▽民主党が衆参両院に内閣不信任決議案と首相問責決議案を提出したのは、
都議選に大勝した勢いに乗り、早期の衆院解散・総選挙に追い込むほかに、
今後の法案審議を拒否する狙いもあるのだろう。民主党には、アキレス腱ともいえる
鳩山由紀夫代表の政治献金問題を沈静化させたい思惑も透けて見える。
▽参院での問責決議案可決に伴う審議拒否で、北朝鮮に出入りする船舶を検査する
貨物検査特別措置法案は廃案に追い込まれる。国連安全保障理事会の決議を受けた法案は、
北朝鮮に圧力をかけ、国際社会との連携を示すためにも早期成立が求められている。
「次期与党」を目指す民主党がそんな重要法案をあっさりと廃案にするのは無責任ではないか。
▽鳩山由紀夫代表は、もともと「国連安保理が全会一致で採択した決議は尊重されるべきだ」と語り、
与党との協議に応じる姿勢を示していたはずである。臓器移植法改正案の採決を
急いで成立させておきながら、貨物検査特別措置法案については、「廃案やむなし」の
冷淡な態度なのは、面倒なことに手を出さず、先送りしたいというのが本音だからだろう。
▽貨物検査特別措置法案は、海上自衛隊の活動を可能にしているため、
社民党が難色を示していた。党内の左派勢力にも反対の声があったといわれる。
選挙後の連立政権をにらんで、野党共闘にヒビが入るのを避け、党内の不協和音を
封じ込めようとしたのだとすれば、先が思いやられる。
▽民主党を中心とした政権ができたとき、外交・安全保障政策はどう変わるのか。
米国との関係が悪化したり、北朝鮮への「圧力」が緩むことはないのか、
不安に思う国民は少なくない。国家の根幹にかかわる部分をあいまいに捨て置いて、
子ども手当の創設や高速道路無料化など、口当たりのいい新規事業を並べるだけで、
国民の目をごまかしきれるとは思えない。
▽民主党は国民に対して、外交・安全保障に関する明確なメッセージを送るためにも
貨物検査特別措置法案の可決に積極的に協力すべきだ。
その方が百の抽象論を並べ立てるよりずっと説得力がある。
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http://www.hokkoku.co.jp/_syasetu/syasetu.htm