名医で知られる病院は「悪夢のようだった」「この先生なら何とかしてくれるかも」――。

 東京都内に住む田村京子さんは藁にもすがる思いで、ある動物病院に愛猫の
プー君を連れて行った。プー君は下痢を端緒に日に日に体調を悪化させていた
が、地元やネットで調べた複数の病院をはしごしても原因は不明。処方される
下痢止めを飲ませても、病状は悪化の一途を辿っていた。
■ 診察室に名医はいなかった

 途方に暮れて駆け込んだのが、名医がいることで知られる都内の超有名病院
だった。自宅からタクシーで30分。到着後も診察まで2時間待った。超有名病院
だけに訪れる飼い主が多い上、事前予約を受け付けていなかった。

 ただでさえ弱っているプー君に狭いキャリーバッグでつらい思いをさせて
しまい、田村さんは身を切られる気持ちだった。だが「元気にしてあげたい」
「少なくとも原因だけは明らかにしたい」という一念で待った。
ところが田村さんにとってその病院での経験は、悪夢のようなものだった。
診察室に入ると、名医はいなかった。「忙しいので特別な人しか診ない」と言
われたのだ。弟子と思しき獣医は問診・触診もそこそこにプー君の採血をしよ
うとした。猫は基本的に病院では極度に緊張しているもの。猫扱いの上手い獣
医なら優しく声をかけ、時間もかけて落ち着かせてから診察に臨む。さもな
ければ猫がふとした拍子に怒り、診察ができなくなったり、猫や獣医がケガを
したりという結果になるからだ。
案の定、プー君も「シャーッ」と威嚇の声を上げて強く抵抗。弱った体の力を
振り絞って狂ったように暴れるプー君を、獣医と動物看護師は全身で押さえ込
み、採血を決行した。その際にプー君は小さなけがをしてしまった。だがその