あるところに、「祈りの泉」といわれる場所があった。
 その泉へ行くと泉の精が出てきて願いを一つだけ叶えてくれるという。ただ、代わりに一年間泉の精の元で働かなければならなかった。それでも、泉の力を欲する者は多かった。
 そこへ、強欲で有名な男がやってきた。
 すると泉の精が現れた。
「あなたの願いは何ですか」
 男は答えた。
「俺には欲しい物が沢山ある。願い事を叶える回数を百回に増やしてくれ」
 泉の精は言った。
「いいですよ」
 彼は嫌々ながらも働いた。やがて一年が過ぎた。
「一年経った。もういいだろう」
 泉の精は言った。
「いいえ。まだ九十九年残っています」