癌細胞の特性を表現する時、よく「アポトーシスの機能が失われ、無限に増殖する」などと言われる。
だからこそ、抗癌効果の一つとしてアポトーシスを再度誘導する方法が研究されている訳であるが、
果たして本当にそれは妥当だろうか?
そもそも生体機能は極めて精緻に制御されており、細胞の自己死であるアポトーシスもまたしかりである。
それが遺伝子等の分子レベルの異常でアポトーシスしなくなったからといって、そこから先は生体の対処法がいきなりなくなる
というのはかえって不自然ではないか?
つまり細胞レベルで異常が起こった場合、今度は個体そのものが異常な形質を残さない様にアポトーシスを起こす様になる、これが癌による死である
と考えれば、非常に理解しやすくなる。
従って、癌治療の為に研究すべきは細胞レベルのアポトーシスの誘導ではなく、全く逆の個体レベルでのアポトーシスの抑制という事になる。
この様な、常識と思われている事からの発想の転換がなければ状況を大きく変える事は難しいであろう。