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二次創作
0002タンスの角にトーキック垢版2021/05/08(土) 14:21:22.63ID:dyMSi12t
この暮らしが好きかと聞かれてもそうとは言えない。
朝は起きるとまず腐臭が鼻に絡みつく。つぎはぎのベッドから起き上がって、自分の“家”から出る。
端からみればゴミで固めて作った、吹けば倒れるような小屋だが俺はこの“家”を気に入ってる。理由は言い表せないが、汚くてもここは妙に落ち着く場所だ。
外の景色は決して綺麗とは言えないが、俺の“家”と同じ様なのが立ち並んでいる。
ここは商業都市の外れにある貧困層が暮らす地区だ。衛生環境が非常に悪く、毎日数人はこの地区で死者が出ている。上流階級の貴族が一日で稼ぐ金額は貧困層の数十倍にも及び、貧困層が栄養失調や風邪に掛かっても治療してもらえないため、こじらせて死ぬケースが後を絶たない。
もうすぐ冬が来るから、そのために準備をしなければならない。毎年この冬を乗り切るかが一年を生き残る鍵になるといっても過言ではない。
まず商業都市の近くまで行って、廃棄された木材を集めなければならない。しかし運ぶ時は結構かさばるため、それなりに人は必要だ。
俺は隣に住む幼馴染の家を叩いた。
「おーい、起きてる?木集めに行くよ。」
「うーん、あと五分待ってよ。今頭が痛いの」
幼馴染のレオナはそう言うので仕方なく少し待って上げた。
そして少し経ってからまたレオナの家を叩くと、
「あと五分待って。なんか急にお腹が痛くなってき・・・」
「家叩き壊すぞ」
「ひっ!?あ、なんか急にお腹の調子が良くなってきたかも」
そう言って彼女は調子良く家から出てきた。
「よし、今日も行くか」
「・・・」
「行こう!」
「・・・」
「おーい、行くぞ」
乗り気じゃない彼女を引っ張って商業都市へ連れてった。
道中家を叩き壊しにくるとか鬼畜とか外道だの散々言われたが、お前を起こすためだと説明したら素直に受け止めて、意外にも黙ってくれた。
廃棄置き場行くと、既に仲間の人達が木材を運んでいた。
「おい、おっせえぞ。またレオナとイチャイチャしてたのか」
「い、いえ。そういう訳ではありません。遅れて申し訳ありません」
俺はつい赤面してしまい、彼女も少し嫌がっていた。
「まあ、いいからさっさとやってくれ」
とこの場を取り仕切る、言わば棟梁が言った。
「「はい!」」
俺と彼女は声を揃えて言った。
そこから俺達は教会のお昼の鐘が鳴るまで燃えそうな木材を選別して台車に詰めて、運んだ。
木材とは別に金属類も選別し、それは売れるらしく、別で運ばれた。
俺達は作業が終わると、救貧院という教会に駆け込み、パンとスープを少しだけ貰った。
この昼飯は夕食と比べて格別に上手い。
「ああ、やっぱり昼飯は最高だぜ」
ととなりのレオナがおじさんっぽい事を言う。
そして午後になると、俺とレオナは別行動になる。レオナを含む女性陣は歓楽街へ行き、俺達は鉱山で採掘をしに行くことになる。
歓楽街へ行くという事はつまり体を売りに行っているのだ。そこでの妊娠率は高く、ついこないだもレオナの友達が妊娠してしまったらしい。
「頑張ってな」
そんな無責任な言葉しか毎回かけられず、歯を食い縛ってしまう。
「そっちもね」
彼女も少し涙目になりながらそう言った。
この半日が一日の中で一番辛い。
とにかく鉱山での労働は過酷だ。石はとても硬く、一生懸命叩いても全然削れない。毎回手にアザができる。そして石を掘ったら狭い通路でそれを背負って運ばなきゃいけなくて、頭がボヤける。
ある意味一瞬で鉱山での労働は終わり、お情け程度の賃金しかもらえず、家に向かって帰る事になった。
家へ帰ると彼女は半目開きで彼女の家の横でぐったりとしていたので、声をかける事はせず、俺は彼女をそっと家の中へ戻した。
俺は夕食を食べる気はなれず、そのまま寝る事にした。
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