つづき

すでに高齢の祖父の切羽詰まった表情、大きな声に非常におどろきました。
「えっ…」と固まっていると、「軽トラに乗れ、早く!」とせかされ、訳もわからぬまま軽トラに戻りました。
あんなに普段膝を痛がっていた祖父が、走って軽トラに駆け寄っていました。

祖父の知り合いも軽トラの後ろに乗り、結構なスピードで山を降りました。その場を走り去る直前まで、「おーい」という声は後ろから聞こえていました。


家に着き軽トラから降りると、真冬だというのに祖父も祖父の知り合いも汗をかいていました。
私は訳がわからず、「なんで急いで山から降りたの?誰か助けを呼んどったんやないの?助けなくていいの?」と聞きました。
すると祖父は、「あれは一声呼び(ひとこえよび)っていって、人間を山の中に引きずり込むやつやから、絶対に声に反応したらいかんのや」と言いました。