天智皇統と天武持統皇統の争い

**藤原隆行** · 2014/10/05(日) 09:51:31.82

日本書紀によると天武の妻たちが非常に多く、天智の皇子たちも天武に従っている。
その訳を、持統以外の天武の妻たちは天智とその重臣たちが差し出した人質であると考えた．
天智の皇子たちも人質である。
その後天武持統皇統は称徳まで続いたが光仁天皇、桓武天皇の策謀により天智皇統に変わったのである。
以下、本文。

**藤原隆行** · 2014/10/05(日) 09:58:06.24

古くから、天智と天武が兄弟ではないという説があることは知っていました。
今回の考察で、それどころではなく、天智と孝徳以前とも断絶しているという結果になりました。
そして天武の妻たちが多すぎる理由もわかりました。天智の皇子たちが天武にしたがっている理由もわかりました。
持統以外の妻たちは天智とその重臣が差し出した人質だったのです。天智の皇子たちもそうです。
また、持統の31回に及ぶ吉野行幸の謎も解けました。
有力な皇位継承者である高市皇子を亡き者にするための呪詛だったのです。
元明、元正、聖武、孝謙の皇統に対する考えも明らかにできました。そして光仁天皇、桓武天皇の策謀も見出しました。
鎌足、不比等をはじめとする藤原一族は天皇家に協力し、あるいは時には反逆しながら、自分たちのそばにいる皇位継承者のために、その地位を危うくする立場の皇位継承者を抹殺するために手を血に染めたのでした。

**藤原隆行** · 2014/10/06(月) 12:38:23.74

日本書紀、続日本紀その他の書籍を深読みし、推理した結果を以下に記すことにした。
　１．令制の皇太子は文武（軽皇子）が最初であり、それ以前の皇太子は書記編纂者の創作である。
　2．乙巳の変の実行者である中大兄皇子（天智）は皇太子にはなっていないし、重要な皇位継承者でもなかった。首班である孝徳や皇極との血縁もなかった。
　3．当時、大海人は飛鳥の地にはいなかった。
　4．中大兄皇子は，白村江には参戦していない。斉明天皇は中大兄皇子に殺害された。おそらく中臣鎌足の協力があった。
　5．中大兄皇子は，二度目の戦後処理に来た郭務悰と交渉し、日本アルプス以西を受け持つ傀儡政権をまかされた。
　6．大海人（天武）は、その傀儡政権の監視役であり,郭務悰(かくむそう)の意を受けている。
　7．大海人（天武）の数多くの妻たちは、持統以外は、人質の可能性が高い。
天智の皇女である大田皇女、大江皇女、新田部皇女、鎌足の女(むすめ)・氷上娘(ひかみのいらつめ)、蘇我赤兄(あかえ)の女・太蕤娘(おおぬのいらつめ)、
鏡王(かがみのおおきみ)の女・額田王(ぬかたのおおきみ)、,胸形君徳善(むねかたのきみとくぜん)の女・尼子娘(あまこのいらつめ)、いずれも人質であろう。
また、天智の皇子である河嶋皇子と芝基皇子もおそらく人質である。
　8．大海人（天武）は、中大兄皇子（天智）との血縁はないし、孝徳、皇極との血縁も当然なしである。　　　以下，次回。

**藤原隆行** · 2014/10/06(月) 12:45:53.51

おおぬのいらつめの『ぬ』の字はマックのエディターにはないようです。以下，続きを少し。　
　9．持統はおそらく大海人（天武）に従ってきた唯一の女性であろう。もちろん天智との血縁はない。
　10.　持統は文武天皇を誕生させるために、即ち天武と自分の血を受け継ぐ草薙の血統の永遠の持続を祈願するために吉野宮に三十一回もの行幸、還幸をくりかえした。
しかし、その陰には、高市を抹殺するための呪詛があった。
　11．持統十年秋七月十日太政大臣高市皇子急死。おそらく暗殺であろう。
その実行者、協力者は、多臣品治(おおのおみほむじ)、若桜部朝臣五百瀬(わかさくらべのあそんいおせ)、丹比真人(たじひのまひと)、阿倍朝臣御主人(あべあそんみうし)、大伴宿禰御行(おおともすくねみゆき)、石上朝臣麻呂、藤原朝臣不比等らである。
　12．軽皇子の立太子には天武の長男である高市皇子の存在が大きな壁であった。壬申の戦いで獅子奮迅の大活躍をした高市皇子は強力な皇位継承者であり、厳然たる実力者であった。かくして高市の暗殺が計画、実行されたのである。

**藤原隆行** · 2014/10/08(水) 07:47:20.94

いますこし、続きを。
　13.赤漆文欟木厨子(せきしつぶんかんぼくずし)という天武の皇統の連続を伝える宝物が正倉院にある。
天武・持統・文武・元正・聖武・孝謙と伝来したが、元明がぬけている。
その訳は元明がその娘であり、文武・元正の妹でもある吉備内親王の子女（父は長屋王）をすべて皇孫の扱いにし有力な皇位継承者にしたことが不満の者がいたからであり、おそらくは光明子のそばにいる藤原氏の仕業であろう。
　14.　長屋王の変は実は、長屋王よりも高い皇位継承権を持つに至ったその子女である膳夫(かしわで)王、桑田王、葛木王、鈎取(かぎとり)王らを亡き者にするための藤原四家の罠であった。
　15.　聖武天皇と県犬養広刀自(あがたいぬかいのひろとじ)との皇子である安積親王（あさかしんのう）が天平十六年閏正月十三日に急死したのも藤原仲麻呂の仕業であろう。光明子も承知していたはずである。
　16.　藤原仲麻呂はその策謀により、橘諸兄を追い落とし、息子である奈良麻呂も失脚させたがその折に道祖王と黄文王の二人の皇位継承者を亡き者にし、安宿王（あすかべおう）を流刑にした。
道祖王(ふなどおう)は聖武天皇の遺詔による皇太子であったが、仲麻呂の策略によりすでに廃皇太子となっていた。大炊王（おおいおう）が皇太子となり、のちに孝謙天皇の譲位により淳仁天皇となった。　　以下，次回。

　

**藤原隆行** · 2014/10/08(水) 07:56:25.31

　17．光明皇后の崩御後、後ろ盾をなくした藤原仲麻呂は、道鏡に篭絡された称徳天皇（孝謙）にうとまれ、殺害された。淳仁天皇も廃帝・淡路公となされた。
本気で道鏡を天皇にするつもりであった称徳天皇は藤原永手と吉備真備に一服盛られた可能性が高い。
　18．藤原永手は元明と元正の信頼が厚かった房前の次男であり、吉備真備は唐の事情に詳しい教養人である。
彼らは、天智の孫で施基皇子の第六皇子である白壁王を皇太子とした。それは抜群の人事である。
白壁王の妃は聖武天皇と県犬養広刀自の娘である井上内親王であり、二人の間には他戸(おさべ)王がいた。白壁王は光仁天皇となり、井上内親王は皇后となり、他戸王は皇太子となった。
井上が皇后になった同日に四品となった山部親王（のちの桓武天皇）は井上皇后と他戸皇太子の抹殺を画策するのである。実行者、協力者は藤原良継と藤原百川である。
　19．良継の娘・藤原朝臣乙牟漏(おとむろ)は、延暦二年二月桓武の夫人となり、四月には皇后となった。乙牟漏は、山部が皇太子のときに妃となったが、後に平城天皇となる安殿(あて)親王と嵯峨天皇になる加美能親王を生んでいる。
百川の娘は、後に桓武の夫人となった旅子である。旅子は延暦の初年に後宮に入り、延暦五年に夫人となり、後に淳和天皇となる大伴親王を生んだ。かくして藤原一族が天智系皇統の外戚となった。
20. 京都東山にある泉涌寺(せんにゅうじ)霊明殿には、天智を始まりとし、光仁、桓武以下昭和天皇までの位牌が祀られている。
孝徳、斉明以前もないし、天武から称徳までも排除されている。平安時代以降の皇統は天智から始まったことを主張し、光仁、桓武が天武系から皇統を奪還したことを矜持としているのである。　　以下，次回。

**藤原隆行** · 2014/10/10(金) 12:47:23.93

これからは、伊勢神宮・斎宮考になります。本稿は天武と天照大神との関わりからのものでいきがかり、いわば成り行きのものです。
　21．垂仁天皇と倭姫命(やまとひめのみこと)の時代には天照大神を祀る場所は斎宮と呼ばれ、おそらく多気郡に建てられた。
そしていつしか、天照大神を祀る場所が神宮と呼ばれるようになった。
　22．文武天皇二年に多気郡にあった神宮を度会郡に遷すまで神宮は、つまり『日本書紀』に言う伊勢神宮は多気郡にあった。
　23．斎内親王を斎宮と呼ぶこともあり、天皇また代理のものが身を清めるための簡素な建物も斎宮と呼び、さらに三重県多気郡竹野町に発見され、
昭和四十五年に発掘調査が開始された斎宮跡も奈良時代後半から平安にかけての斎王制度に基づくそれなりに立派な建物も固有名詞的な斎宮である。
　24．文武天皇慶雲三年（706年）泉内親王が正月に伊勢神宮に詣でているので、三節祭をともなう平安の斎王制度は、その時は整ってはいない。
　25．元正天皇養老元年（717年）夏四月に久勢女王を伊勢に向かわせているので九月の神嘗祭を意識しておらず、斎王制度は整ってはいない。
　26．聖武天皇神亀四年（727年）九月に井上内親王を伊勢神宮に派遣しているので神嘗祭をはじめ三節祭が行われ、斎王制度が整っていた可能性がある。
　以下，次回。

**藤原隆行** · 2014/10/10(金) 12:54:53.90

　27．孝謙天皇天平勝宝五年（753年）に内人、物忌、淳仁天皇天平宝字四年（760年）にも禰宜、内人、物忌、称徳天皇神護景雲元年（765年）に禰宜、大物忌、内人が見られる。
この頃、奈良時代の終わりには斎王に代わって大物忌が太玉串を奉立する神事が出来上がっていた可能性が高い。この斎王制度が南北朝時代まで存続した。
天皇に代わって斎王が天照大神を祭祀するので、天皇は伊勢神宮に参拝しなくてもよかったのである。その後、天皇は京都にあり、明治に至るまであまり日のあたることのない不遇な時代をすごしていたと思われる。
明治になってまたも万世一系を宣言し、逆に伊勢神宮に参拝することになったのである。
　28．称徳天皇神護景雲元年（76７年）に度会郡の等由気(とゆけ)の宮の記載があり、のちに豊受大神宮と変わるのであろう。
そして伊勢大神宮も度会郡にあった。現在の内宮の地は当時は度会郡であった。

**藤原隆行** · 2014/10/10(金) 12:58:10.90

　29．光仁天皇宝亀三年（772年）に月読神が伊勢神宮の北三里にあるという記載がある。奈良時代の条里制によると一里＝約六百四十五メートルで三里は約千九百六十四メートルで現在の実測とほぼ同じである。
この頃には伊勢神宮（内宮）は現在の地に存在した。御敷地も存在していたと考えられ、この頃までには式年遷宮が行われていた。
　30．荒祭宮は正宮が西御敷地にある時真北に位置し、太一の居所となり、東の御敷地にあるとき西北・乾に位置し天を表す。すなわち太一と習合した天照大神の坐すところと考えられる。
　31．元正天皇の頃には北極星、北斗、南斗が認識されており、陰陽五行、天文に詳しい官僚によって、その位置関係から三節祭や神衣祭の日取りが決められた。

**藤原隆行** · 2014/10/10(金) 13:10:54.28

日本書紀、続日本紀、その他の書籍から推理し、以上の結果に至った。
まとめると、
持統は天武と自分の血を引く草壁の血統の存続を望み、様々な謀(はかりごと)をめぐらせた。最大のものは当時の有力な皇位継承者であった高市の皇子の抹殺である。
元明は天武系皇統の存続を望み、皇位継承者をふやしたことが長屋王の変の遠因となった。
元正は純粋に聖武を愛し、聖武への皇位の継承を望んだ。
藤原一族は飛鳥・奈良の時代、時に天皇家に協力し、ときに反逆しながら手を血に染めた
が、ついには天武系皇統の外戚を続けることはできなかった。
しかし、桓武に協力し、天武系皇位継承者を一掃することに成功し、その外戚の地位を得たのであった。そして平安の時代、わが世の春の栄華を極めるにいたったのである。
　
　以上，拙著『推理　天智皇統と天武・持統皇統の争いと藤原一族の役割』の要旨を紹介しました。
一部、文字化けがでました。申し訳ありません。

**Unicorn焼 ☆** · 2014/10/10(金) 14:31:41.17