土木学会は6月7日、南海トラフ巨大地震や首都直下地震が発生した際の経済被害推計を発表した。それによると、
南海トラフ巨大地震では地震後20年にわたる経済的被害が最大1410兆円にのぼり、首都直下地震では778兆円となる。
前者は今年度の国家予算97.7兆円の約14倍にあたる途方もない数字であり、“国難”レベルの大災害になると学会は警告しているのだ。
これは文字通りの「日本が死ぬ」レベルといえるが、それでも、まだ推計に“甘さ”が残っているのではないかという疑問が拭えない。
今回は、土木学会による試算の妥当性についてしっかり検討してみたい。

■どの被害推計も甘すぎる! 地震をナメるな!

 今回の報告書では、南海トラフ巨大地震の発生後、経済がほぼ回復すると思しき20年後までに失われる建物や個人資産は約170兆円、
さらにインフラの損壊などによる経済活動の低迷で、約1240兆円の損失が見込まれるという。

 同様の被害推計は、2013年に内閣府も公表しており、南海トラフ地震については地震や津波による建物の被害を最大約170兆円、
首都直下地震では約47兆円と見積もっていた。しかし、土木学会のように20年という長期間にわたり経済活動に与える影響までは考慮していなかったようだ。
1995年に発生した阪神・淡路大震災の被害総額は、兵庫県だけで約10兆円にのぼったが、
今回の推計と比較すれば、いかに甚大な災害が待ち受けているか如実に伝わるだろう。

 しかし、それでも本当にこれが最悪の被害想定なのかという疑問が残る。土木学会であれば、建物の倒壊などによる被害の想定はお手の
ものかもしれない。しかし、津波などを含めた“真に総合的”な被害推定になっているのだろうか? たとえば、岡山市を縦横無尽に走る
用水路は、総延長約4千kmという長大なものだが、岡山大学のシミュレーションによると、これが津波発
生時には海水の遡上によって被害を増幅させる危険性が高いという。このような被害については、内閣府や土木学会の想定に含まれていないと思われる。


■現在の被害推計は原発事故をまったく考慮していない!

 こうした“考慮漏れ”や“想定外”の事態は、もっと多岐にわたって存在するのではないか。その極めつけは、何といっても「原発事故」だろう。

http://tocana.jp/2018/06/post_17313_entry_2.html