【K谷先輩の背中】
春爛漫。
俺は大学を卒業し、ついにK谷先輩の就職先に来た。
俺の大学から剣道就職は珍しい。
正直、魅力的な企業から幾つか内定通知が来たから、かなり迷いもした。
しかし、しかしだ、俺の剣道人生はK谷先輩無しでは語れないのだ。
構えは繰り返し四季の如し悠然とあれ。
K谷先輩からの言葉だ。
K谷先輩と共に汗を流せるのは半分後だが、俺は故郷に戻った歓びを噛みしめ、仕事に従事している。
なんと得難い日々。
早くK谷先輩と稽古がしたい。
俺は良く顔がK谷先輩に似ていると言われる。
しかし剣風は似ていない。
声もK谷先輩より高くない。
しかし、しかしだ、ひとつの太刀が免れた時、次なるひとつの太刀を見舞う精神は、全く同じなのだ。
お前と全国制覇がしたい、というK谷先輩にさそわれ、俺は故郷に戻った。
道場は中学以来あまり顔を出せずにいた。
これから、恩返しをしながら、精進して参りたい。
続編をお待ちあれ。