◎一般向けの書籍や報道が過度な励ましに
第2に、一般の方向けの書籍や報道では、今回のように世の中でうまくいっている方が紹介されやすい。
それは悩んでおられる方の励みになるかもしれないが、一方で「頑張ればできる」という過度の励ましにつながりやすい。
生まれながらのASDあるいはADHD傾向には強弱があるため、本来、それぞれの方に合った治療や対応を考えればよいはずである。
「診断されるか、されないか」という2分法を重視しすぎない方がよいように思う。。

ーー略ーー
◎診断が収益性に左右される?
第3に、製薬企業、出版社、精神科医療機関の収益性に関する部分も気になる。
「ADHDの薬が出てからADHDと診断される人が増えたが、意義に乏しい薬物療法が多い」とか「ASDとADHDの合併は認められていなかったが、
新しい診断基準で合併を認めたので、ADHDの治療薬の売り上げが伸びた」などという噂話を聞くと、製薬企業が求める収益性によって診断が左右されているのではないかと心配になる。

書籍も「発達障害」を特集すると売り上げが伸びるという話がある。
さらに、すでに述べたような良い事例ばかりが提供されることは、不適切な啓発になりかねない。
医療機関でも医療として何ができるかを慎重に検討し、過度に「医療化」しない配慮が必要であろう。
うつ病やうつ状態に対する過度の医療化や薬物療法重視が以前から問題になっているが、大人の発達障害も第2のうつ病になり得る。

◎大人の発達障害は慎重に検討すべき
「大人の発達障害」というと、最近になって医学が見いだした新しい疾患であるかのように言われるが、まだまだ議論は未熟だ。
透明性を保ち、医療だけでなく多くの関連領域の専門家が率直に意見を言える場が求められる。