なぁすまん、ちょっと聞いてくれ
親父がどうやら癌だったらしいんだ

元来糖尿病がありその他にいろいろ併発していた親父
病気持ってる奴は普段から病院行ってんだから心配することなくていいよな、なんて冗談で言ってた
母が父の異変に気がついた、しゃがれた声出してる、と
話をきくと唾を飲むだけでも唾が気管にはいってむせる事があるとか
母が病院に連れて行き診断を受けたら

覗いただけで目に見える大きな腫瘍があったらしい
医者の話ではほぼ悪性に間違いないとのこと
ずいぶん前から自覚症状があったはずですよ、ってさ・・・

酒好きだった親父
糖尿病だのなんだので酒は何度となく止められていたのに
それでも飲み続けた
いろんな言い訳をしながら
「糖尿病はコントロールできてる」
「酒は悪くない」
子供だった自分にも親父の嘘がわかった

新しい病気が見つかったら酒が飲めなくなると思ったのかな・・・


そんな親父の入院が決まった
発見からこっち検査づけの毎日だった

母が自分に告げる
「手術はしないで抗がん剤治療することになったみたい」

「へえ?そのくらいで済んだんだ?」
母は目をそらして立ち去った・・・

思わずそう返したけど「そのくらい」なわけないよな・・・
手術すらできないほど手遅れだったんだよなぁ・・・
親父これから死ぬんだって思ったら何か胸にぽっかり穴があいたような気分になった