>>830
あざます!投下します


不要な乗り換えを迫られた俺は、予定よりも少し遅れて上野駅へ到着した。
シンシンはラウママ達とヤケ笹だと聞いたが、もう帰っているだろうか。シャンシャンは、眠っているだろうか。
結局、永明さんの台本は暗記できなかった。俺は園までの十分少々の道のりを、だらりだらりと二十分かけて歩いた。

こそこそと門を通り過ぎようとした、その時。

「遅かったな」
「わっ!」

ヒトのオスの同僚が、仁王立ちで俺を待ち構えていた。彼の眼鏡に月明かりが映って、その表情を見えにくくしている。

「ま、まだ居たの?遅くまでお疲れさん」
「ああ、疲れたよ。誰かさんの無許可の留守を誤魔化し続けてね」
「ううっ!」
「…まあいい、晩飯まだだろ。これから珍々軒に飯食いに行くぞ」
「あ、待ってくれ。あの店カード使えないだろ、今ちょっと現金の持ち合わせが…」
「そのくらい奢るさ、俺が誘ってるんだし。それに…」
「?」
「シャンシャン、今夜は小雅の家にお泊まりなんだ。小雅の母親に挨拶しておきたい」

そう言いながら、ヒトの同僚は俺に木箱のような物を手渡してきた。
それは鶴の紋付きの風呂敷に包まれた、恩賜上野動物園謹製パンダ団子の重箱だった。