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297 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2018/03/04(日) 23:16:37.53 ID:nPJP0eGR
715 名前:世界@名無史さん[] 投稿日:2010/01/08(金) 00:57:54 0
私の敵はどこにいるの?
君の敵はそれです。君の敵はあれです。君の敵は間違いなくこれです。
ぼくら皆の敵はあなたの敵でもあるのです。
ああ、その答えのさわやかさ、明快さ。あなたはまだ判らないのですか?
あなたはまだ本当の生活者じゃない。あなたは見れども見えずの口ですよ。
あるいはそうかもしれない。
敵は……敵は昔のように鎧かぶとで一騎躍り出てくるものじゃない。
現代では、計算尺や高等数学やデータを駆使して算出されるものなのです。
でも、なんだかその敵は私を奮い立たせない。
組み付いたらまた只のオトリだったりして、味方だったりして…そんな心配が。
なまけもの、なまけもの、なまけもの。
君は生涯敵に会えない。君は生涯生きることが無い。
いいえ、私は探しているの。私の敵を。
敵は探すものじゃない。ひしひしと僕等を取り囲んでいる者。
いいえ、私は待っているの。私の敵を。
敵は待つものじゃない。日々に僕等を侵す者。
いいえ、邂逅の瞬間がある!
私の爪も歯も耳も手足も髪も逆立って、敵!と叫ぶことの出来る、
私の敵! と叫ぶことの出来る、ひとつの出会いがきっとある。
茨木のり子「敵について」