日曜の高速道路で大惨事が起きた。
中央自動車道の笹子トンネル(山梨県)で大規模な崩落が発生し、車が次々と下敷きになった。車両火災も
引き起こした。
厚さ8センチほどのコンクリート製の天井板が突然、110メートルにわたって崩れ落ちたという。下敷き
になった車内からは、複数の遺体が見つかった。自力で逃げ出した人たちも、やけどなどを負った。
「雪崩のように崩れてきた」と語る人もいた。トンネル事故の恐ろしさに慄然とする。
何人かがトンネル内に取り残されている可能性もある。警察と消防は二次災害に留意しつつ、救出に全力を
挙げてもらいたい。
中央道は、東名高速と並び、首都圏と関西圏を結ぶ大動脈だ。全長4・7キロの笹子トンネルは1977年
に開通した。
管理する中日本高速道路が9月に目視などの点検を行ったが、換気装置として、トンネル上部からつり下げ
られている天井板に異常は見つからなかったという。
経年劣化はなかったのか。警察と国土交通省は崩落原因を徹底的に解明する必要がある。保守・点検のあり
方の検証も不可欠だ。
同じ構造のトンネルは全国の高速道路に10か所以上ある。点検を急がねばならない。
20人が犠牲になった96年の北海道・豊浜トンネル崩落事故を契機に、全国のトンネルの一斉点検が行わ
れた。その教訓は生かされなかったのだろうか。
高度経済成長期の70年代以降、社会資本整備のための公共事業費が急増した。
この時代に造られた高速道路などの建造物は現在、老朽化が目立ち、危険性が指摘されている。耐用年数を
迎えているコンクリートの劣化は深刻だ。
国交省によると、高速道路だけでも、補修を要するトンネルや高架橋などの損傷が、2011年に約55万
5000か所で確認された。05年の約4万7000か所に比べ10倍以上にも増えている。
大地震に備える防災上の観点からも、まずは老朽建造物の総点検が急務である。
厳しい財政事情の中、公共事業費の削減を求める声は根強い。確かに、野放図な投資は抑制する必要がある
だろう。
だが、危険な建造物を放置すれば、国民生活の安全が脅かされる。老朽施設の改修には、優先的に予算を投
じるべきだ。
衆院選後の新政権が取り組むべき重要な課題である。
(2012年12月3日01時30分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20121202-OYT1T00995.htm