離を詰め、速射砲のように連撃を加えた。
 パンチキックに膝や肘を交えた鋭い攻撃は、しかしブロリーの肉体を傷つけるには至らない。
 ならばとボディに連打を打ち込み、ブロリーの意識が下がった所で顎を撃ち抜く様に拳を振り上げる。
 確かな手ごたえと共にわずかにブロリーが揺らいだ。
 手ごたえはあった。確かな一撃だったが、しかしゆっくり顔を下ろすブロリーの表情は笑っていた。

「!」

 後ろに振り上げたブロリーの掌に、緑色の光球が創られる。
 それが一直線に飛来する前に、ムーンライトは思わず横っ飛びに避けた。
 圧縮されたエネルギーが木々をなぎ倒しながら突き進み、はるか遠くに見えた山の付近で爆発した。
 ドーム状に膨れ上がる破壊エネルギーは、その衝撃だけでムーンライトの立っている地面まで砕き、
 山脈を消し飛ばしてきのこ雲を発生させた。
0088天使vs悪魔 ◆Dbja0ebxMY 垢版2017/10/26(木) 09:43:53.97ID:rYaFRYFX
「くっ……!」

 爆風が体を揺らす。空気が痺れる感触が伝わる。ムーンライトはぞっとした。
 アレが直撃すればただでは済まないのは明白だ。
 しかも、ブロリーの様子を見るに、アレは全く全力ではないのだろう。
 明らかに手加減している。手加減してアレなのだ。

「くははははははははっ!!!」

 ムーンライトの感じた脅威を、嘲るようにブロリーが笑う。
 いったん引くべきだ。アレは一人では倒せない……!

 脳裏に浮かぶ名簿には、つぼみやえりか、いつきと……ダークプリキュアにサラマンダー男爵の名前があった。
 後者二人にも考えることが様々あるが、今はそんな暇は無い。
 コイツを倒すには、つぼみたちと合流してハートキャッチオーケストラで放つしかないだろう。

 ムーンライトは地面を強く蹴り砕き、土ぼこりを舞い上げた。
 そしてわざと土煙の中に身を投じた。
 ブロリーが笑うのをやめる。ムーンライトはブロリーの姿がすっかり見えなくなると、
 全力で離脱しはじめた。
 木々の間をすり抜け、なるべく見つからないように、音を立てずに。
 幸いスピードには自信がある。ここは引く――……。

「えっ……」

 それはまるでスローモーションのように感じた。目の前の煙が不自然に盛り上がり、
 突き破るようにしてブロリーが現れたのだ。
 先回りされた……!? ムーンライトは愕然とする。まさか、こいつはスピードでさえ……。

「何処へいくんだぁ……?」

 ブロリーの声にしまった! と思うのと、ムーンライトの腹部にエネルギー弾が直撃したのは同時だった。
 振りぬかれたブロリーの腕に薙ぎ払われ、光球が腹部を押し飛ばす。
 ついで起こる爆発に大きく後方に吹き飛ばされた。
 力ずくで打ち出したビリヤード玉のように地面にはじけ飛ぶムーンライトに、
 ブロリーは追撃すべく容赦なく飛びかかった。

 しかしムーンライトは冷静に、ブロリーの顔の正面にカウンターの蹴りを打ち込む。
 それはダメージを期待するものではなく、ブロリーの動きを一瞬止めるためと、
 ブロリーからさらに距離をとる為の回避行動だった。
0089天使vs悪魔 ◆Dbja0ebxMY 垢版2017/10/26(木) 09:44:25.07ID:rYaFRYFX
 ブロリーは宙空に立ち止まり、蹴られた額を手でなぞる。
 その隙にムーンライトはよろよろと立ちあがった。
 感じるのは、やはり手を抜かれているということ。

「はぁっ……、はあっ、……きなさい! バケモノめ……!」
「俺がバケモノ……?」

 構えと共に見据える目には、まだ決意がともっている。
 ブロリーはさも楽しそうにくいと首を傾けた。

「違う……、俺は悪魔だ」

 言い終わると同時に、ブロリーのオーラが炎のように激しく盛り上がった。
 ノーモーションで無数のエネルギー弾が放たれる。
 狙いをつけていないらしいそれは周囲の環境を手当たり次第に破壊しつくし、
 そのうちの一発がまだ足のおぼつかないムーンライトに襲いかかる。
 両足はまだダメージが抜けていない。体の芯が震えている。この身体では躱せない。

「はぁあああああっ!!!!」

 一か八か、ムーンライトは両手を思い切り横に薙ぎ払い、なんとかエネルギー弾を弾き飛ばす。
 そして、再び不覚をとった。
 振りぬいた腕を戻すより先に、ブロリーの拳が目の前まで迫っていたのだ。
 出せる力を振り絞り、思わず後ろに跳ぶが、躱せない。
 ブロリーの拳が伸びてくる。これは躱せない。ムーンライトがダメージを覚悟した瞬間。
 ブロリーの横っ面を青いブーツが蹴り飛ばし、ブロリーは横に吹き飛び激しく湖に突っ込んだ。

「……!?」

 跳ね上がる水しぶきと共に、その誰かは舞い降りた。
 ムーンライトがなんとか膝をついて見上げると、そこには男が立っていた。
 山吹色の道着、肘の先まである紺色のインナー。カールした前髪。頬の傷。
 そして、片腕のない青年。

「大丈夫か?」

 沈んだはずのブロリーを一瞥した後、その青年はムーンライトに手を差し伸べた。

「ええ……、助かったわ。ありがとう」

 手を取って立ち上がると、その青年はもう湖の方を睨みつけている。
 厳しい戦士の目だ。鍛えられた戦士だ。所作に一部の隙もない。

「行こう。アイツはオレたちじゃ倒せない」

 青年はムーンライトに肩を貸すと、ムーンライトにも負けないほどの、
 ものすごいスピードで空を翔けた。
0090天使vs悪魔 ◆Dbja0ebxMY 垢版2017/10/26(木) 09:45:09.76ID:rYaFRYFX
 ■


 
 吹き飛ばされた山脈の面影が見えなくなるほど遠く、小さな村に二人は降り立った。
 村の体をなしているが、人の気配は全くない。 
 にもかかわらず、青年は家に入る時、丁寧にノックをして「おじゃまします」と頭を下げた。
 ベッドにムーンライトを下ろして、その対面に立ち、青年は口を開いた。

「危ない所だったね、オレは孫悟飯。キミは……?」
「私は……、キュアムーンライトよ……」

 よろしく、と手を差し伸べて来たので、ムーンライトはしぶしぶ握りかえした。
 どうやら悪い奴ではないらしい。少し気分が落ち着くと、まず浮かんだ疑念を問う。

「あなた、アイツが何者か知ってるの?」

 悟飯と名乗る戦士は、頭を振った。
 
「アイツが誰かは知らない。だけど、アイツが何かはわかる」
「どういうこと?」
「アイツは超サイヤ人だ。しかも、恐ろしいほどに強い」
「超サイヤ人……?」 

 悟飯は話し始めた。サイヤ人、宇宙最強のフリーザ、伝説の戦士と呼ばれる超サイヤ人。
 おとぎ話か神話のごときスケールの冒険譚を、ムーンライトは噛み締める様に聞きいった。

「つまりアイツは、最悪の敵ってことね……」
「そういうことかな。でも、変な話なんだ。 
 そもそもサイヤ人は、オレの時代にはもうオレとトランクスしかいないはずなのに……」

 父と、ベジータ。幼少期の頃に襲ってきたラディッツ、ナッパ、ターレスを加えても、
 悟飯の知る限りサイヤ人はその残り7人のはずだ。
 トランクスはまだ超サイヤ人には覚醒できていない。
 ラディッツとナッパは死んでいるし、目を閉じたときに見えるリストにそもそも名前がない。
 ターレスは父、孫悟空に瓜二つの外見で、あんな長身ではないし超サイヤ人ではなかった。
0091天使vs悪魔 ◆Dbja0ebxMY 垢版2017/10/26(木) 09:46:03.44ID:rYaFRYFX
 そしてなにより、あの謎の超サイヤ人の気は、フリーザはおろか
 記憶している父、孫悟空の気すらはるかに超える大きさだった。
 というより、悟飯はかつてアレ以上に強い存在には出会ったことはない。 

「……アイツは何者なんだ」

 あれほどの気を誇るサイヤ人がいたというのか。
 考えにふける悟飯に、変身を解いたムーンライトが言った。

「ムーンライト? アレ? なんだか雰囲気が……」
「ツッコむところちょっとずれてないかしら……? まぁいいわ。
 今までの話を整理してみた限り、たぶん私と悟飯さんは、
 違う世界の人間……。ってことになるんでしょうね」
「違う世界だって!?」

 ゆりは、今度はこちらの番と話し始めた。
 砂漠の使徒、デューン、プリキュア、ダークプリキュア、つぼみたち頼りになる後輩たち。
 自身の戦いに引けを取らぬ激闘の話を、悟飯は厳しい顔で聞いていた。

「なるほど……、確かにオレの世界では地球に砂漠の使徒なんてやつらは現れなかった。
 地球を滅ぼす様な強い奴に、オレや父さんが気付かないはずもないし……」
「オンスロートは『異なる次元ごとに同時に話している』と言ってたわ。
 違う次元、というのが別の世界のことをそのまま示しているなら」
「それぞれの世界から、強い戦士を集めているってことか!」
「おそらくそうでしょうね。そして脳裏に浮かぶ名簿の並びが、それぞれの世界ごとになってると思うわ」
「……なるほど、ムーンライト。キミはすごいな」
 
 どういたしまして、とゆりは答えた。
 
「つじつまが合うんだ。オレの父さんやベジータさんは、オレの世界では……」

 悟飯がくっと言葉を飲み込んだ。

「既に……殺されているし、フリーザは父さんが倒した。
 なのに名簿に載ってる上に、オレとは違う場所にまとめられてる」 
「時間や世界を自由に行き来できるってことね。
 オンスロートの言う自称全能の神ってのも、あながちウソじゃなさそうだわ」

 言い切って、ゆりは頭を押さえた。ダメージがまだ抜けきっていないのだ。
 今はこれ以上考えることは駄目だ。休ませなければと察した悟飯は言った。

「ムーンライトはここで少し休んでてくれ。外でオレが見張ってるから」
「お言葉に甘えさせてもらうわ……。あと、私の本名はゆり。月影ゆりよ……」
 
 ゆりが部屋に入ってベッドに倒れ込む。
 悟飯はドアの前に座り込んで、空を眺めた。

 リストには父と、ベジータ。ヤムチャにクリリン。ブルマ。そしてトランクスの名が有った。
 さらにはフリーザ、ターレスの名前も……。


(みんな……、無事であってくれよ)


 悟飯の想いは青空に吸い込まれていく。
 フォーエバー・クライシスは、まだ始まったばかりなのだ。
0092天使vs悪魔 ◆Dbja0ebxMY 垢版2017/10/26(木) 09:46:31.80ID:rYaFRYFX
【ナタデ村とその周辺の山林を再現した惑星/一日目朝】


【キュアムーンライト/月影ゆり@ハートキャッチプリキュア!】
[状態]:ダメージ(中)、疲労(中)
[装備]:ココロポット、プリキュアの種
[道具]:基本支給品(七日分の食料入りホイポイカプセル)
[思考]
基本:つぼみたちを探す
1:体力の回復に努める
2:目覚めたら悟飯と考察を続ける
3:あの謎のサイヤ人には気を付ける
[備考]
※参戦時期は最終回後
※主にDRAGON BALLの世界、参戦キャラについて知りました。

【孫悟飯(未来)@DRAGON BALL Z】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品(七日分の食料入りホイポイカプセル)
[思考]
基本:この戦いを終わらせる
1:月影ゆりが目を覚ますまで見張る。
2:あの謎のサイヤ人や、悟空やトランクスたちと同じカテゴリの知らない人物には気を付ける。
3:悟空、ベジータ、トランクスを探す
[備考]
※原作漫画ではなく、TVSP『絶望への反抗』の世界から、
 人造人間たちに最後の戦いを挑む直前からの参戦。
※ハートキャッチプリキュア!の世界、参戦人物について知りました。

 
0094天使vs悪魔 ◆Dbja0ebxMY 垢版2017/10/26(木) 14:19:35.42ID:rYaFRYFX
 湖の中心に波が立つ。
 緑のオーラを纏わせ、ブロリーはゆっくりと浮かび上がった。
 その顔は先程の狂喜とは打って変わって、どこか憂いを思わせる。
 悲しみの表情を浮かべている。

「カカロットォ……」

 敵の名を呼ぶ。己を鼓舞するように。破壊するべき敵の名だ。
 あふれ出す力は筋肉を押し上げ、ブロリーの気を増大させる。

「カカロットォ!!」

 叫びに呼応してオーラがはじけ飛ぶ。
 ブロリーの全身が発光し始め、納まりきれないエネルギーが四方八方にはじけ飛ぶ。

「カカロットォォオオオオーーーー!!!!!!」

 恐るべき破壊を繰り広げながら、ブロリーは恐るべき速さで空へ飛び去った。
 オンスロートなどどうでもいい。その他の人物などどうでもいい。
 オンスロートの計らいで、ブロリーの脳裏に浮かぶ「孫悟空」の名は、
 カカロットに変換されていた。

 カカロットがここにいる。
 今度こそ殺してやる。この手で……。
0095天使vs悪魔 ◆Dbja0ebxMY 垢版2017/10/26(木) 14:21:37.30ID:rYaFRYFX
 悪魔は憎しみをまき散らして空を突き抜け、そして宇宙に出た。
 目的は一つ。やることは単純。星々を手当たり次第に飛び回り、
 カカロットを探しだし、殺す。ベジータもだ。あの二人は殺す。何があっても。
 
 邪悪な決意に目を輝かせ、ブロリーは光速で宙を翔けた。


 ――しかし、悪魔は知らない。


 この宇宙のどこかにいる孫悟空は厳密には自分の知っているカカロットではなく、
 孫悟空の方はブロリーの存在すら全く知らないという事に。



【ブロリー@DRAGON BALL Z】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品(七日分の食料入りホイポイカプセル)
[思考]
基本:カカロットォ!
1:カカロットを殺す
2:ベジータもついでに殺す
3:邪魔する奴は殺す
[備考]
※アニメ版DRAGON BALL Zの世界から参戦。
 映画2作目。『危険な二人、超戦士は眠れない!』の目覚めてすぐの状態。
※当ロワに置いては、原作漫画版とアニメ版のDRAGON BALL Zはあくまでパラレル世界
0097神の手を介さず存在する砂時計 ◆Dbja0ebxMY 垢版2017/10/26(木) 14:23:18.59ID:rYaFRYFX
 自身の存在意義を求めていた。
 無から有となった自分は何者なのだろう。
 
 サラマンダー男爵はカフェの椅子に腰かけていた。
 自らの終末をすぐそこに感じながら、目を閉じ、ただ静かに。
 クリスタルは集め終わったが、依然として体の崩壊は止まらない。
 しかし、それに悲しみを感じることはない。

 サラマンダー男爵は「こころ」というモノを知りたかった。
 いや、求めていた。と言い換えてもいい。
 それ故に砂漠の使徒から追放された。彼らに憎しみは抱くが、
 彼らを滅ぼすためにはまず元の世界に還らなければならないだろう。

 自身に残された時間も、力も、空に舞う燃えカスのようなものだ。
 風が一凪すれば消えてしまうだろう。

 オンスロートという怪物は、自らを全能の神と名乗った。
 彼の発するオーラを見るに、実際それを名乗るだけの力を有してもいるだろうが、
 彼が行ったことは「殺し合いの開催」という実にくだらないモノだった。

 神でさえ、やはりこんなものなのかという落胆は、サラマンダー男爵の気を落とした。
 彼は自分で勝手に注いだ紅茶に口をつけて、ようやく目を開いた。

「誰かな……、そこにいるのは……?」

 そして飛び込んできた眼前の人物に、思わずずっこけそうにというか、紅茶を吹き出しそうになった。
 そこにいたのは、全身が蒼く発光する、全裸の男だった。
 全裸である。本当に何も着ていない。パンツすらはいていない。
 世界中を旅して奇妙奇天烈なモノはそれなりに見てきたが、
 目の前の男はそれらと比較しても一線を画すエキセントリックさだ。

 にもかかわらず、男の表情や雰囲気はどこか哲学的で、複雑で、神秘的なソレを発している。
 神がかっている。と言えば分りやすいだろうか。
0098神の手を介さず存在する砂時計 ◆Dbja0ebxMY 垢版2017/10/26(木) 14:26:52.68ID:rYaFRYFX
 男が口を開いた。

「キミは……、何者だ? 私の知らない原子だ……」
 
 男は困惑しているようだった。
 戸惑いのまま、何かをぶつぶつと語りだす。 

「この宇宙は、どうやら私の知る現実宇宙とは大きく異なっているようだ。
 タキオンが充満しているわけではないが、未来をまるで見ることができない。
 まるでこの宇宙そのものが一つの生物であるかのようだ、流動し、常に可変。
 全く持って未知の出来事だ……」
「考え込むのも結構だが、名前くらい名乗りたまえよ」
 
 男は男爵の方に振り返った。

「私はDr.マンハッタン」
「私はサラマンダー男爵だ。さて、ドクター。今の君の言葉はどういう意味かな?」

 マンハッタンはかすかに目を見開いた。
 驚きの感情が出たのだろう。顎に手を当てて、HUMMと考え込んだ。

「やはり私を知らないのか。一見して、ここはパリの街のようだが、
 私の知っているパリとは全く違うという事か。誰かが創造したのか、私以外の誰かが……」
「可能性があるとすれば、あのオンスロートという者ではないかね? 彼は神を自称していた」
「神などいない」

 マンハッタンは言い切った。
 男爵はふっと笑うと、同感だよ。と答えた。

「さて、ところでドクター。君は私を殺すのかね? オンスロートの言うとおり、
 殺しあわねば私たちはどのみちオンスロートの手によって殺されるだろう」
「いや、君を殺す気はない。元々君の原子は全く安定していない。生物的に死にかけているのだろう?」
「……わかるのかね」
「私は地上に存在するあらゆる原子を操れる。原子のサイズで世界を見れるのだ。男爵」
「それは……、素晴らしいな」

 この世の物体は、全て分子の。もっと言えば原子の集まりでできている。
 それをすべて、ありのままに支配できるという事は、全てを創造し、すべてを破壊できるという事だ。
 それをすべて、原子の視点で見れるという事は、世界のすべてを知ることが出来る筈だ。
 男爵は思わず言った。
0099神の手を介さず存在する砂時計 ◆Dbja0ebxMY 垢版2017/10/26(木) 14:28:21.81ID:rYaFRYFX
「君が神ではないのか?」
「違う。私は神ではない。宇宙を構成するピースが私であり、私を構成するピースが宇宙なだけだ」
「そうかな……? その割には、ドクターは――失礼だが、人間には見えない。 
 ひどく無感動で、不動で、永遠のような『何か』に見えるが?」
「否定はしない。事実私は32分前まではそうだった。だが私は人間の存在価値に気付かされた」
「存在価値……」

 男爵は繰り返して呟いた。
 マンハッタンは気を利かせてか、飲み干した男爵の紅茶を新しく創造して、
 継ぎ足しながら、言った。

「人間は、その存在のすべてが奇跡だ。熱力学的奇跡だ。
 酸素が自然に金に変わる様な、人工的に生み出された超自然的な奇跡だ。
 いや、人だけではない。この地上に存在するすべてのモノが、今ここにあるだけで既に奇跡なんだ」
「……ならば」

 男爵は言葉を止めることができなかった。
 どうしても聞いてみたかった。この神のごとき存在の口から。
 
「私も、価値がある奇跡という事か……?」

 ――自分の存在意義を。

 マンハッタンは少し首をかしげて、掌を上に向けた。
 そこに、小さな地球のような水晶玉を創造して、男爵に見せた。

「君は人間ではないかもしれないが、この宇宙に存在して、私と出会った」

 マンハッタンの声はあくまで平坦だ。しかし、確信めいたものを孕んでいる。
 水晶が過去を映し出す。そこには男爵と、一人の小さな男の子が映っていた。

「十分だ」

 マンハッタンは言い切った。
 男爵は帽子のつばで表情を隠し、そうか、と小さく呟いた。
0100神の手を介さず存在する砂時計 ◆Dbja0ebxMY 垢版2017/10/26(木) 14:29:31.93ID:rYaFRYFX
 ■




「さて、どうするかね、ドクター?」

 紅茶を飲み終えた男爵は、軽やかに塔に登り、街を見下ろした。
 その口調は憂いを帯びず、むしろ喜びや楽しさを感じているようだった。
 マンハッタンはその時間に先回りしており、同じく街を見下ろした。

「しばらくはこの世界を観察する。私の認識が全く通用しない世界だ。
 私の知らない、未知の存在が溢れている可能性が高い」
「殺し合いはしない、と?」
「こちらに敵意を向けてくるならば殺さざるを得ない」
「なるほど……」

 男爵は目を閉じた。

「ドクターのいう事は、私にも理解できる。
 考えてみればその通りだ。確かにこの世のすべては、ただそれだけで奇跡だろう」

 マンハッタンは男爵を見た。

「だが、知識だけではやはり……、半信半疑でね。
 奇跡だから、と言うのは納得できるが、だからといってそれが
 存在する価値があるかどうかは、また別問題であるような気がするのだよ」
「君の言うとおりだ。人間の存在そのものが奇跡ならば、すべてのモノに価値があるのならば、
 その価値の中でさらに価値の有無が、高低が、生まれるべくして生まれるだろう」
「ままならぬものだね……」

 男爵は呟いた、その顔は、どこか嬉しそうだった。

「だから喜びを感じるのだ」

 マンハッタンもまた、小さく笑みを浮かべていた。
0101神の手を介さず存在する砂時計 ◆Dbja0ebxMY 垢版2017/10/26(木) 14:30:29.00ID:rYaFRYFX
【地球を模した惑星、パリ/一日目朝】


【サラマンダー男爵@ハートキャッチプリキュア!】
[状態]:崩壊寸前
[装備]:ステッキ
[道具]:基本支給品(七日分の食料入りホイポイカプセル)
[思考]
基本:生物の価値を見極める
1:マンハッタンと共に世界を観察する
2:とりあえず世界の滅亡は待ってみる
[備考]
※映画『花の都でファッションショー…ですか!?』の冒頭の時期から参戦。

【Dr.マンハッタン@WATCHMEN】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品(七日分の食料入りホイポイカプセル)
[思考]
基本:未知の存在を探し、観察する
1:サラマンダーの原子を調べる
2:オンスロートに興味あり
[備考]
※『最低のジョーク』発動後、火星から地球に移動中の時期に参戦。
※時間軸を認識しての多時間同時認識能力は使えなくなっている。
 簡単に言えば未来と過去が見えない状態。




【キャラクター簡易解説】
『Dr.マンハッタン』
 本名:ジョン・オスターマン。とある科学事故で原子を操る力を手に入れた神に等しい超人。
 量子力学的ヒーロー。飛行もテレポートも自由自在どころか、
 とうやら時間軸座標そのものを感知して物質世界の事象を『処理』している。
 そのため時間軸から外れているらしく、すべての時間を同時に見る認識能力と、
 世界の理の外側から直接量子の振る舞いに手を加えられるため、事実上全能の存在。
 その能力というかあり方のため、人間性が消失しており常時全裸なのはそのためである。
 しかしウォッチメンの終盤、彼は人間の素晴らしさ、尊さに気づき、生命に対する興味を取り戻した。
 早い話、神というか宇宙法則そのものの擬人化である。
 基本的に制限がない当ロワにおいても、全時間の感知はさすがに強すぎるため封印させてもらっている。
0102 ◆Dbja0ebxMY 垢版2017/10/26(木) 14:32:03.80ID:rYaFRYFX
投下終了。本日はここまでです。
ありがとうございました
0104ヘルシングの奇縁 ◆Dbja0ebxMY 垢版2017/10/27(金) 11:28:21.54ID:MRIBTJeG
 インテグラは最初、状況を飲み込めなかった。
 ウォルターを失い、アーカードを失い、少佐を倒し、セラスと共に我が家に帰ったはずだ。
 ロンドンは崩壊したが、最後の大隊は滅ぼした。1944年の亡霊は、
 あの街と、我が従僕と、我が執事と共に、完全に消え去ったはずだ。

 しかし、オンスロートなる化け物は殺し合いの場にインテグラを召還した。
 しかも今ここはロンドンではないか。
 しかもしかもあの決戦の、死都と化したロンドンではないか。
 インテグラの視線の先には堕ちた飛行船「デウス・エクス・マキナ」がそのままある。
 
 あれだけ死体と死人とガレキに塗れた街が、それでも今ガレキを除いて
 きれいさっぱりなのは、アーカードの『大喰い』で喰い尽くされたからなのか。
 あるいはあのオンスロートなる化け物が全く同じ街並みを創りだしたとでも言うのか。

 やりきれない気持ちを胸に、葉巻に手をかける。
 その背後に、気配。

「動くな」

 闇から染み出るような重い声に、しかしインテグラはわれ関せずと葉巻に火をつけた。

「こっちは一仕事終えたばかりでね。一服ぐらいいいだろう?」

 インテグラが存分に煙をふかして顔だけを背後に回すと、そこに妙な男が立っていた。
 建物の影に混じるような場所に立ち、上から下まで真っ黒なスーツを着て、
 地面に届いてなお引きずる長さのマントをはおり、
 顔には漆黒のマスク。目の部分はご丁寧に白く瞳が窺えない。
 それは幼い頃に読んだ、コミックの世界のスーパーヒーローそのものだった。
 思わず気を抜かれかけたインテグラだったが、
 相対する男の声はあまりにも真面目だったので、突き合ってやるかと口を開いた。
0105ヘルシングの奇縁 ◆Dbja0ebxMY 垢版2017/10/27(金) 11:28:49.13ID:MRIBTJeG
「確認したいことがある」
「人にモノを尋ねるなら、名前くらい名乗ったらどうだヒーロー?」

 煙を吐き出して、皮肉めいてインテグラは言う。
 マスクの男は良いだろうと呟き、言葉を続ける。 

「私はバットマン。キミは誰だ」
「バットマン……。コウモリ男、ね」

 そのまんまなネーミング。いい歳の男だろうに、ますますコミックヒーロー染みている。
 しかし、コウモリ男か……。  

「私はインテグラ・ファルブルケ・ウィンゲーツ・ヘルシング卿だ」
「ヘルシング……?」
「そうだ。ヘルシングだ。吸血鬼狩りの」
「ブラム・ストーカーか?」
「驚いたか?」 
 
 インテグラはしてやったりとでもいうべき笑みを浮かべた。
 バットマンはしばらく悩んだ様子で微動だにせず、インテグラを見ていた。

「ここはロンドンだな。ガレキの山になっているが」
「そうだ、ロンドンだバットマン。私の知る限りつい最近まで死都<ミディアン>となっていたはずのな」
「何があったか知っているのか?」
「知っているも何も、私は当事者だ。この場に居合わせ、私が終わらせた」
「詳しく聞きたい」 
「断る」
 
 即答したインテグラに、バットマンは口をつぐんだ。
0106ヘルシングの奇縁 ◆Dbja0ebxMY 垢版2017/10/27(金) 11:29:16.44ID:MRIBTJeG
 
「顔を隠し名前も明かさない人間を、出会ったばかりのコスプレヒーローを信用しろと?
 ふざけるなよバットマン。仮におまえに情報を提供して、私になんの見返りがある?」
「……君の望むことを叶えよう」
「無理だな」

 はっ、とインテグラは笑った。
 
「言っただろう、一仕事終えたばかりだと。私の宿命はもう終わって……」
「アーカード」

 バットマンが口にした名前は、インテグラの言葉を止めた。
 
「アーカード、アレクサンド・アンデルセン、セラス・ヴィクトリア、少佐。
 この名前の人物たちは、キミの関係者ではないのか?」
「……なぜわかる」
「リストだ。オンスロートが我々の頭に入れ込んだ参加者リストは、
 おそらく一定の法則で区切られている。同じ世界の出身という事だろう」

 インテグラは目を閉じた。頭の中に様々な名前が浮かぶ。その中には自分の名前も、
 そしてバットマンが言った名前も並んでいた。

「バカな……」
「この名前の人物……。そのうちの何人か、あるいは全員がここで死んだのではないか?」
「!!」

 インテグラの目が大きく見開かれた。バットマンの口角が吊り上る。
 しまった。とインテグラは思った。

「やはりそうか。ということはマルチバースから連れてこられた可能性が高いな」
「並行世界だと……」
「ふざけている、か?」
「いや、目の前のスーパーヒーローが、一番ふざけている」

 意図としては精一杯の皮肉だろうが、インテグラは燐とした姿勢は崩さない。
 
「私の世界には同じだが違う世界……、並行世界が存在することがわかっている。
 オンスロートはおそらく多次元、多時間に干渉して参加者を連れてきている」
「なるほど、ふざけているな。だが根本的な可能性を見落としているぞ、バットマン」 
「何が言いたいかはだいたいわかる。このリストがはたして本当かどうか、
 このゲームが本当にただの殺し合いか、だろう」
「そうだ」

 インテグラは葉巻を吸い尽くした。
0107ヘルシングの奇縁 ◆Dbja0ebxMY 垢版2017/10/27(金) 11:30:03.30ID:MRIBTJeG
「オンスロートという化け物が、こんなふざけた催しを開くのは実に神らしいとして。
 そいつが我々にバカ正直にルールを提示するか、ということだ」
「神は実直で真面目で公正だと思っている者は多いが、それは事実無根だ」
「少し違うぞバットマン。神は公正だ。なぜなら神は、ルールを捻じ曲げて道理を通すからな」

 インテグラの言葉に、バットマンはともすると不気味に見える笑みを見せた。
 インテグラの知性。センス。そしてどこか気品ある振る舞い。
 バットマンにとって、どれもこういう場においては好ましいものだった。

「まぁ、赤い鎧で身を固めたいかめしい神など、私は聞いたこともないがね」

 同感だ。とバットマンはうなずいた。
0108ヘルシングの奇縁 ◆Dbja0ebxMY 垢版2017/10/27(金) 11:30:18.63ID:MRIBTJeG




「アーカードは吸血鬼か?」
「ほぅ、良くわかったな。……いや、まぁわかるか」
「ドラキュラが真名を隠す際にアナグラムを用いるのは原典でもそうだろう。
 もっとも、エイブラハム・ヴァン・ヘルシングがその後も鹵獲したドラキュラを
 使役しているとは知らなかったがね」
「ああ、多少癖が強いが、役に立つ従僕だ」

 デウス・エクス・マキナの最奥。少佐のいた場所に、二人はいた。
 この中も外に負けず劣らずメチャクチャなありさまである。
 インテグラと情報を交換する中で、ここに来ることを提案したのはバットマンであった。
 彼はあるモノを探しだし、そして直している。

「しかしまぁ、ジャスティス・リーグ・オブ・アメリカとは、驚きを通り越してあきれているぞ。
 もっといい名前は無かったのか? さすがはアメリカのセンスだな」
「誰もが安心できるシンボルは、わかりやすい方がいい」
「おまえは安心と言うより、恐怖を与える側に見えるが?」
「恐怖も同じだ。構造は複雑だが、伝え方はわかりやすい方がいい」

 バットマンが探し当て、整備しているのは、パソコンだ。
 少佐がロンドンを見通すのに使っていたパネル式大画面と、それに連なる巨大コンピュータ一式。
 インテグラは手持無沙汰で、脳裏に浮かぶ名前を眺めていた。
0109ヘルシングの奇縁 ◆Dbja0ebxMY 垢版2017/10/27(金) 11:30:50.48ID:MRIBTJeG
「スーパーマンだとかは、探さなくていいのか? 2人いるが……」
「いずれだ。先に拠点が欲しい。2人いる事の理由も察しはついている。
 それにおそらく、我々にはまだ探せない」
「なぜだ?」
「オンスロートの言葉が真実なら、この殺し合いの舞台になっているのはこの世界……、
 つまり宇宙そのものだ。範囲的に太陽系全域だけだとしても、違う惑星にいられた場合
 星間飛行能力のない我々には手の打ちようがない」
「なるほどな……」

 インテグラは納得する。アーカードと言えど、さすがに宇宙空間を自由に行き来はできないだろう。
 宇宙に放逐したぐらいで死ぬとは思えないが、宇宙で自在に行動できるわけはない。
 もっと環境に適応できるように改造すればよかったか、などと冗談めかして思ったところで、はっとする。

「まて。という事は、ほかの参加者の中には、
 惑星を自由に行き来できるヤツがいるという事か?」
「確実にいるだろう。まずスーパーマンがそうだ。そしてオンスロートが虐殺ではなく殺し合い、
 と宣言している以上。スーパーマンを物理的にか間接的に殺す方法を持つものがいる可能性も高い」
「――……!」

 アーカードが真に殺される絵面は浮かばないが、アーカードは死なないわけではない。
 不死者の中の不死者ともいえるアーカードではあるが、それはあくまで命のストックがあるからだ。
 吸血鬼は心臓を潰されれば物理的には一度死ぬのだ。
 アーカードを物理的に殺すためには数万回、あるいは数百万回殺さねばならない。
 それはインテグラの知る世界ではおおよそ不可能な話である。だからこそ少佐は『毒』で
 アーカードを消したのだし、アンデルセンですら零号解放の隙をついて殺しかけたに過ぎない。

 しかし、バットマンの語るスーパーマンらの話を聞いていると、
 アーカードを物理的に殺せるものが、この世界にいないとは言い切れないのが事実だ。

「そういえば、おまえの能力はなんなんだ?」 
「私は超能力の類は持っていない」
「……は?」

 ちょっと待て。とインテグラは言った。
0110ヘルシングの奇縁 ◆Dbja0ebxMY 垢版2017/10/27(金) 11:31:23.74ID:MRIBTJeG
「じゃあ、いい歳した男が、コウモリのコスプレをしているだけか!?」
「…………」

 バットマンは答えない。背を向けて、黙々と作業を続けている。

「リーグのような、半神存在や超人の集団の中には、私のような者こそ必要なのだ」
「……面白い男だな」

 それはインテグラの本心だった。
 この男は紛れもなく人間だ。我々に近い側の人間だ。

 所々にノイズを走らせながらも、画面は光を帯びた。
 いかにもコンピュータらしい英文がせわしなく流れていき、
 バットマンが手にするリモコンで徐々に操作していく。

「バッテリーが生きていたか」
「ああ。ここを拠点にする。まずオンスロートを倒す仲間を集めなければ」
「その次は、奴の目的を探る、か」

 インテグラが二本目の葉巻に火をつけた。

「そうだ。奴の言動には矛盾が多い。ヤツの多次元にわたって干渉する能力や、
 脳に直接データを送り込むテレパスの能力を見るに、全能の力を持つというのも
 あながちウソではないだろう。だが、それならば何が望みだ……?」
「確かに、人類その他を絶滅させるだけなら、全能の神ならばたやすいはずだ。
 なぜこんな回りくどいことをする……?
 まぁ、神の望みは人間をもてあそぶこと、と考えても納得はいくがね」
「いや、奴にはなにか明確な目的があるはずだ」
「何故そう思う」

 バットマンは、暗黒神と破壊神の戦いを思い出した。

「かつて私の世界に破壊神アンチモニターと名乗る神が降臨した。
 世界を優に滅ぼせる力を持った存在だったが、リーグ全員でやつを止めた」
「ほう」
「アンチモニターの目的は元の姿に戻ることだった。そして私はその時、
 ある方法で過去の知識の垣間見る『神』となっていた」
「……笑うところか?」

 バットマンは構わず続けた。

「私の見た知識の中に、マルチバースの崩壊と、再生があった。
 そして、その知識の中心には私たちの世界に現れたアンチモニターとは、
 おそらく別のアンチモニターが過去に存在していた事実だった。
 過去のアンチモニターは並行世界を破壊し、宇宙を喰らっていたのだ」
「……壮大な話で結構だが、なにが言いたい?」
「宇宙を滅ぼす力を持つ神であっても、前準備が必要だということだ」
「それがこのゲームか」
「おそらくはな」
0111ヘルシングの奇縁 ◆Dbja0ebxMY 垢版2017/10/27(金) 11:32:14.75ID:MRIBTJeG
 インテグラは押し黙った。
 皮肉の一つでも零したいところだが、此度の敵は、化け物は、
 今まで対峙したどの化け物より強大で異質だ。

 だが――、だからこそ。
 インテグラの信念は、一つの言葉を落とす。

「化け物を倒すのはいつだって人間だ」

 突然の言葉だったが、バットマンは真剣な表情で頷いた。

「ああ、その通りだ。だから我々がやる。やらねばならない」
 
 コンピュータがうねりを挙げた。
 二人の、誓いにもにた宣言を見届けて。
0112ヘルシングの奇縁 ◆Dbja0ebxMY 垢版2017/10/27(金) 11:32:27.33ID:MRIBTJeG
【地球を再現した惑星、ロンドン/一日目朝】


【インテグラ・ファルブルケ・ウィンゲーツ・ヘルシング@HELLSING】
[状態]:健康
[装備]:葉巻、サーベル、コート
[道具]:基本支給品(七日分の食料入りホイポイカプセル)
[思考]
基本:化け物を倒す
1:バットマンと共に、仲間を集める
2:アーカードやセラスを探す
3:少佐はこの手で滅ぼす。何度でも
[備考]
※参戦時期は少佐を殺害後、セラスと共に飛翔している最中。
※左目はオンスロートの計らいで元通り、完治しています。
※バットマンと情報交換しました。

【バットマン@BATMAN】
[状態]:健康
[装備]:ワイヤー、音響装置、医療キットを始めとするバットマンの小道具一式。
[道具]:基本支給品(七日分の食料入りホイポイカプセル)
[思考]
基本:オンスロートを倒す
1:仲間を集める。
2:ジャスティスリーグのメンバーを集める。
3:敵と遭遇したならば戦うが、なるべく戦いは避ける
[備考]
※参戦時期はNew!52版スーパーマンが死亡した後、
つまり『ファイナル・デイズ・オブ・スーパーマン』の後。
※インテグラと情報交換しました。
0113ヘルシングの奇縁 ◆Dbja0ebxMY 垢版2017/10/27(金) 11:32:50.83ID:MRIBTJeG
【キャラクター簡易解説】
『バットマン』
 映画でもお馴染み、ダークナイト。コウモリ男。
 DCコミックスでも最古参のヒーローの一人。初登場は1940年。
 正体はブルース・ウェインという世界一の大富豪。悪徳の街ゴッサムシティの守護者。
 超能力の類は持たず、人類最高峰の肉体と知能と武器兵器で戦うスーパーヒーロー。
 当ロワのバットマンは、どうやらNew!52版の設定である。
 『ダークサイド・ウォー』を終え、『ファイナル・デイズ・オブ・スーパーマン』で
 スーパーマンが殉死した後。バットマン誌に置いては少なくとも『バットマン:エンドゲーム』
 以前の時系列のようだ。
0114ヘルシングの奇縁 ◆Dbja0ebxMY 垢版2017/10/27(金) 11:33:44.12ID:MRIBTJeG
以上です。ありがとうございました
0116さらば、誇り高き女神 ◆Dbja0ebxMY 垢版2017/10/27(金) 14:26:18.98ID:MRIBTJeG
 森の中だった。
 うっそうと生い茂る木々。獣道の隙間に恐る恐る足を延ばす。
 しかし進めど進めど先の風景は変わらず、彼女はいい加減に我慢の限界に達していた。
 感情が爆発して、彼女は思い切り叫んだ。

「いやーっ! もうなんでわたしがこんな目に―っ!!
 早く助けてよー! 孫くんー! ベジーター!!」

 無情にも空に吸い込まれていく叫びに、答えは帰って来ない。
 というか鳥一羽獣一匹で出てきやしない。なんなんだこの森は。
 さびしさや恐怖に押しつぶされて、ブルマはぐずぐずと泣き始めた。
 なんで自分がこんな目に……。やっとセルを倒して世界が平和になったのに。
 
「っていうかオンスロートってやつも、なんでわたしなんかを選んだのよーっ!
 戦士を集めたって、わたしは戦士じゃないって見てわからないの!?」

 コロコロと感情が切り替わり、怒りが湧いてきたのでブルマは怒鳴った。
 ブルマは戦士ではない。あくまで科学者である。
 見るからに戦えそうもない可憐な美女の自分を召還するなんて、
 オンスロートって全能の神じゃなくてバカの神なんじゃないのか。
 というか神なんて言われてもちっともありがたくない。

 目を閉じて浮かぶリストには孫悟空、ベジータ、トランクス、
 孫悟飯、クリリン、ヤムチャの名前があった。
 ほっと一安心はしたが、そのほかにフリーザ、セルと名前があって
 ぎえーってなった。ぎえーって。

「おや、お嬢さん。何を泣いているのかな?」

 優しげな声に、ブルマは顔を挙げた。木々の向こうから影が近づいてくる。
 風になびく長髪。女性にも見える美しく整った顔。
 全身にマントを羽織って体は見えないが、やっと会えた人間に喜んだブルマは、
 にべもなく飛びだした。

「ああ〜ん! やっとまともに人に出会えたわー!!」
「ふふふ。私もやっと人に出会えた……」

 男の手前でブルマは立ち止まった。様子がおかしい。
 嫌な予感がしたのだ。
 男は誘うように手を仰いだ。

「ふふ、どうした女。私が守ってやろうぞ……」
0117さらば、誇り高き女神 ◆Dbja0ebxMY 垢版2017/10/27(金) 14:26:42.14ID:MRIBTJeG
 ただし、と男が続ける。

「貴様の体を食わせてくれたらなぁ〜っ!!!!」
「ぎえーっ!!! やっぱり!!!!」

 男の体から魔物が噴き出した。
 ブルマは急いで引き換えし、力の限り逃げた。
 化け物染みた男は直接追ってこない、ただし、
 その体からうごめく奇怪な化け物が次々に飛び出していた。
 
「ぐはははははっ!! どこに逃げようと無駄だ!!
 既にこの山はドグラの、私のモノなのだぞ!!!!」

 ブルマを囲い込むように地面が盛り上がり、グチャグチャとドグラがあふれ出した。
 逃げ場を失い、ブルマは尻もちをついた。

「い、いや〜っ!! 誰か助けてーっ!!!」
「ふはははは!!!! いけドグラよ! 大したエネルギーにもならんだろうが、
 せっかくの人間の女だ。食い尽くせ!!」
 
 男の――霧隠才蔵が合図すると、ドグラは一斉に襲いかかった。
 ブルマが観念したと言わんばかりに体を丸めて泣き叫ぶ。

「助けてーっ!!!!!!!!!!」

 その時、両者の間に空から何かが降り注ぎ、迫りくるドグラを弾き飛ばした。

「なにいっ!?」
「えっ? えっ!? 何があったの……?」

 驚く才蔵。呆けるブルマ。その間に堕ちてきた人物は、ゆっくりと立ち上がった。
 それは円形の銀色の盾を構え、剣を片手に携え、腰に黄金の縄を下げ、赤と銀に輝く鎧に身を包んだ戦士。

「魔物め。私が相手よ!」

 それはワンダーウーマン。アマゾンの女神にして最強の戦士。
0118さらば、誇り高き女神 ◆Dbja0ebxMY 垢版2017/10/27(金) 14:27:12.13ID:MRIBTJeG
 ■



「貴様ぁ〜何者だぁ!!」

 四方八方から襲い来るドグラを、ワンダーウーマンは恐るべき速度で斬りおとしていく。
 時に盾で弾き飛ばし、時に手甲で受け止め弾き、徐々に霧隠才蔵に近づいていく。

「す、すっご〜!」
「早く避難しなさい!」

 思わず見とれていたブルマに激を飛ばし、
 絡みついてくるドグラを斬り落とした。
 ブルマははっとする。良く見ればワンダーウーマンはドグラを斬り倒し、道を造ってくれていた。
 ブルマは抜けた腰を必死で奮い立たせ、わたわたと這いずって離れていく。
 同時に、ワンダーウーマンはとうとう才蔵の前に立った。

「くくくっ、やるではないか」 
「この手の化け物とは闘い慣れてるわ」

 言い終わると、ワンダーウーマンは剣を振りぬいた。
 剛速の剣線に才蔵の体が真っ二つに斬り裂かれ、しかし、才蔵は笑っていた。

「なに!?」
「くくく、ははははははっ!! 無駄だ女。私は無敵なのだ! 見ろ!!」

 自ら剣を抜くと、ばっ、と才蔵がマントを広げてみせた。
 切断面から噴き出る瘴気と、その体を埋めつくす暗黒物質。
 醜悪な光景に、ワンダーウーマンですら、うっと顔をしかめた。

「私の体が一つの宇宙なのだ! 霧隠才蔵の宇宙なのだ!!!」

 才蔵の体がぴたりとくっつき、元通りとなった。

「この中では私の思いのまま。私は神だ!!!!」

 才蔵が叫ぶとともに、山が、森が、唸り始めた。
 木々を食いつぶしながら、そこかしこからドグラが噴き出してくる。

「神……?」
「おまえたちはどうあがいても私には勝てんぞ!! ドグラは既にこの森を、
 山を食い尽くしている!!! いずれはこの星そのものを食い尽くしてくれよう!!」

 地激しい鳴り。構わず意気揚々と邪悪に笑う才蔵を前に、
 ワンダーウーマンとっさに飛びのいて、はいずっていくブルマを抱えて森を飛びのいた。
 間一髪だった。地面から溢れたドグラが二人のいた場所を飲み込み、空を跳ぶ二人をドグラが追い立てる。
 高台に降りた二人は、そこから自分たちがいた場所を見た。
 ドグラがひしめきうごめくその有様は、さながら地獄の様相を示していた。

 地面から吹き出したドグラがその規模を広げつつ、また再び地中に潜っていく。
 まるで蟻が獲物に群がって、その体をむさぼるように。

「あ、あわわわわわ」
「まずいわ」
0119さらば、誇り高き女神 ◆Dbja0ebxMY 垢版2017/10/27(金) 14:27:39.00ID:MRIBTJeG
 ワンダーウーマンが言った。ブルマが「なんで」と言い、
 早く逃げましょう。と続けた。
 しかしワンダーウーマンは頭を振った。

「ダメよ。あの邪神は、この星の地殻を喰らおうとしているのよ。
 地殻そのものを取り込もうとしているのね」
「えっ? ど、どういうことなの? それ……」
「ヤツが、この星そのものになろうとしてるってことよ」

 そうなったら逃げ場はなくなる。いくらワンダーウーマンとて手の打ちようがない。
 言うや素早く、ワンダーウーマンはブルマを置いて、再びドグラの中に飛び込んだ。
 ブルマの待って!! という声を振り切って、あっという間にドグラの海に沈む。

 盾を正面に構え、ドグラを蹴散らして沈んでいく。
 やがて空域の温度が上昇し、地殻に近い場所空洞に降り立った。

 地面を這うドグラがずるりと盛り上がる。
 それは待ち構えていた才蔵となって笑った。

「来たか、女。ひとつ聞きたい。おまえはなんなのだ……」

 才蔵には疑問があった。
 ドグラは、生物に接触すると生物の体に穴を造る。
 その穴自体がドグラであり、ドグラの通り道であり、穴を広げて生物を支配する。
 しかしワンダーウーマンはあれだけドグラにさらされていながら、
 穴ができる様子が無い。
 
「私はワンダーウーマン。アマゾン族の女神であり、戦士よ」
「女神……、神だと!?」

 なるほど、と才蔵は笑った。

「この私の相手に、神とはおあつらえ向きだ」
 
 オンスロートというやつの、何と気の利いていることか!
 この私の相手に神を使わすとは!
 才蔵は夢想する。このゲームの参加者には夢幻弥勒に真田幸村がいる。
 才蔵は、あの二人を殺すためには、至高の神になるには
 更なる力が必要だと思っていたところだった。 

「神たる貴様を取り込めば、この私も更なる力を得ることができるやもしれん!!!」
「残念ね。私はおまえのような奴に食われるつもりはないわ。貴様はここで討つ!!」
「くくくっ! では、やってみるがいい!!!」

 その言葉を皮切りに、ワンダーウーマンが飛びかかった。
 才蔵は周囲の岩をドグラと化し、ワンダーウーマンを撃ち落さんがために襲わせる。
 ワンダーウーマンは盾でドグラの第一波を弾き飛ばし、第二波を剣で斬り伏せた。
 着地したワンダーウーマンは隙なく剣を地面に突き刺し、
 顔の前で腕をクロスして、両手の腕輪を重ねた。
 迫りくるドグラをまっすぐ睨む。
0120さらば、誇り高き女神 ◆Dbja0ebxMY 垢版2017/10/27(金) 14:28:07.00ID:MRIBTJeG
「はぁぁーっ!!!」

 おおよそ女性とは思えないほどの覇気を帯びた雄たけびが、衝撃波が、
 地殻を揺るがした。ワンダーウーマンの神通力が炸裂したのだ。
 周囲のドグラをまとめて消し飛ばし、才蔵の体をも弾き飛ばした。

「ぐぅ、やるな!」
「どういたしまして」

 皮肉を述べ、素早く剣を掴むと、腰の縄を飛ばし才蔵を拘束した。
 才蔵が身じろぎするが、身動きが取れないようで、それを確認するなり一直線に斬りかかった。
 才蔵はにたりと怪しげに笑い、受けるそぶりなく刃を受け入れる。無防備な体に剣が食い込むが、
 ワンダーウーマンは顔をしかめた。斬った感触が無かった。

「言ったはずだ。私の体は一つの宇宙だと!!」

 才蔵が刀身をつかみ、剣をさらに体に食い込ませる。
 ワンダーウーマンは思わず剣を手放し飛びのいた。
 投げ縄と剣は才蔵の体に取り込まれて、沈んでいった。

「なんてこと……!!」
「どうやら貴様は私が知る神とは、違った神であるようだな。ならば貴様では私を倒せん! 
 貴様が如何な力を持とうと、私の支配する領域では私は倒せん!!」

 才蔵が両手を広げると、周囲の空間が歪み、地殻だったものが一瞬でドグラに変貌した。
 ワンダーウーマンは盾で弾き飛ばすためドグラに振りかぶるが、先ほどとは違って逆に弾き飛ばされてしまう。  
 さっきとはパワーが違っている。桁違いだ。

「さぁ、私に食われるがいい!!」

 両腕両足をドグラに縛られ、ワンダーウーマンはつるされた。
 無数のドグラの口が、チキ……、チキ……、とワンダーウーマンをにらんだ。
 不思議なことに、振りほどこうと力を入れようにも、痺れたようにピクリともしない。
 これは投げ縄の力……! 取り込んだのか? これがあの男の能力か! ワンダーウーマンは歯を食いしばる。
 まんまとしてやられた!
 神を屈辱たらしめた才蔵は、満悦して手を振りかざし、そしてドグラが襲いかからんとした。
 正にその時、地殻には到底似つかわしくない――――というか想像もできない雷鳴がとどろいた。
 天井をぶち抜いてドグラを貫く雷は、ついでと言わんばかりにワンダーウーマンの拘束をも破壊する。

「ぐぬぅぅっ!!! なんだ!?」

 雷鳴がやみ、ドグラを蹴散らして、その男は現れた。

「自然を蹂躙し邪神よ、我が力の前におののくがいい!! マイティ・ソーはかく語りき!!」

 雷神はここにあり。
 ソーはハンマーをひと撫ですると、発生した雷光でドグラを消し飛ばし、
 支配領域を展開していたはずの才蔵の横っ面を殴り飛ばした。

「なにっ!? バカなっ……!! この私がダメージを……っ!!?」
「貴様が例えその身に宙(そら)を治めておろうと、我がムジョルニアの前に意味はない!」 

 ソーはハンマー=ムジョルニアを振り回し、パワーをチャージする。
 回転が増すほどに吹き荒れるエネルギーが激しく地殻を揺るがした。
 ワンダーウーマンは盾を拾い、ソーの隣に並んだ。
0121さらば、誇り高き女神 ◆Dbja0ebxMY 垢版2017/10/27(金) 14:28:31.81ID:MRIBTJeG
「雷神よ、礼を言う」
「造作もないこと。貴公はアマゾンの戦士であろう、共に奴を倒そうぞ」

 チャージを終えたソーが、まさに電光のごとき勢いで飛び出し、
 ムジョルニアの一撃を才蔵の腹に打ち出す。
 苦悶にのたうつ才蔵が宙に浮いたところを、間髪入れずにワンダーウーマンが衝撃波で追撃する。

「ぐぅぅぅぅう……!!!」

 べちゃり。ヘドロのようにぐちゃぐちゃになった才蔵の体が人間体から、
 ドグラがまとわりついた異形へと変質していく。

「私は負けぬ!! ドグラは無限の空間だ!! きさまらがどれほどの神かは知れぬが!!
 わたしの意識が支配するドグラは絶対に負けぬ!!!」

 もはやなりふり構わないのか。周辺の宙域そのものをドグラと化し、
 二柱の神に才蔵は襲いかかる。

「きさま等もドグラに取り込んでくれる!!」

 ワンダーウーマンとソーは顔を見合わせた。
 そして、ソーはムジョルニアの最大の一撃をドグラの塊に打ち込み、
 ワンダーウーマンは最大の神通力を爆発させた。

「ぐ、ぐあああああああああああ!!! ば、バカな〜っ!!!!!」

 その衝撃は星そのものを激しく揺るがし、
 はちきれたパワーは地表に吹き出して宇宙にまでおよんだ。
 ブルマは、二柱の神が飛び込んだ穴から、穴のサイズをはるかに超える、
 かめはめ波のようなパワーが空に吹き飛んだのを見た。
 自分は吹き飛ばされないように木々にしがみついていた。
0122さらば、誇り高き女神 ◆Dbja0ebxMY 垢版2017/10/27(金) 14:29:10.29ID:MRIBTJeG
「ふぅー、ふぅー……っ!」

 もはやゲル状の欠片になった才蔵は、それでもなお生きていた。
 ソーとどめを刺すためにゆっくりと近づいた。

「とどめだ、邪神よ。地獄に還るがいい」
「ああ……。確かに負けだ……」

 だが、と才蔵は続けた。

「きさまらのな!!」

 才蔵の叫びと共に、ドン!! と衝撃が襲った。
 星そのものが大きく揺れ始め、地殻に大きな亀裂がはいる。
 
「何をしたの!?」
「ふはははは! ドグラは無限の空間と言っただろう!
 きさま等と戦っている間に、別のドグラに星を食わせていたのよ!!
 この星はもうすぐ滅び、ドグラそのものとなる!!! そうなれば生き残れるのは、
 ドグラを支配するこの私だけよ!!!!!!」
「あがきをッ!!」

 亀裂からあふれてくるドグラを吹き飛ばしながら、ソーは唸った。
 チャージしたムジョルニアの全パワーは解放してしまった。
 今の自分に、周辺のドグラをまとめて吹き飛ばすパワーはない。
 仮にそのパワーがあったとしても、星そのものを吹き飛ばしてしまわねばならない。

 それでも自分と、ワンダーウーマンは無事だろうが、
 それでは外で震えていたブルマと言う女性が死んでしまう。

「悪鬼め……!!」
「ふはははははは!!!!!」

 才蔵の魔笑がこだまする中で、ワンダーウーマンがドグラを弾き飛ばしながら、
 才蔵の残りカスに近づいた。
 そして、ひざを折り、その眼前で腕をクロスする。

「何をする気だ……!?」 
「雷神ソー、外の女性を頼むわ」
0123さらば、誇り高き女神 ◆Dbja0ebxMY 垢版2017/10/27(金) 14:33:47.38ID:MRIBTJeG
「や、やめろおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!」

 才蔵の悲痛な叫びを飲み込む大爆発が巻き起こり、そして……。

 そして一つの星がその命を終えた。
0124さらば、誇り高き女神 ◆Dbja0ebxMY 垢版2017/10/27(金) 14:34:13.68ID:MRIBTJeG
 ■


 宇宙。

 ソーのマントに全身を包まれて、ブルマは星の崩壊を見守っていた。
 
「……!」
「彼女は戦士として、戦場で身罷れたのだ。悔いはない。
 人を護って、戦い果てたのだ。素晴らしき女神よ。誇り高き戦士よ」

 ソーの賛辞は、慰めである。ブルマは涙を浮かべていた。
 ソーはそれをぬぐうことをせず、すぐさまほかの星に行くべく飛び去った。

 

【ワンダーウーマン@JUSTICE LEAGUE 死亡】

【太陽系を模した宇宙/一日目朝】


【マイティ・ソー@アベンジャーズ】
[状態]:健康
[装備]:ムジョルニア、鎧
[道具]:基本支給品(七日分の食料入りホイポイカプセル)
[思考]
基本:オンスロートを再び地獄へ送り返す
1:ブルマを護る
2:アベンジャーたちを探す
3:戦士よ、安らかに
[備考]
※参戦時期は『シージ』の前。
 ラグナロクから帰還し、アベンジャーズとの合流前です。

【ブルマ@DRAGON BALL】
[状態]:健康、不安
[装備]:なし
[道具]:基本支給品(七日分の食料入りホイポイカプセル)
[思考]
基本:いやー!
1:孫くんとベジータ、トランクスでもクリリンでもヤムチャでもいいから探す
2:フリーザとかセルとかいやー!
3:女神さま……!
[備考]
※参戦時期はセル編終了後。
0125さらば、誇り高き女神 ◆Dbja0ebxMY 垢版2017/10/27(金) 14:34:33.29ID:MRIBTJeG
「ぐぐぐっ……」

 宇宙空間を、ドグラの欠片が漂う。
 霧隠才蔵は生きていた。
 ワンダーウーマンがパワーを解放する寸前、才蔵は
 全てのドグラを自身の防御に回し、生存に徹していた。
 才蔵の内面に浮かぶドグラ宇宙が、本当に無限の空間であり、
 その空間に内側に入ることで自身の支配領域に守られていたことも生存に繋がった。

「おのれ……、おのれ許さんぞ……!!」 
 
 ドグラは物質がある限り無限に増殖できる。
 しかし、依り代が無ければこの次元に湧き出ることはできない。

 才蔵は怒りと、憎しみと、悔しさを噛み締めた。

「おのれ……必ず、必ずきさまらを喰らい、この霧隠才蔵が神となってやる……!!」

 憎しみは宇宙を漂う。
 獲物を求めて。

 
【霧隠才蔵@虚無戦記】
[状態]:わずかなドグラ
[装備]:ドグラ宇宙
[道具]:基本支給品(七日分の食料入りホイポイカプセル)
[思考]
基本:私が真の神となる!
1:夢幻弥勒と真田幸村は殺してやる
2:マイティ・ソーとかいう神は喰らってやる
[備考]
※参戦時期はドグラと融合した直後。
0126 ◆Dbja0ebxMY 垢版2017/10/27(金) 14:34:51.95ID:MRIBTJeG
投下終了です。ありがとうございました
0127123と124の間 ◆Dbja0ebxMY 垢版2017/10/27(金) 14:45:32.57ID:MRIBTJeG
抜けがありました。

 ソーは、鍛えられた戦神の直感で、ワンダーウーマンが何をするか察した。
 神妙な面持ちでムジョルニアを掲げて、言った。

「貴公の勇気と力に敬意を示そう。共に戦えて光栄だった」

 ワンダーウーマンは微笑んだ。
 ソーはそれを見届けると、天井を突き破り地上へと飛び去った。

 崩落の進む星。マグマとドグラが地面から吹き出し、あたりを埋め尽くす。
 ドグラが触れた部分、ワンダーウーマンの体に小さく穴ができる。
 才蔵は悟った。
 そして、叫んだ。

「きさまっ! まさかっ! まさかっ! この星ごと……っ!!
 くそっ!! させんぞ〜っ!!! その前にきさまを喰いつくしてくれる!!!」
 
 ドグラが最後の抵抗とばかりにワンダーウーマンの体に集まる。 
 最後の力を振り絞っているせいか、さすがのワンダーウーマンの体にも大穴が開き始める。
 だがどんなに穴が開こうが、穴のドグラが暴れようが、彼女は目を閉じて姿勢を崩さない。
 額の穴から湧き出たドグラが、彼女の象徴たるティアラをはじき飛ばした。

 ティアラが地面におちた瞬間。
 ワンダーウーマンは目を見開き、すべてのパワーを解放した。
0129太陽と花 ◆Dbja0ebxMY 垢版2017/10/29(日) 19:14:41.62ID:7wS2oedQ
 お願い、解放して。

 ――やめろ。妻に近づくな!

 傍にいたくないの、殺して。

 ――ほう、そこまで言われては断れん。
 
 ――だめだ。妻に近寄るな!

 麻薬の代わりにセントリーの力に依存しているだけ。

 ――いやだ。出てくるな……!
 ――例えそうだったとしても……!

 ――セントリーとして成し遂げたことが一つでもあるのか?

 キャプテン・アメリカになれる器じゃない。 

 ――僕は、僕は……。

 その器もないのに、膨大なる力を偶然に得た男の姿……。

 ――ヒーローはおろか、お前は将来に何の夢もなかった。
 

 ――クズだ。
0130太陽と花 ◆Dbja0ebxMY 垢版2017/10/29(日) 19:15:20.86ID:7wS2oedQ
 ■


「はあっ、はあっ……!!」

 ニューヨークの町中。轟音と共に落ちてきた物体により、ビルが無残に崩れ落ちた。
 飛来した物体は圧倒的なパワーとスピードを持って、ビルからビルへと貫き通る。
 後に残るは黄金の軌跡。彼は地上最強のヒーローだったもの。

 その名はセントリー。

 今、彼は苦しんでいた。愛している妻が述べた真実に――。
 自分はヒーローではない。薬物中毒者がたまたま力を得ただけの存在。
 皮肉なことに、その力は彼の暗黒面――ヴォイド――を増大させつづけた。
 いや、そもそも逆だったのだ。ヴォイドこそセントリー=ボブ・レイノルズの本性であり、
 セントリーはその中から生まれた罪悪感と、わずかな正義感に過ぎなかった。

「うわぁあああああああ!!!!!」

 セントリーは打ちのめされていた。
 それでも妻だけは愛していた。本当にヒーローになろうと思っていた。
 だが、混乱の避難から戻ったブルズアイは、妻は自ら戦闘機から身を投げたと、
 自ら死を選んだと言った。
 セントリーに、ヴォイドに耐えられなかったと言った。

 全てが砕けた。

 セントリーは自殺したかった。
 だが、セントリーを殺せるモノは、存在しなかった。
 盟友であり、怒りと共に力を増す、地上最強の力を持つハルク。
 本気で怒りに満ちた彼との戦いでさえ、決着は互角だった。

 太陽に身を晒して消滅しても、分子を操る超人、
 モレキュールマンに分子レベルでバラバラにされても、
 彼は復活した。新たな力を得て、何事もなかったかのように。

 ヴォイドは告げた。どこの惑星にもセントリーを滅ぼす力はない、と。

 彼が絶望の咆哮をあげる度に、発せられるエネルギーが街を破壊していく。
 しかし100万個の太陽の爆発にも匹敵するパワーは、太陽系を丸ごと滅ぼしても尽きることはないだろう。

「うわぁあああああ!!! なんでだ……、なんで……っ!」

 やがて怒りは静まり、休む間もなく押し寄せる悲しみに、彼は膝をついた。
 ニューヨークを模して造られた街は、もはや全体が更地と化してる。

「うっ……、ううっ……!」

 雨が降ってきた。彼のパワーが天候をめちゃくちゃにしてしまったせいだ。
 セントリーは雨は自分にだけ降っていると感じた。
 
「ど、どしたのおじさん! だいじょーぶ!!?」

 雨を掻き消す幼子の声に、セントリーは顔をあげた。
 そこには、水色の髪をした、セントリーの半分くらいの背しかない子供が、
 心配そうにセントリーを見つめていた。
0131太陽と花 ◆Dbja0ebxMY 垢版2017/10/29(日) 19:15:51.23ID:7wS2oedQ
 ■



「わたし、来海えりか! よろしくね〜!!」
「僕は……、僕はセントリー……」
「ねぇ〜っ! おじさんって、もしかしなくても、ヒーロー……?」
「えっ?」
 
 えりかと名乗る少女は、いきなり核心を突いてきた。
 セントリーは思わずくちどもった。ヒーロー……。

「僕が、ヒーローに見えるのかい……?」
「えーっ! だっておじさ……、セントリーさん。
 子供の頃に観たヒーローそのもの! って感じの格好だよ!?」
「…………」

 そうか。とセントリーはうなずく。
 確かに外観だけなら、自分はまっとうなヒーローに見えるだろう。
 だけど、実際は違う。

「そう、だよ……。僕は、ヒーローをやってるんだ」 
「やっぱりー!!」

 罪悪感に塗れながらごちたウソに、えりかは屈託なく笑った。なんの邪念もない。
 尊敬と憧れに満ちた笑みだ。
 セントリーは驚いた。思わず涙が出た。こんな純粋な正義を信じる顔は、
 久しく見ていない。いつも自分の周りにあるものは……。

「やっぱアメリカはすごいなー! 本場! って感じ!!
 しかもセントリーさん、すっごく強いんでしょー!?」
「えっ?」
「だってぇーわたし見てたんだよ! セントリーさんが『うおおー』って雄たけびをあげて、
 そのたびに地震が起きて、ビルが倒れて……。怖かったけど、
 もうおさまったってことは、敵は倒したんだよね!」
「あっ……。その……」
「すごいなー……、ひょっとするとセントリーさん、ムーンライトより強いかも……」

 むむむと顔をしかめるえりかに、セントリーは声をかけられなかった。
 誤解を解かねば、という思いと、純粋にヒーローとしてみられている喜びが 
 心の中で混同していた。

「そうだよ……、街はめちゃくちゃにしちゃったけど。敵は倒したよ」

 結果として、彼は嘘をついた。
 彼女のヒーロー感を、正義感を、
 憧れの気持ちを踏みにじるわけにはいかないと、自分に言い聞かせながら。

「人がいないみたいでよかったよー、ほんと! 
 強すぎても大変だねー! 大いなる力にはなんとやら、だね!」
「ああ、全くだね……」

 無邪気に心に突き刺さる言葉に苦笑しながら、セントリーは相槌を打った。
 
「あのオンスロートってやつ。誰なのか知ってる? あっ! もしかして倒すべき宿命の悪!?」
「さぁ……、でも。聞いたことがあるかもしれない……! そうだ!」
「わっ! いて!」

 セントリーが急に立ち上がったので、えりかは驚いてしりもちをついた。 
0132太陽と花 ◆Dbja0ebxMY 垢版2017/10/29(日) 19:16:19.34ID:7wS2oedQ
「えりか、ちょっとごめんよ!」
「えっ? えっ? なに? どういうこと……!?」
「心当たりがあるんだ! もしかしたらオンスロートが何者か、わかるかもしれない!」
「ほんとーっ!! やったー!!」

 セントリーがえりかをがっしりつかまえて、空を飛んだ。
 セントリーは周囲を見わたし、そして、ボロボロにも拘らず朽ちていない、
 とびきり背の高いタワーを見つけた。

「アベンジャーズタワーになら、オンスロートに関するデータがあるかもしれない」
「うっひょー! ほんとにー!? わたしたちイキナリラスボス突破のカギになっちゃうの!?」

 アベンジャーズタワーに向かって、セントリーは飛び始めた。
 えりかに負担がかからないようにゆっくりと。

 セントリーの表情に、怒りや悲しみは消えていた。
 今は、その表情から希望が見てとれる。
 

 ――――彼女を護ろう。


 事実、セントリーの心には、今度こそヒーローになれる。
 という強い希望が生まれていた。

 気付けば雨は晴れていた。
 雲を掻き分け、青空が露出する。

 セントリーとえりかを祝福するように、日の光は先を照らしていた。
0133太陽と花 ◆Dbja0ebxMY 垢版2017/10/29(日) 19:16:47.05ID:7wS2oedQ
【地球を模した惑星、ニューヨーク/一日目朝】


【セントリー@マーベルコミックス】
[状態]:精神的に安定。体調は健康
[装備]:セントリーのスーツ
[道具]:基本支給品(七日分の食料入りホイポイカプセル)
[思考]
基本:今度こそヒーローになる
1:何があってもえりかを守る
2:アベンジャーズタワーでオンスロートのデータを探す
[備考]
※参戦時期は『シージ』の直前。『ダークアベンジャーズ・シージ』における
 ブルズアイによる妻殺害報告の直後。

【来海えりか@ハートキャッチプリキュア!】
[状態]:健康
[装備]:ココロパフューム、プリキュアの種
[道具]:基本支給品(七日分の食料入りホイポイカプセル)
[思考]
基本:オンスロートを倒す!やるっしゅ!
1:セントリーさんすごい!
2:また世界を救っちゃうかも! なーんてね!
[備考]
※参戦時期は最終決戦後。
0134太陽と花 ◆Dbja0ebxMY 垢版2017/10/29(日) 19:17:08.43ID:7wS2oedQ
 ■


「Humm……」

 ガレキに満ちて、崩壊した影の一角で、ロールシャッハはすべてを見ていた。
 黄金の輝きを持つ謎の男が、ニューヨークの街を破壊する様を。
 ともすればDr.マンハッタンにも匹敵するかもしれない圧倒的な破壊力。

 さらに謎の黄金の男は、少女を連れて飛び去った。

 ロールシャッハの中で、判決は下された。
 黄金の男は、悪だ。

 覆面の模様が怒りに呼応してうごめきだす。
 ロールシャッハは踵を返した。

 リストには、Dr.マンハッタンの名前がある。
 積極的に協力してくれるかは疑問だが、黄金の男を殺せるとしたら、
 マンハッタンくらいだろう。

 ロールシャッハは日記を綴る。

 悪を滅ぼすか、自分が滅ぶその日まで。
 彼が歩みを止めることはない。
 

【ロールシャッハ@ウォッチメン】
[状態]:健康
[装備]:ワイヤーガン、覆面
[道具]:基本支給品(七日分の食料入りホイポイカプセル)、日記
[思考]
基本:オンスロートを殺す
1:黄金の男は悪だ、殺す
2:マンハッタンを探す。オジマンディアスも一応探す。
[備考]
※参戦時期は原作開始前。
0135太陽と花 ◆Dbja0ebxMY 垢版2017/10/29(日) 19:17:27.28ID:7wS2oedQ
【キャラクター簡易解説】
『セントリー』
 本名:ボブ(ロバート)・レイノルズ。地上最強のヒーロー。マーベル屈指の強キャラ。
 マーベル版スーパーマンとでも言うべき、恐るべき戦闘力を持つヒーロー(?)。
 惑星の破壊程度の攻防力はもちろん。超光速飛行、死からの蘇生、宇宙飛行、
 無から有の創造、分子操作、100万個の太陽の爆発(要は超新星爆破)のエネルギー。
 ぱっと並べるだけでコレだけチートな能力を際限なく使える。はっきりいってデタラメに強い。
 ただし、強いのは戦闘力、身体能力だけであり、心は弱く精神疾患を患っている。
 さらに暗黒面として『ヴォイド』が内面に存在しており、
 こっちはもっとデタラメな強さを誇る。
 アベンジャーズに参加もしていたヒーローではあるが、結果的にヴィランに良い様に利用され、
 『シージ』という大型クロスオーバーにおいて事実上ラスボスとなってしまった。
 当ロワでは暗黒面『ヴォイド』がどう動くかにかかっているだろう。

『ロールシャッハ』
 本名:ウォルター・ジョセフ・コバックス。
 世界一カッコいい童貞覆面ヒーロー。ウォッチメンと言う作品の、一応ヒーロー。
 ウォッチメンはDCコミックスのアメコミだが、厳密にはスーパーマンたちのいる世界とは
 全く別世界の話であり、スーパーマンやバットマンとはかかわらない作品である。
 ……はずだったが最近『スーパーマンvsDr.マンハッタン』なる企画が進んでいるとかなんとか。
 ロールシャッハは同作の狂言回し役であり、中心人物の一人。
 なんの能力も持ってない鍛えた常人だが、その精神力はもはや神の粋にある。
 ハードボイルドヒーロー。悪人に対しては拷問や殺人は躊躇しない。
 特技は指折り。お前のようなヒーローがいるか。
0137理不尽な戦力差 ◆Dbja0ebxMY 垢版2017/10/29(日) 19:22:30.90ID:7wS2oedQ
「どういうことだ……これは」

 オンスロートとの邂逅以前。その最後に記憶しているのは、
 ジェラルド・ヴァルキリーなる滅却師の巨人に名乗られ、その返事を返したところ。
 日番谷冬獅郎は今、何処までも広がる荒野の中に、ぽつんと立っていた。

 全能の神、オンスロート。
 赤い甲冑を着込んだ怪物はそう言った。
 並々ならぬ威圧感。霊圧の類こそ感じなかったが、アレは間違いなく只者ではなかろう。
 霊圧を感じなかった――。……考えたくはないが、ヤツはかつて藍染が目指していたという、
 死神や虚を越えた存在。

「『超越者』なのか……?」

 すっと目を閉じ、綴られる名前に目を通す。
 黒崎一護、井上織姫、藍染惣右介、浦原喜助、更木剣八、ユーハバッハ。
 藍染やユーハバッハの名前があることに、日番谷はまず驚いた。
 本当に奴らがここにいるのだろうか? 霊圧を感知してみても、近場にやつらの反応はない。
 
 ――嘘か? 
 日番谷は考える。
 
 オンスロートなる怪物が、もし本当に藍染とユーハバッハを連れてきて、
 強制的に殺し合いに参加させているのならば、オンスロートの持つ力は
 両者を同時に敵に回してもなお上回るということか、
 あるいは敵に回しても問題ない自信があるということだ。
 浦原喜助、こいつがいることも恐ろしいことだ。
 涅マユリが唯一(本人は絶対認めないだろうが)恐れている、あるいは敵わない知恵者。
 そいつがまんまと連れてこられている、ということだ。
 最悪のパターンは、オンスロートはユーハバッハか藍染の協力者である可能性もあるか。
 
「くそっ、考えがまとまら――!」

 言葉を言い切る前に、日番谷は氷輪丸を抜き放った。
 背後、考えに夢中だったせいか、何者かの接近を許している。
 不覚をとったと舌打ちしながら、氷輪丸を振りかぶった。

「わ、わ! わわわあっ!!」

 氷輪丸の圧に押されて、どてん、と何者かはどんくさく倒れ込んだ。
 いたた、と尻をさするその相手は、日番谷の良く見知った女性だった。

「あー! やっぱり冬獅郎くん! 冬獅郎くんだよね!!」
「おまえは……、井上?」

 出会えた歓喜に目を大きくするその女性は、人間にして特異な力を持つ者。
 いつぞや世話になった人間の女性――井上織姫だった。
0138理不尽な戦力差 ◆Dbja0ebxMY 垢版2017/10/29(日) 19:22:51.78ID:7wS2oedQ
 ■


「やーよかったー! 冬獅郎くんいつもの死神の格好じゃなかったから!
 ひょっとすると他人の空似!? お兄さん!? って思って声かけづらくって」
「格好のことは言うな」

 日番谷の現在の格好は、聖十字騎士団のそれである。
 プライド的に、まさか敵にまんまと操られていた時に、
 無理やり着せられてたなどとは口が裂けても言えなかった。

 しかし、と日番谷は思う。
 どうやらあの名簿は、まんざら嘘ではないらしい。
 井上織姫は名前があった。そしてここにいる。自分もここにいる。
 となると藍染やユーハバッハがこの世界のどこかにいる可能性は俄然高いということだ。

「井上、おまえは――」 
「いやーそれにしてもびっくりしたなー。オンスロート……さん?
 神さまだから、様、かな……? にいきなり連れてこられたんだもん!
 ……ってそうだ黒崎くん!!」

 コロコロと表情を変えていく織姫は、思い出したようにその名を呼んだ。
 
「日番谷くんどうしよう! 黒崎くん、ユーハバッハに負けちゃったんだ!!」
「――!! なん……だと……!?」

 織姫は話し始めた。黒崎一護と自分は、ユーハバッハと戦っていたと。
 その中で、ユーハバッハの能力『全知全能』の真の力を見たと。
 黒崎一護の卍解、天鎖斬月も、六花による拒絶も、『全知全能』の前には通じなかったと。

「なんてことだ……!」

 未来を改変する力。日番谷の知る限り、それはどんな能力より強大な力ではないか。
 こちらがどんなに回避行動をとっても、奴の剣は「あたる」し、
 こちらがどんなに攻撃を当てようとしても、奴は「躱す」ことができるのだ。
 『全知全能』の名に恥じぬ恐ろしさだ。

「はやく、はやく黒崎くんを助けないと――!」
「落ち着け! 井上!!」

 焦り狂う織姫を、日番谷は一括した。
 びくりと身を震わせて静止する織姫を見て、言う。
0139理不尽な戦力差 ◆Dbja0ebxMY 垢版2017/10/29(日) 19:23:10.01ID:7wS2oedQ
「大丈夫だ。黒崎一護はそんなことで諦める奴じゃねぇだろ。
 あいつもこの世界のどっかにはいるんだ。つまり死んじゃいねぇ。
 それに、奴の能力を俺が知れたことは大きい」
「日番谷くん……!」

 織姫はくっと唇を噛んで、両の手で頬を張った。
 ぱちーんとはじける良い音がして、いつもの、太陽のような笑顔を見せた。

「そうだね! 黒崎くんも、浦原さんも、ちょっと怖いけど
 更木さんもいるんだもんね! 私も頑張らないと!」
 
 よーしやるぞーと意気をあげる織姫を見て、
 なんだか日番谷はなんだか気の抜ける思いだった。
 そして、背後の岩陰に視線をやる。

「ところで、そろそろ出てきたらどうだ?」

 織姫がほえ? と日番谷の視線を追う。
 その先の岩陰からぬうっ、と、長身の男が這い出てきた。
0140理不尽な戦力差 ◆Dbja0ebxMY 垢版2017/10/29(日) 19:23:33.39ID:7wS2oedQ
 ■


「何者だ、答えろ」

 氷輪丸をかざす日番谷を、その男は眼鏡の奥からじっと見ていた。
 紺色の、流れるような神父服。首から垂らすロザリオ。
 聖十字騎士団ではないだろう。いわゆる現世の聖職者か。と日番谷は思う。

 男はゆっくりと口を開いた。

「少年。私の名はアレクサンド・アンデルセン。神父だ。
 二人にひとつ、尋ねたい。……先ほどの話は本当か?」

 視線を落とすアンデルセン。日番谷は氷輪丸をいつでも解放できるように、
 万全の態勢で話に臨む。

「そうだ。俺は護廷十三隊十番隊隊長、日番谷冬獅郎。死神だ」
「私は――」
「死神ィ……?」

 陽炎のごとくゆらりと動くアンデルセンに、日番谷は強い目を向け続ける。
 アンデルセン。名簿にあった名前だ。
 織姫は神父と聞いてほっと安心したのだが、
 アンデルセンの雰囲気の変化に戸惑った。 

「だ、大丈夫だよ日番谷くん! 神父さまだって! 神父さま、私たちは――」
「まて! 井上!!」
 
 叫ぶや否や、日番谷は織姫の前にかけだし、そして氷輪丸をかざす。
 戦闘態勢に入っている日番谷に、織姫は焦った。

「ちょっ……! 日番谷くん!」
「血のにおいがするぜ」

 神父の口から「シィィッ」と吐息が漏れた。

「アンタ……、血の臭いがするぜ。それも二人や三人斬ったなんてもんじゃねぇ。
 何人も何年も斬り殺し続けて、血が取れなくなった、殺人者の臭いがな」

 神父――アレクサンド・アンデルセンは、日番谷のセリフを聞き終わると、
 どこからともなく二本のバヨネットを取り出した。
 そして、両腕を十字架を表すように大きく交差する。

「我らは神の代理人。神罰の地上代行者」

 ギギギギギギ、とアンデルセンは歯を噛み締める。

「我らが使命は我が神に逆らう愚者を――、その肉の一片までも絶滅すること」

 空気が張りつめる。

「AEMN」
0141理不尽な戦力差 ◆Dbja0ebxMY 垢版2017/10/29(日) 19:24:16.11ID:7wS2oedQ
 ■


 アンデルセンと日番谷が剣を撃ち合わせる。
 アンデルセンはバヨネットの二刀流。日番谷は氷輪丸の一刀。 
 弾き弾かれ、二人はその中心を円状に流れ、回る。

 アンデルセンは怒っていた。
 オンスロートにももちろんそうだが、目の前のこの少年にもだ。
 死神。死の神である。
 目の前の少年はあろうことか、自分のことを死神だと名乗った。
 普段なら、子供のいたずらなら、アンデルセンも拳骨の一つでも落として終わるところだ。
 だが、先の話。「ユーハバッハ」、「全知全能」、「聖十字騎士団」。

 それはすべて、アンデルセンには神への侮辱に他ならなかった。
 異教の神、違う神を語るなら、ただの異教徒の類で終わりだ。
 だが、よりにもよって、Y−H−V−H<ユーハバッハ>だと……。

「シィィィィィッ!!!」

 何合かの撃ちあいの果てに距離が開く。
 この子供は、子供ながら長剣を使いこなしている。 
 身体能力も恐るべきものがある。その辺の吸血鬼よりよっぽど強く、速い。

 その子供――日番谷冬獅郎は、恐るべきことを口走った。
0142理不尽な戦力差 ◆Dbja0ebxMY 垢版2017/10/29(日) 19:24:29.22ID:7wS2oedQ
「弱いな、アンタ」
「!?」

 アンデルセンは驚愕する。
 日番谷は肩透かしだったとでも言いたげな表情だった。

「この俺が……、弱いだと」
「弱いね、力も速さも大したことねぇ」
「オオォォォオオオォオオ!!!」

 アンデルセンが渾身を力で斬りかかる。
 日番谷は落ち着いた様子で一息つき、

「――――!!」

 アンデルセンを体ごと、あっさりと斬り捨てた。
 

 左肩から右わきまで袈裟切りされたアンデルセンは、糸の切れる様にばたりと倒れる。
 その様子をみて、日番谷は氷輪丸をおさめた。

「日番谷くん! 殺してー……」
「ねぇよ。殺すまでもねぇ」

 駆け寄った織姫に視線と答えを投げる。
 アンデルセンに背を向けて、日番谷は立ち去ろうとした。

「あ、えとー」

 織姫がおろおろしていると、背後でゆらり、と音もなくアンデルセンが立ち上がる。
 アンデルセンは「再生者」。この程度の傷は難なくふさがり、元通りである。
 再びバヨネットを構え、攻撃の為に二人を視線に収めた。

「やっぱ、なんかあったか」
「!?」

 その瞬間、背後から日番谷の声が聞こえた。 
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