密着取材最終日
今朝は浅木に指定されたある場所へ向かっている。
毎朝ファクトリー周辺を散歩し、公園で五目並べをした後パチンコを打つのが浅木の日課となっている。
浅木に密着し彼の行動を知るにつれ、HRDさくらの頂点に君臨するとはにわかに信じられない。
そんな浅木が陣頭するパワーユニットは遠い彼方のバルセロナで順調な滑り出しをみせている。
パワーは既に目標値995PSを達成し、信頼性も申し分ない。
そして何より、さくらスタッフはみな笑顔に満ち溢れている。
これまで周囲と隔絶し、開かれることのなかったファクトリーも
浅木就任後、7割近く一般公開しているという。
子育て中のママ、お年寄り、喜連川小学校の児童生徒など、出入り自由となり
地域にひらかれた「さくらひろば」といっても差し支えない。
しかしながら、高度なセキュリティが求められる研究所を
ここまで公開することについて疑問を抱かざるをえない。
― 「水をさすようで恐縮ですがホンダの技術開発の中枢をここまで公開して大丈夫なのでしょうか。」
「いいか、これから君にまじないをかける。」
「私の手のひらを見つめなさい。3つ数えると君はある言葉が話せなくなる。1,2,3!」
「さぁ、”あわれみ”と言ってみなさい」
― 「あわれみ、あわれみ、言えますけど。」
「”お”を付けて、あわれみと言ってごらんなさい」
― 「おあられみ?おあ、おらられみ・・あれ、あれれ、浅木さん。。。」
「ほらなぁ。」