「ターゲットの死亡を確認しました」
 そこはどこかの暴力団組所だった。
 トラの毛皮のカーペットやら日本刀、戦国時代に武者が着用していたであろう甲冑と悪趣味この上ないインテリアが揃っていた。
 極めつけは「大日本帝国万歳!!」と部屋の中心に飾られていた。
 そこには、その部屋と同じぐらい悪趣味なスーツを着込んだ男が二人応接セットに向かい合って座っていた。
 一人はスマートフォンを小さな耳に押し付けていた。通話中のようだ。
 「そうか、ごくろうさんだったなぁ。奴にも刑務所のなかで不自由せんように世話してやってくれ」
 それだけ言うと男は通話を切り胸ポケットにスマートフォンをしまった。
 「しかし、世の中わからんもんやなぁ。あの生真面目な女が金、持ち逃げするなんてなあ」
 もう一人が通話が終わったのを見計らって声を掛けた。
 「おまえ、ずいぶんあいつに入れ込んでたのになあ」
 「まあ、女なんてみんな本性は腐ってるんや。だまされた俺があほやったゆうことやな」
 違えねえ、というと二人はそれぞれ煙草に火をつけた。

★ ★ ★

 手枕京香は焼付くような痛みの中、不思議なほどの幸福感で満たされていた。
 確かに京香は痛いのは嫌いだった。だから本来ならばこんな死に方は望みのものではなかった。
 だが、愛する者の手によってもたらされる死ならば本望だった。
 傷口から血があふれる。最早、助からない。
 京香は最期の力を振り絞り、男の体を抱きしめた。
 愛する者から送られてきた刺客ならば、それは本人も同然だった。
 薄れていく意識の中、戸惑いの表情を浮かべる男を視界に収め満ち足りた気持ちで京香の意識は闇へと溶けた。

初心者でございます。批評を何卒よろしくお願いします。