http://mainichi.jp/select/news/20151130k0000e040146000c.html

 かつて9割超の子供にあった虫歯が激減している。この20年余で1人当たりの本数は4分の1になった。
就寝前の歯磨き習慣や、フッ素を使ったうがいなどの予防策の浸透が背景にあるとみられる。
一方で歯科医の数が増え続け、需要と供給のギャップは増すばかりだ。業界の将来をにらみ、
国は高齢者を重視した診療報酬のあり方や、歯学部の入学定員について方向性を示そうと検討を始めている。【飯田憲】

 「よく磨けているね」。今年4月、横浜市旭区の市立中尾小であった歯科検診。
学校歯科医の江口康久万(やすくま)さん(56)が児童に声をかけた。
同小は、全校児童の95%に虫歯が一本もない学校として、昨年表彰を受けた。
給食後の全校一斉の「歯磨きタイム」などで虫歯予防に取り組む。教壇にも立つ江口さんは
保護者の意識の高まりを感じるといい「歯の健康を保つことは正しい生活習慣にもつながる」と話す。

 子供の虫歯は大幅に減っている。文部科学省の調査によると、12歳児の1人平均の虫歯本数は、
1989年の4.30本から、2013年には1.05本に減少した。虫歯のある子供の割合も
90%超から半分以下の40%台になった。歯磨き粉の市場規模も拡大傾向で、
大手メーカー「ライオン」の広報担当者は「昔と違い比較的価格の高い商品が売れ筋。虫歯対策だけでなく、
歯の美白や口臭予防など消費者のニーズは広がっている」と指摘する。

 一方、歯科医は増加の一途だ。歯科医不足が叫ばれ、国の方針で大学の歯学部を増やした結果、
60年代に3万人台だった歯科医は現在10万人余に。歯科診療所も13年には約6万8000カ所に達し、
コンビニエンスストアの店舗数を超える。過当競争で年間約1400の診療所が廃業するなど環境は厳しい。

 国は、業界を取り巻くこうした現状を問題視。現在は診療所の受診患者の3人に1人を65歳以上が占めることから、
高齢者に対する訪問医療の診療報酬アップや補助金などによる支援強化、
歯学部の入学定員や歯科医養成のあり方の見直しなどについて検討を始めている。