当然のことながら、一度出港してしまえば海の上で孤立無援。南極という極地での航海には大きな困難が伴い、上官の命令に逆らうことも許されません。
そればかりか娯楽は限られ、食事のメニューすら自由に選ぶことは不可能。
しかも南極滞在期間も含めると、往復で約5ヶ月。どう考えても過酷な環境なのです。

にもかかわらず、なぜ著者はそんな南極行動を2度も乗り切ることができたのでしょうか? 
それは「しらせ」に、キツい仕事に潰されないためのさまざまな知恵が蓄えられていたから。
具体的には、「いかに手を抜くか」「いかに上司や同僚とつきあうか」「いかに楽しむか」などの考え方が重要な意味を持っていたというのです。

それらは、ビジネスパーソンの日常にも応用できるものばかり。
そこで本書において著者は、「しらせ」で学んだ知恵をまとめているわけです。
きょうはそのなかから、第1章「5ヶ月間閉じ込められて学んだ『ストレス』に負けないルール」をご紹介したいと思います。

■ 自分だけの逃げ場を確保する

毎年1回、日本と南極との間を約5カ月かけて往復するということは、乗務員は約5カ月間、艦のなかに閉じ込められるということでもあります。
往路と復路で1回ずつ、物資を補給するためにオーストラリアに入港する以外はずっと海の上で、逃げも隠れもできないわけです。

しかも豪華客船の優雅なクルーズとは違い、乗務員たちは過酷な仕事を強いられます。
波にあおられれば揺れ、食事も好きなタイミングで摂れるわけではなく…。
そんな状態が5カ月も続けば、ストレスがたまったとしても無理はありません。

しかし、そんな環境下にも、仕事から逃れ、心安らかになれる場所がひとつだけあったのだそうです。
それはベッド。「しらせ」では乗務員に個室が与えられているわけではないので、ベッドが唯一のプライベート空間だというのです。
とはいえそれはホテルや病院にあるようなベッドではなく、昔のブルートレインの寝台のような、カーテンで仕切られる寝台。
しかしそんな場所があることに、かなり助けられたのだと著者は記しています。