富木謙治 談

そこで気がついたことは、武田先生も植芝先生も組み付かれて襟をつかまれると同時にすぐ技をかけるからね。
柔道をやっている人は相手を振り回してしまえばいい。振り回せば強いから。
関節技がいくら強くたって、技をかけようとしたときに振り回されて崩されれば決まらないんですよね。
そうすると、柔道の方が組み付いてすぐ崩すのが早いか、合気の方がちゃんと柔道の自信があれば多少振り回されても足腰がしっかりしていればその間にぱっと関節技を決めるから、その勝負になるんですよ。
そうすると、やってみなくちゃ分からないということになるでしょ。
合気の人に黙って手を取らせてしまえば、そりゃどんな強い人でも、お相撲さんでもそれは勝てませんよ。
そういうことをよく考えたものです。

ところが、武田先生や植芝先生ばかりじゃない、いまだってそういう傾向があるけれども、
柔道は組んでからやるからね。
合気は組んだときには技をかけているとホラ吹いているんだよね。
だから、おかしいんですよ。実際を知らないんです。
その証拠には、講道館が警視庁で西郷四郎たちが試合をやるでしょ。講道館のお弟子さんたちは断然勝っているんです。
どうして勝ったかというと、講道館はある程度乱取りてきなものが多くて。

いまでも合気をたとえば4,5年やったのと、柔道の選手で4,5年やったのとで試合をさせてみると面白いんだ。
関節技なんて、そう決まるものではないですよ。それは明らかです。
やはり、足腰をやって、鍛錬して、接近したときの威力は、やはり柔道は強いです。柔道の乱取りそのものが強い。
あれだけ練っているんだから。だから、つかんだら投げられちゃうなんてものじゃないですよ。
勝負だったら、関節技で捻挫させられても足っ払いで勝っちゃいますから。

だけど、そんなことよりも、柔道の場でこれもやったらどんなにいいだろうというのが、僕の考えだったのね。