ステルス機を出してやるという永明さんのご厚意を丁重に断って、俺は民間機で羽田へ戻ってきた。
ここから京急か、モノレールか。時間も金額も大差はない。どちらを使って上野へ帰ろうか。

「そう言えばシャンシャン、園内のモノレールに乗せてやった時は大喜びだったな」

俺の娘は、高いところが好きだ。俺に似ている。こっちのモノレールに乗せたら、大興奮して大変な事になるだろう。
今度の休園日に乗せてやるか。レインボーブリッジが見えてきたら、きっと「あれに登るー!」と駄々をこねるに違いない。
俺の娘は、駄々をこねるとピョンピョンと跳ねて転げ回る。あれは誰に似たのか。俺に上手く鎮められるだろうか。

「その前に鎮めなきゃいけないのが…」

俺の妻、シンシンの怒りだ。
永明さんの咄嗟の機転で、俺はイルカちゃん達のご機嫌取りを頼まれて出張していた事になっている。

“しかしなぁリー坊。シンコちゃんの事や、こんな言い訳は見え見えや。そこでやな―”

俺はモノレールに乗り込んで、永明さんが書いてくれたメモを広げた。