大手銀、業務改革なお途上、三菱UFJ、削減幅を上積み、欧米勢には見劣り。
2019/05/16 日本経済新聞 朝刊

 大手銀行が業務のあり方を見直す構造改革を急いでいる。三菱UFJフィナンシャル・グループ(FG)の三毛兼承社長は15日の決算
会見で、業務量の削減幅を1万人超に上積みすると明らかにした。各社はデジタル技術の活用による効率化を進めるが、事業構造の
見直しで先を走る欧米勢に見劣りする。2019年3月期決算は大手5行のうち4行が最終減益。マイナス金利が長引く厳しい経営環境
下、重い経費率の引き下げという難しい課題に直面している。
 これまで三菱UFJは23年度末までに約9500人分の業務量を減らす目標を掲げてきた。デジタル化による事務量の削減で想定より
も効率化が進んでいると判断、削減幅を1万人を超える分まで積み上げる。三毛社長は「グループ一体の構造改革に一定の手応えを感
じている」と語った。
 他行でも業務見直しは急務の課題だ。みずほFGは前期末の経費率が6ポイント悪化の79%弱に上昇。この日公表した5カ年経営
計画では本業のもうけを示す連結業務純益を9000億円(前期は4083億円)に引き上げる目標を掲げた。坂井辰史社長は「達成は
レガシー(負の遺産)ともいえる経費構造のカットにかかっている」と話す。銀行はかつてシステム投資で先端を走ったが、みずほは収
益性の低下を反映して減損処理を実施した。
 邦銀が業務のスリム化を急ぐのは欧米に比べて重い経費構造が温存されているためだ。全国銀行協会の統計から試算すると、06
年度まで50%前後を保った都市銀行の経費率は17年度に65%超まで上昇。不良債権処理に区切りを付けた邦銀は業容を広げる
途上で経費額を10%以上膨らませた。
 これに対し、欧米勢は米シティグループやバンク・オブ・アメリカの経費率が58%前後と身軽だ。08年の米リーマン危機をきっかけに
事業構造を見直してきたためだ。
 みずほ証券の分析によれば、経費率の差はリテール(個人)分野で著しい。欧米の50%前後に対し、邦銀は80%程度で高止まりす
る。重荷はATMや店舗だ。三菱UFJ銀行と三井住友銀行は店舗外のATMを相互開放し、重複する拠点でATMを廃止する協議を進め
ている。24年度末までに100拠点を減らす計画のみずほFGも15日、新たに30拠点を積み増す意向を明らかにした。
 グローバルバンクをめざすメガ銀行にとって頭が痛いのが金融規制への対応だ。三菱UFJ銀と三井住友銀は米金融当局から内部
管理の不備を指摘され、改善策で折り合ったばかり。コンプライアンス(法令順守)部門で人員増を求められ「連結ベースの経費率が
数%上がらざるをえない」(大手行の幹部)。コスト管理が銀行の競争力を左右することになりそうだ。

〓−〓 単位億円。▲はマイナス。カッコ内は前年同期比増減率%。実質業務純益は傘下行合算ベース 〓−〓 
 実質業務純益 連結最終利益  
  19年3月期 20年3月期 
三菱UFJ 5,329(▲26) 8,726(▲12) 9,000( 3) 
三井住友 5,840( ▲5) 7,266( ▲1) 7,000( ▲4) 
りそな 1,953( 4) 1,751(▲26) 1,600( ▲9) 
三井住友トラスト 2,314( 22) 1,738( 13) 1,800( 4) 
みずほ 2,477(▲25)  965(▲83) 4,700(387)