洗脳されると正しい意見も邪見に見えるらしい。
前立腺がんの場合、手術は好ましくない。しかし、そう言うと、「なかなか言い出せま
せん。
断ると先生の機嫌を害し、次の治療が受けられないので…」と困った表情になるが、
私は
「それでも断るべきです」と続ける。そうしないと、寿命を縮めかねないからだ。

 がんだからといってなんでもかんでも手術する時代ではない。日本の医療はこれまで、
どちらかと言うと「医者優先」で「患者優先」ではなかった。医者はセンセイで、
患者はセンセイの言うことに素直に従ってきた。しかし、これを続けると、結果的に、
無駄な検査や手術を受けさせられてしまう。

アメリカでは、「PSA検査はほとんど無意味」とされるうえ、たとえがんが見つかっても
すぐ手術しないで検査を続ける「アクティブ・サーベイランス」という考え方が一般化して
いる。つまり、手術が必要になったと判断したときにだけ行うわけだ。