かつて阪神電鉄の株を買い占めた村上ファンドは、当初は阪急電鉄やJR西日本
と競争している京阪電気鉄道と阪神電気鉄道を統合させる思惑があり、阪神電
気鉄道もかつて京阪電気鉄道との統合を検討したことがあったことから、同社
との株式買取の交渉を行った。当時の京阪電鉄の佐藤茂雄社長と阪神電鉄の縄
田和良専務は、村上ファンドが阪神株を購入し始める半年前から密かに接触、
交渉をしていたと言う。
しかし、村上ファンドの希望する買い取り価格が高いため合意できず、暗礁に
乗り上げ、事実上阪神と京阪との統合計画は、失敗する。その後は、阪急と阪
神が経営統合に至ったのは言うまでも無い。

しかし、最近になり京阪電鉄の佐藤茂雄CEOは、経済の地盤沈下に歯止めが
かからない関西での生き残りをかけて近鉄との経営統合をにらんだ交渉を
水面下で始めたようだ。近鉄は、不振がつづく近鉄百貨店や近畿日本ツー
リストなどのグループ企業のリストラを続けているものの、減り続ける収入で
50を超えるグループ企業を支えるのは厳しい状況。

一方京阪電鉄は近鉄に 比べて路線数も少なく、傘下のグループ会社も少ない為
近鉄よりも財務内容は優れている。 しかし関西の交通市場の減少は、年率で
3〜4%も減っており、何れにせよ関西の鉄道会社の将来は暗い。おまけに近
鉄の進まないグループ企業の再建再編にメインバンクの三菱東京UFJ銀行がシビ
レを切らし始めており、銀行主導でも京阪電鉄と近鉄の経営統合が動き始めていると言う。

何れにせよ京阪電鉄の佐藤CEOは、「関西鉄道業界の中では唯一の再編論者」と
言われており、阪神・阪急合併につぐ関西私鉄の大型再編が迫っているようだ。
(雑誌:選択 2011年2月号 P77より)