1000キロで5000円? 走行税の実態は

自動車で走った距離に応じて税金が課される「走行税」。政府・与党は、自動車の税金の抜本的な見直しを
検討する方針で、その1つの案として去年の末に急浮上してきた。しかし、日常的に車を使っている人たちからは、
早くも懸念の声が相次いでいる。いったい走行税とはどんな税なのか。すでに制度を導入している国があると聞き、
現地に入って実態を取材した。(経済部記者 影圭太)

走行税の導入国は…

日本から飛行機で約11時間。空港に降り立つと、季節は日本と真逆の秋へと変わっていた。向かったのは、
南半球の島国・ニュージーランドだ。500万人近い人口より羊のほうが多いことで有名なこの国だが、自動車の数も多い。

世界に先駆けて走行税を導入しているこの国に、世界の道路料金システムを調べる道路新産業開発機構の中村徹さんが
調査に入ると聞いて、制度の実態を取材するため同行することにした。

1000キロ=5000円〜

まず課税の仕組みを調べるため、私たちは最大の都市、オークランドにある観光ツアー会社を訪れた。
この会社では11台の小型バスなどに走行税が課税されている。

社長が税金を納めるために向かったのは、ガソリンスタンドに併設された車検場のような場所だった。

ここで1台1台、走行する距離を1000キロ単位で事前に申請し、距離に応じた税金を納める仕組みだ。
申請した分より走行距離が伸びると、そのつど支払い直す必要がある。

気になる金額は車種ごとに細かく決められていて(分類は約90種類に及ぶ)、最低でも1000キロ当たり68NZドル、
日本円にして約5000円だ。

この会社では、1台当たり平均で年間約30万円が課税されていると言う。現場を見た中村調査員は「少し金額の負担が
重い気がする。支払いの手間もかかるのではないか」と指摘した。

税金を納付すると、それを証明するステッカーがその場で発行される。そこには、金額に応じた走行可能な距離が
書かれていて、ドライバーは車のフロントガラスに貼り付けて走っている。

自動車大変革で急浮上

日本で走行税が浮上したのは、100年に1度と言われる自動車を取り巻く環境の大変革が関係する。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190412/K10011881941_1904121607_1904121623_01_09.jpg

今の自動車の税金は、「使用する燃料」や「車の保有」を基準に課税されているが、電気自動車やハイブリッド車の
普及で今後燃料の使用は減り、カーシェアの普及で車を持つ人も減少すると予想されている。

このままでは、自動車の税収が急速に落ち込むとみられるため、政府・与党としては、時代の変化に合わせた新たな
課税の基準が必要になってきた、という訳だ。税収が落ち込めば、今後、道路や橋といったインフラの補修も
ままならなくなると危機感もある。

今後の税制のすべてをつかさどる与党の「税制改正大綱」には、自動車に関連する税を中長期的な視点から見直す
検討に入ることが初めて明記され、具体案の1つとして走行距離に応じて課される税が浮上したのだ。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190412/k10011881941000.html