ツンと刺すような異臭…「猫屋敷」で21匹死ぬ

2018年09月16日 12時41分

奈良県生駒市の民家で今年1月、動物感染症により21匹の猫が死んで、市が焼却処分をしていたことがわかった。
長年、約50匹の野良猫を飼っていた民家の住人は「多頭飼育崩壊」状態で、家は「猫屋敷」と化していた。
社会問題化するこの現象を防ぐことはできなかったのか――。

市などによると、1月12日、住人女性(69)が動物愛護団体へ通報したことで発覚し、家の布団や玄関から9匹の猫の死骸が相次いで発見された。
その後10日余りで12匹の死骸が見つかった。多頭飼育のきっかけは、数年前、1匹の猫が子猫を5匹連れ、女性宅に入ってきたことだ。
餌を与えるうちにすみつき、繁殖を始めたという。

猫は、年に3回繁殖期があり、一度で4、5匹は増える。いつしか約50匹まで増え、家のこたつの中や風呂場は猫であふれた。

排せつ物のにおいが周辺に漂い始め、次第に住人女性は近隣から孤立。耐えかねた地域住民は昨年6月、市に対応を求めた。

市は何度も改善を求め、動物愛護団体と連携して不妊・去勢手術に取り組んだ。しかし、約50匹のうち、昨年末までに手術を終えたのはたったの5匹。
大量の猫を収容して手術するには施設がなく、処置が遅れ、感染症が広がった。

市は感染がほかの猫へ広がるのを防ぐため、1月に死骸の焼却処分を決めた。
生き残った猫を診察した獣医師によると、消化器官に異常を起こす感染症と診断した。

女性宅を訪れた動物愛護団体「なら地域ねこの会」代表の林映子さん(73)は「家の中はツンと刺すような異臭が漂っていた。
もう少し早く対応できていたら、こんなに多くが死ななかったのに……」と悔やんだ。

https://www.yomiuri.co.jp/national/20180916-OYT1T50038.html