岐阜2014年10月5日
純血種を守れ 「美濃柴犬」保存に課題

県内で古くから飼われている「美濃柴犬」の保存に、美濃柴犬保存会(岐阜市)が頭を悩ませている。
純血種を守ろうと、自然交配とともに、岐阜大の協力で人工授精の試みも始めているが、課題も多く、成果を上げるまでには時間がかかりそうだ。

シバイヌはかつて地域ごとに固有の犬種がいて、信州柴犬などが知られている。美濃柴犬もその一種で、成犬は体長四〇センチ程度。
独特の赤褐色の毛が特徴で、狩猟犬などとして飼育されてきたが戦時中に個体数が減った。

美濃柴犬保存会では現在九十匹ほどを登録し、小森博代表理事(80)が美濃柴犬の里(山県市)で交配させているが、
年間に生まれる子犬は約十匹とここ十年は横ばいの状況が続く。

会員七十五人のほとんどが自宅で一匹のみを飼育。
高齢の人が多く、住所も県内外に散らばることから、発情期を迎えたペアを持ち寄って交配させるのに苦労している。
かつては犬繁殖の専門業者に協力を求めたこともあったが、「手違いで別の犬と掛け合わせてしまった」経験から、現在は小森さん一人で引き受けている。

今年は七〜八月に、自然交配で九匹の子犬が誕生した。
しかし、発情期を迎えたペアを顔合わせさせても、相性などから雄を寄せ付けない雌もいて、繁殖は綱渡りなのが現状だ。

この状況を打開するため、昨年四月からは岐阜大の村瀬哲磨教授(臨床繁殖学)に協力を求め、人工授精に取り組み始めた。
雌を岐阜大に持ち込んで細胞を検査。受精に最適な日を見極めて、雄から採取した精子を注入する。
ただ、これまで数回挑戦したがまだ成功例はなく、「犬が経験のないことで怖がってしまうのかな」と小森さん。

村瀬教授は「犬の発情のタイミングを記録することも必要。情報があれば次の発情がいつくるのか予測が立てやすい」と話し、
今後もデータを積み重ねて挑戦を続ける予定。小森さんは「美濃柴犬を後世に残していくため、できることは取り入れたい」と話している。
(磯部旭弘)