うちのコタツには、小さな猫が住んでいる。
いや、猫と言うにはふてぶてしいかもしれない。俺の部屋のコタツにもぐりこんで、面積を半分にしてくれているのだから。
おかげで、小説を読んでいる俺は足を伸ばせない。何かにあたったら大変だ。

「色無」

その“小さな猫”は、片手にゲーム機を持ちながら俺を呼ぶ。
コタツが敷かれてから、何度聞いたか覚えていない。それ位、聞く頻度が増えた声だ。
……といっても、彼女が呼ぶのはたいていがミカンか、ジュースか、遊び相手か、そんなもの。
だから俺は、近くにある蜜柑入りの籠を彼女へと向けて押し出す。
きっと今回はこれだろう。今は本を読むのに忙しいんだ、後にしてくれ。

「……」

ふと視線を感じると、“小さな猫”はゲーム機のポーズを押してないまま、こちらを睨んでいる。
どうやら不機嫌なようだ。蜜柑じゃなかったか?
とりあえず冷蔵庫からジュースを……

「ミカンでも、ジュースでもないよ。色無」

先に心を読まれてしまった。となると、遊び相手くらいしかないけれど、あのゲームは一人用だ。
いったい何を、と思っていると、“小さな猫”はコタツへともぐりこみ、そして俺の方へと……ってちょっと!?

「ぷはぁっ。これこれ、やっぱりわたしのていいちだね」
「お、おいこら」
「いいじゃんいいじゃん、椅子になってよ」

“小さな猫”は座っていた俺の足に座り、またゲームを再開する。
こうなっては意地でも動かなさそうだ。これじゃ本も読めやしない。

俺は読んでいた本に栞を挟んで閉じ、“小さな猫”のゲーム機の画面を一緒に見続けることにした。
どうせ後で“大きな黒猫”が来る。それまでの間だと思いながら