週刊新潮 2017年7月20日号
▼ゆとり教育より恐ろしい2020年「大学入試改革」   精神科医 和田秀樹
http://www.shinchosha.co.jp/shukanshincho/backnumber/20170712/
 だが、私はいま、この改革によって、日本が滅びることになりかねないと危惧している。
 この入試改革の前提には、日本人には自分で考える力がない、プレゼンテーション能力が低い、という問題意識がある
ようだ。しかし、実は諸外国も初等中等教育に関しては、1980〜90年代の日本を見習い、基礎学力を高める方針をとって
いる。初等中等教育では十分な知識を習得し、レポートを書いたりプレゼンしたりする能力は大学や大学院で身につける。
覚えた知識を疑ったり応用したりする教育は、基礎学力を身につけたのちに大学以降で行う。それが諸外国の基本的な
トレンドなのだ。
    ・・・(略)・・・
 さらに言えば、教育再生実行会議は安倍晋三総理の私的諮問機関だ。提言された改革は、プレゼン能力で成功者になった
安倍総理の、ペーパーテスト学力へのルサンチマンが反映しているのではないか。また、発足当時の文科大臣、下村博文氏
は塾業界の代表。特殊な対策が必要なように入試を改めたかったのではないか、という疑念も湧く。事実、18歳の子供に
とって、小論文や面接はトレーニング次第なのだ。両者の利害が一致した――。そんなふうに思えてならない。
    ・・・(略)・・・
 このような改革が行われる背景の一つに、教授の半数に現場経験があった東京教育大学が、1978年につぶされたことが
ある。その結果、教育の世界のブレーンは東大が独占したが、東大教育学部には現場経験がある教授はいない。
《続く》