リレー小説「中国大恐慌」
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2018年11月21日、中国東部を超巨大規模の停電が襲った。
北京周辺から上海周辺にかけて、地上から電気が消え、人々はパニックに陥った。
これはそんな架空の中国が舞台の物語である。
主人公の名前は李青豪(リー・チンハオ)。
29歳の青年である。通称は「ハオさん」。
愛称は「ハオ」。 「スマホが見られないなら死んだほうがましだ!」
ハオはそう叫ぶと外へ飛び出した。
夜の町は漆黒の闇に包まれ、一寸先も見えない。
コンビニに饅頭と飲み物でも買いに行きたかったが、スマホがないと買い物も出来ない。
仕方なく部屋に戻ったハオは、呪いの言葉を吐いた。
「習近平が全て悪いのだ」 その頃、習近平は項垂れていた。
「日本の文明が崩壊し、美国(アメリカ)が滅亡しかかっている今、我ら中華人民が世界の盟主となる機会だったのに……
なぜこんな時にこんなことが起こるんだ!」 そこへ突然、歪んだデザインの着ぐるみを着たアンパンマンやミッキーマウスやらがぞろぞろと入って来た。 着ぐるみ達は声を揃えてそう言ったが、習主席には何のことやらわからなかった。
「もしかして敵国のお飾り人形のことか?」 ファンシーな見た目の着ぐるみたちだったが、よく見ると股間には生々しい生殖器が痛々しいほど怒張していた。 「斬れ、メイファン」
習が命じると、どこからともなく現れた女の子が、青龍刀で汚ならしい逸物どもを薙ぎ斬った。 習の逸物も切り落とされた。彼は性欲から解放されたのだ メイファン「アイヤー……。トゥイブチ(ごめんなさい)」 習「ごめんで済んだら中国共産党は要らないんだよ!」 「もう上海は駄目だ。広州に移り住もう」
恋人のシューフェンを抱きながら、ハオは言った。
「広州へ行ってどうするの? 仕事は? あっちに知り合いでもいるの?」
「知っての通り、俺の生まれはド田舎の村だよ。他のどの町へ行ったって知り合いも親戚もいない」
「じゃあ……」
「散打をやる。俺が強いのは知ってるだろう? チャンピオンになってお前に綺麗な服を着せてやる」
「何甘いこと言い出してんの!?」
「これはチャンスだと思うんだよ。神様が俺に散打をやれと告げているんだ」
そう言いながらハオはシューフェンに挿入した。
「バっ……! バカにも程がある……っ! ハオ……! ハオ! ハオっ!」 /⌒⌒⌒\
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...ヽ ヽ ヽ ----、 / /
.. .\ \ ヽゝ  ̄シ / ハオ「そうだシューフェン、お前もこれを機会に女優デビューしろよ」
シューフェン「な、何を言い出すの!?」
ハオ「演劇やってたって言ってたじゃないか」
ハオはそう言いながら、入り口あたりを擦っていたのを突然奥まで突いた。
シューフェンは悲痛な叫びを上げ、天国へ逝きそうになったが何とか戻って来ると、答えた。
「高校生の頃の話よ」
「いいじゃないか。お前、綺麗だし、なれるよ、女優。やってみろよ」
「そんなにあたし、綺麗かな」
「あぁ、綺麗だ」
シューフェンは暫く下半身の快感と照れ臭さの両方と闘っていたが、やがて聞いた。
「ファン・ビンビンより綺麗?」 ハオ「んなわけないだろ!w 何? お前、ファン・ビンビンより自分が綺麗だとか思っちゃってたわけ?w」 ハオ「種類が違うっていうかそもそも違う生き物だろw ファン・ビンビンがCGならお前は素人の描いたマンガ、
ファン・ビンビンがエルフならお前はドワーフ、
ファン・ビンビンが白馬ならお前はネズミ色のネズミ、
ファン・ビンビンが……えーと」 シューフェン「おい」
ハオ「うん?」
シューフェン「ちんぽ抜け」
ハオ「は?」
シューフェン「いいから抜け」
ハオ「なんで? これから一番いいとこだy」
シューフェン「いいからその汚いちんぽを早く退かしやがれ」 ハオはシューフェンの部屋から追い出され、白昼の街を歩いていた。
「何だってんだ? 意味がワカラナイ……」
見上げたビルの巨大モニターは灰色だった。
バッテリーで動くものを除いてすべてのものから電気が消え去っている。
いつもは騒がしいディスカウントショップの店頭にも音楽はなく、スマホやパソコンの用品を買う客は誰もいなかった。
乾電池式の充電器を使えばスマホは立ち上がるのだが、電波を受信しないのでは単なるオフライン専用のゲーム機にしかならない。
スマートフォン決済が常識化しているこの国では買い物をするのにも不便が大きかった。 固い布団を棍棒で殴りつけるような音が聞こえて来た。
その音がするところを民衆が取り囲み、荒い歓声を上げている。
「これ何だ?」
ハオが観衆に尋ねると、斜視の男が答えた。
「散打の試合だ」
「こんな所でか?」
「TV中継も不可能な御時世だからな。青空の下でやってる。観戦料は任意だ」
「よく見えないな。闘ってるのは誰と誰だ?」
「リウとチョウ・グヮンドンだ」
「リウ!? 散打王のリウか!?」
「そうだ」
「あのリウがこんな所で試合してるのか!?」 シューフェンは部屋で一人、甘いお菓子をヤケ食いしていた。
「女心のわからんダメ男は死ね。あとちゃんと仕事しろ」
しかしハオの言った冗談なのかよくわからない言葉は頭にこびりついていた。
「女優……、か」 ハオは人波を掻き分け、ようやく仮設リングの見えるところまで出た。
茶色い短髪に相手を馬鹿にするような笑いを湛えた大男が踊るようにステップを踏んでいた。
「リウ・パイロン! 本物だ!」ハオは思わず叫んだ。
挑戦者のチョウは背が高く、長い脚を活かしてチャンピオンを牽制し、なかなか間合いに入らせない。
しかしリウは困っているというよりは面白がっているように見えた。
「リーチのやたら長い相手……。俺だったらどう闘う?」
ハオは考えた。
「接近戦だ。距離を詰めればあの長い手足は逆に邪魔になる。そこへ俺の速い打撃を連続で打ち込めば……」
ハオがそう考えた時、リウが仕掛けた。
リウは襲い掛かる挑戦者の長い脚の上を飛び越え、飛び蹴りをその顔に食らわした。
「カウンターの飛び蹴りだと……!?」
ハオが度肝を抜かれる中、一発KO勝ちを決めたチャンピオンは、勝利のポーズを決めるのは後回しと、挑戦者を抱き起こしていた。
「大丈夫か? ちと荒っぽかったな、すまない」
顔面にまともに蹴りを食らった挑戦者は、鼻血を流しながらもしっかりと意識を取り戻した。
「お前、強かったぜ。散打をやめるなよ?」
王者リウはそう言うと立ち上がり、沸き立つ観衆に向かいようやくガッツポーズを決めた。 「リウ! リウ!」
迎えの車に乗り込もうとするリウをハオが呼び止めた。
リウは立ち止まり、振り返ると無表情に言った。
「誰?」
「アンタの次の挑戦者だ」
「聞いてないな」
無視して行こうとするリウの後ろからハオは質問を投げた。
「一つだけ聞かせてくれ。チョウの弱点は接近戦だとわかってて、なぜ遠距離からの飛び蹴りで決めた?」
それに対しては答えたくてウズウズしていたとでも言うようにリウは、振り向くと言った。
「相手の弱点につけこむようなことを俺はしない。相手の得意な土俵で勝負して勝つ、それこそが王者というものだ」
ハオはその言葉にひどくびっくりした。
「ハァ……。ひとつの負けで伝説に傷がつく立場のアンタなんだから、相手の弱点を徹底的に分析してでも勝つことを優先するもんだと思ってたよ」
「そんなセコい伝説は作らん」
「しかしあんな無茶なカウンター、相手が死んじまうかもとか思わないのか?」
「遠くへ蹴りを出す時、頭は後ろへ下がる。わかるか? そうした意味ではあれはカウンターですらない」 『リウ・パイロン……。俺が倒すに相応しい相手だ』
ハオ(29歳無職)は鼻を指でピンてするブルース・リーの物真似をしながら見送った。 「男の悲鳴……か」
ハオは構わず帰ろうとしたが、さっき見た試合の興奮が彼を動かした。
「まぁ、いっちょ助けてやるか」 角を曲がるとそこは血の海だった。
目の前には虎。その足元には頭部の大部分を囓られた死体が横たわっている。
大きな虎はハオに向かって咆吼した。 「うひゃいひゃあぁぁ!?」
ハオは情けない声を上げると小便を漏らしながら逃げ出した。
ななななんで大都会上海に虎なんかいるんだ? 動物園から逃げ出したのか? |┃三ガラッ!_____
|┃ |どっきり |
|┃ ≡/⌒\ ̄||  ̄ ミ
|┃ ( ____) || サッ
|┃≡ (_》 ^ω^)E)
|┃= ⊂ ノ 人食い虎は高度な知能と残虐性を持っていた。
ドッキリと見せかけてハオを誘う作戦だ 逃げ込んだ路地は行き止まりだった。
虎は立ち止まったハオ目がけて一直線に襲い掛かって来る。
まずはその獰猛な爪で肉を抉ろうとした。
「ハイッ!」
ハオは器用にそれを捌いた。虎の前脚が宙を掻き斬る。
怒り狂った虎は反対の前脚をすぐに繰り出して来た。
「ハイッ!」
ハオはまた捌くが虎の体勢は崩れない。
虎はムキになったかのように両前脚を交互に振り回す。ハオはそれを素早く捌きまくる。
「ガオッ! ガァッ! グワワワァッ!」
「ハイ! ハイ! ハイ! ハイッ!」
死に物狂いでハオは捌き続けた。
しかしこれじゃジリ貧だ、ハオは思っていた。そのうち俺のほうが先にくたびれるに決まってる。
どうか……頼むから牙で襲い掛かって来てくれ。それを捌いてコンクリートの壁に頭をぶつけてやる。
その隙に俺はあそこの梯子を伝って上に逃げてやる。 しかし虎は、ハオの魂胆を見抜いているかのように同じ攻撃を繰り返した。
「あぁ……もうダメだ。走馬灯が見えて来た」
「シューフェン、さよなら。愛しているよ。君は俺には過ぎた恋人だった。綺麗だった……ファン・ビンビンほどではないけど」
「あぁ……なんか……走馬灯の向こうからくるくる飛んで来る女の子が見えて来た。こりゃ、いよいよ……」
と、虎の顔が一瞬で近づいて来た。両脚はまだ同じところで攻撃を続けているというのに。
虎はハオと熱烈なキスをすると、ずるずると地面に落ちた。辺り中、血の海だ。
気づくとチャイナドレスを着たまだ10歳代ぐらいの女の子が立っている。手には青竜刀を持っていた。 女の子は『超級成功!』と書かれたプラ板を掲げて言った。
「すまん。ドッキリだ」
「は!?」
「しかしあんたの太極拳は凄いな。よくあそこまで捌きまくれるものだ」
「は!? は!? ちょ……ドッキリって!?」
「気にするな。ところであんた、私の所で仕事をしないか?」
「いや『気にするな』て……。何!? これ、お前の飼い虎!?」
「そうだ。名前は小松」
「は!? ドッキリで、飼い虎の首、飼い主が斬り落として、ハァ!?」
ハオは地面に転がった虎の首と少女を交互に見ながら口からビックリマークを飛ばしまくった。
「私の名前はメイファン。お前の名は?」
「ハァ!?」
「変わった名だな」 よく見ると少女はアイドルグループにでもいそうな美少女だ。
あどけなさの残る風貌に大きな青龍刀が不釣り合いだった。
少女は透き通る声で言った。
「なぁ、『ハァ!?』よ。その太極拳、どこで身に付けた? あとSNH48のキクちゃんと私、どちらが可愛いと思う?」 1900年代のはじめ
中国の田舎町に黒雲のような影が落ち 一組の夫婦が行方不明になりました。
夫の名はホイ、妻の名はリン。
2年程してホイは家に戻りましたが
どこで何をしていたのかについて、
だれにも話すこともなく不思議な研究に没頭するようになりました。
妻のリンのほうは、とうとう帰ってきませんでした。
あれから数十年の歳月が流れ そんな事件も知る人もめっきり少なくなりました。
かつてホイとリンが住んでいた家には
そのひ孫にあたる少年と、双子の女の子が やさしいママと住んでいます。
町だって平和そのものです。
ところが、1988年
雨花台の山に再び不吉な黒雲がかかります。
町中の家々では ゾンビが徘徊し、地下ではゴブリンが暴れ始めるという 不可解な現象が起きているようです。
それは、ホイホンの家でも同じでした。
パパが不在のこの家で、たよりになるのは彼ひとり。
ホイホンは、大切な家族を守るため 事件の原因を突き止める旅に出ることを決意します。 シューフェンは一人ショッピングモールに来ていた。電車が動いていないので自転車に乗って。
コスメショップに入ると中はけたたましく軽油臭かった。ディーゼルエンジンを回して発電しているらしい。
化粧品を眺めていると店員の女性が声を掛けて来た。
「お姉さん、ヤらせてよ」
シューフェンは一瞬、意味がわからなかったが、どうやら無料で化粧をしてくれるらしい。
化粧をしてみたくて来たので丁度よかった。
「お姉さん、もったいないね。なぜ素っぴん?」
「仕事が忙しかったからね、化粧してる暇もなかったわ」
「凄いね。それは忙しすぎ。日本人みたい」
目の吊り上がった女店員は大きな声で途切れなく喋りながらシューフェンの顔に化粧を施す。
「お姉さん、土台がいいから楽しいね。いつもブサイクにお世辞言ってて気が滅入るけど、今日は気が楽」
「女優目指してるのよ」シューフェンは冗談のつもりで言った。
「女優? そりゃ当たり前ね。お姉さんぐらい綺麗なら……」
化粧を続けながら段々と女店員の口数が少なくなって行った。
「どうしたの?」シューフェンは不思議になって聞いた。「やけに集中しはじめたわね」
化粧が完成し、女店員は凄いものを見せるような動作で鏡をシューフェンのほうに向けた。
鏡の中には天女のごとき美女が映っていた。
「……これが、私?」 「全部で720元ね」
「えっ……と。スマホ決済は無理……よね。クレカは使える?」
「お姉さん……『現金のみ』が今の上海の常識よ」
「そ、そうよね」と言いながらシューフェンは財布の中を見た。100元札が二枚と……
「またにするわ」
苦笑しながら立ち上がったシューフェンの後ろから男の声がした。
「貸すよ」
「えっ?」
振り向いたその先、というよりもすぐそこに男の分厚い胸筋があった。見上げるとサングラスをかけた短い茶髪のニヤケ顔。
見覚えのないようなあるようなその顔を見て、シューフェンは「あ、あのっ」としか言葉が出せなかった。
「何ならプレゼントするよ。女性が美しくなるのを手助けするのは男の先行投資だ」
そう言いながら男はサングラスを外した。
「ええっ!? 散打王? リウ・パイロン!」 「そうさオイラはチャンピオ〜ン」
リウはいきなり歌い出すと背後から取り巻きが現れて一緒に踊り出した。
しばらく歌と踊りが続く。 ホイホンは仲間を探すためにブーホーヒーの酒場に行った。
「おーい、誰か俺とゾンビとかゴブリンを退治して世界を救いたいと思う奴はいないかいー?」
騒がしい酒場で一人だけそんな言葉に耳を傾けた男がいた。
「おいどんが力を貸しても良いでゴワス」 「俺が話せるのはこれくらいだ。後は彼女の無事を祈るしかない」
「そうですね…」
父親を殺され行方の知れない友人を思い、ミアの胸は痛んだ。
「み、見ず知らずの方にいきなり尋ねてすみませんでした、色々話していただき、ありがとうございます!」
「いいよ、友達が心配なら仕方ないさ」
慌てて謝辞を述べるミアに、男は気にするなと言外で告げた。
「では、これで失礼します!」
ミアは男に一礼してその場を立ち去った。
「君も気をつけて」
立ち去るミアの背中に男が声をかける。
リュミエプール女学院の制服を着た少女の背中は、守りたくもあり邪な衝動を抱かせる魅力をも感じさせた。
「ほら、あの男ですよ」
ミアと話していた男を、物陰から何者かが指差していた。
「アイツ、女学生に治安維持隊の悪口を言いふらしてたんですよ。セクハラしてたとかなんとか」
「ふーん」
「女の子に近づきたいからって、人の不幸をダシにして好き勝手言うなんて人間のクズですよ、まるで民主主義者だ」
「まったくそうだな、」
「私はね、ああいう輩が許せないんですよ。ですから隊長さん、民主主義からいたいけな女学生を
守るためにもあんなヤツをガンガン取り締まってくださいよ!!頼みますよ!?」
冴えない風貌の中年男は、目の前の現場隊長に熱心に訴えた。
「ああ、わかってる。不審者情報の提供、ご苦労だったな」
「いえいえ、これも愛国者の義務ですから」
「これからも不審なヤツを見かけたら何時でも通報しろよ」
「ハイ!か弱い女性を民主主義から守るためならよろこんで頑張ります!」
(何が守るだ、単にあの野郎がうらやましかっただけだろ)
中年男の言葉を隊長は内心蔑みながら聞いていた。
そもそもこの中年男も事件現場を見物に来た野次馬の一人にすぎないのだ。
不審者がいると聞いて、コソコソ隠れて見せられたのは、女学生にサヨナラしていた若い男の姿だった。
民主主義者とか関係ないだろと思ったが、中年男が聞いたという二人の会話が妙に具体的なのが気になった。
(女学生相手とはいえ、大っぴらに俺たちの批判をするとか、やはり怪しいな)
男がミアに語ったセクハラのことは事実なのだが、治安維持隊を悪し様に言うことは公然のタブーであった。
聞かされたミアも、愛国者なら治安維持隊がセクハラをしたなんて話は否定あるいは通報すべきだったのだ。 「困ったものだ。僕達は電気が停まったら何も出来ない」
リウはシューフェンと乾杯すると、言った。
「クレカやスマホはもちろん、コンピューター管理の下、自分の口座から金を卸すことも出来ない」
ロウソクが店内を照らし、カラオケもなく客の声とグラスの音だけが籠るバーで、二人は向かい合って座っていた。
「でも僕にはこの肉体があり、君にはその美貌がある。電気がなくてもそれを武器に生きて行ける。僕達は勝ち組ってヤツだな」
薄暗い中にリウのニヤケ顔が浮かび上がる。
「散打王が言うと説得力あるわね」
シューフェンは誰かさんの顔を思い浮かべながら言った。
「突然『俺は散打王になる』なんて言い出すような人とは大違い」
「そんなヤツいるのかい?」リウは馬鹿にするように言った。
「……まぁ、私も似たようなもんか」
「ん?」リウが首をひねりながら優しく笑う。
「私……、女優になりたいの」
「何だって? まだ女優になってなかったのか? そりゃ大問題だ」
「口がお上手ね」
「本心さ。俺の連れに芸能プロダクションやってるヤツがいる。紹介するよ」
「えっ。本気で?」
「ツイ・ホークってヤツだ。知ってるかい?」
「知ってるも何も」シューフェンは目が回りそうになった。「中国映画界を代表する……あの……」 リウとシューフェンは、いつの間にか眠っていた。
気が付くと二人は1989年6月1日の天安門広場にタイムスリップしていた。
若かりし頃のツイ・ホークが群衆を指揮し、人民解放軍と対峙していた。 リウはシューフェンを送ると言った。外に待たせていた取り巻きの車があった。
どこに連れて行かれるのだろう? と内心ワクワクしていたシューフェンの気持ちを裏切って、車はいつものアパートに着いた。
「電気が無事なら僕の電話番号を教えるところだけど」
リウはそう言いながら、子供のように笑った。
「スマホがないからまた会うしかないな。いつ空いてる?」
「明日」と言おうとしてシューフェンは、なんだかがっついているような気持ちになり、「明後日なら」と言い換えた。
「オーケー。なら明後日の昼、あそこのカフェで会おう」
車の後ろからシューフェンの自転車を降ろすとリウは車の後部座席に乗り込み、ウィンクを残して帰って行った。
シューフェンは暫くうっとりしながらそれを見送っていたが、突然ハオのことを思い出した。
「忘れてた! 見られたかしら?」
しかし部屋にハオの姿はなく、帰って来た形跡もなかった。
「あの居候、どこをほっつき歩いてるのよ……?」 「俺が話せるのはこれくらいだ。後は彼女の無事を祈るしかない」
「そうですね…」
父親を殺され行方の知れない友人を思い、ミアの胸は痛んだ。
「み、見ず知らずの方にいきなり尋ねてすみませんでした、色々話していただき、ありがとうございます!」
「いいよ、友達が心配なら仕方ないさ」
慌てて謝辞を述べるミアに、男は気にするなと言外で告げた。
「では、これで失礼します!」
ミアは男に一礼してその場を立ち去った。
「君も気をつけて」
立ち去るミアの背中に男が声をかける。
リュミエプール女学院の制服を着た少女の背中は、守りたくもあり邪な衝動を抱かせる魅力をも感じさせた。
「ほら、あの男ですよ」
ミアと話していた男を、物陰から何者かが指差していた。
「アイツ、女学生に治安維持隊の悪口を言いふらしてたんですよ。セクハラしてたとかなんとか」
「ふーん」
「女の子に近づきたいからって、人の不幸をダシにして好き勝手言うなんて人間のクズですよ、まるで民主主義者だ」
「まったくそうだな、」
「私はね、ああいう輩が許せないんですよ。ですから隊長さん、民主主義からいたいけな女学生を
守るためにもあんなヤツをガンガン取り締まってくださいよ!!頼みますよ!?」
冴えない風貌の中年男は、目の前の現場隊長に熱心に訴えた。
「ああ、わかってる。不審者情報の提供、ご苦労だったな」
「いえいえ、これも愛国者の義務ですから」
「これからも不審なヤツを見かけたら何時でも通報しろよ」
「ハイ!か弱い女性を民主主義から守るためならよろこんで頑張ります!」
(何が守るだ、単にあの野郎がうらやましかっただけだろ)
中年男の言葉を隊長は内心蔑みながら聞いていた。
そもそもこの中年男も事件現場を見物に来た野次馬の一人にすぎないのだ。
不審者がいると聞いて、コソコソ隠れて見せられたのは、女学生にサヨナラしていた若い男の姿だった。
民主主義者とか関係ないだろと思ったが、中年男が聞いたという二人の会話が妙に具体的なのが気になった。
(女学生相手とはいえ、大っぴらに俺たちの批判をするとか、やはり怪しいな)
男がミアに語ったセクハラのことは事実なのだが、治安維持隊を悪し様に言うことは公然のタブーであった。
聞かされたミアも、愛国者なら治安維持隊がセクハラをしたなんて話は否定あるいは通報すべきだったのだ。 「はっ……! ここはどこだ?」
ハオが目を覚ますとうすら寒いコンクリートの部屋にいた。部屋はだだっ広く、小さな窓しかないのに明るい。
「電気が点いてる!」
天井中に無数に設置された蛍光灯群を見上げてハオは声を上げた。
「目が覚めたかブタ野郎」
いつの間にかメイファンが目の前にいて、手には鞭を持っていた。 香港でも有名な鉄板焼の店。ここのシェフのジョニーは、中国本土から103歳の父と共に逃げてきて、婿養子。
義父はハンティングが趣味で常に猟銃をふりまわし、太っている女房はジョニーの浮気には敏感な強妻だ。
今日も店に美人がくると、ジョニーはハッスル。
ある日、そんな美人の客の一人シシーにぞっこんになり、ちょっとトイレにいってくるといって家を抜け出してシシーとテニスをしたりディスコで踊ったりと、涙ぐましい浮気作戦。
妻の方も犬を持つ女友達とこれに応戦。
そしてフィリピン・スル島へ、ジョニーはシシーと遊びに行くことになった。
しかし、それをかぎつけた義父や妻たちも同行することになる。
すったもんだで、南の島でシシーと浮気をするが、それもすべてバレてしまい、ついにシシーはジョニーにあいそをつかしてしまう。
自暴自棄になったジョニーは積年の恨みを爆発させ妻と義父にフライパン片手に反撃し二人を震えあがらせ、やがてそんなジョニーに妻も打って変って献身的となり、義父も彼のいいなりに。
やがて待望の子宝にも恵まれ、メデタシメデタシ。
だが、ジョニーの浮気の虫はおさまらなかった。 探偵のウォンは香港で私立探偵事務所「萬能私家偵探社」を開いているが、従業員は美人秘書のジャッキーと間抜けな助手のチョンボの3人だけだった。
不倫調査の仕事をこなしていたある日、探偵志望の青年キットが安月給で良いから雇ってくれと事務所を訪れた。
最初はこれ以上雇うつもりは無い(実際には、これ以上給料を払いたくない)と断ったのだが、直後に起きたスリ騒ぎでの鮮やかな対応を見て、渋々雇い入れることになった。
今まで以上のケチケチ振りを見せるウォンに対し、我慢するチョンボとキット。ウォンとともにキットが初めて行った不倫調査で、証拠を押さえたまでは良かったが…… 香港TV局マウスTVに契約をしているタレントのチ・マン。
彼は8年契約をしているのにも関わらず、1年経過しても何の仕事ももらえずにいた。
そんなある日キャットTV曲からクイズの司会の仕事を請け負う。
これが中々人気を博し、チはマウスTVに契約解除を申し出る。
しかしあと7年も残っているとこいことで即座に却下されてしまった。
そこでチは自称発明家の弟チョンボと共にマウスTVに忍び込み、金庫から契約書を盗み出す計画をする。
返送して侵入し契約書を持ち出したもののボディガードに見つかり、逃走。
チョンボは咄嗟に隠れた金庫に閉じ込められてしまう。
チョンボの彼女は兄のミヤケのロンと手品師としてショーをして稼いでいた。
チ・マンはロン兄弟のところに行き金庫を開けてくれと懇願する。
その間にもボディガードに追われているチは再び逃走、逃げ込んだ場所は生放送の番組だった。
はちゃめちゃになった番組だったが、弟が作った謎の笑いガスを仕掛けたため会場は大爆笑。
このことがきっかけでマススTVの会長から局長になってくれないかと頼まれるのだった。 ハオはメイファンを無視してスマホと充電器を取り出し、側にあったコンセントに差してみた。
「充電できる! 充電できるぞ!」
電波を確認するとアンテナが5本立っている。
「ゲームが出来る! SNSも出来るぞ!」
メイファンは鞭でハオの背中をぴしゃりと打った。
「あっ?」
ダイレクトな快感……いや痛みで気がついたが、ハオもまた全裸だった。
「こんな美少女が目の前に全裸で立ってるのに無視すんな」
メイファンの言う通り、ハオの股間の如意棒はだらんと垂れ下がったままだ。
「いやだってお前、高校生ぐらいだろ? 子供が男の前で全裸で立ってんなよ」
「んだと?」
「それに俺はシューフェン一筋なんだ。帰らせてくれ」
「私はこう見えても17歳だこのポンコツチンポ」
「えっ? そうなの? 意外に……」
「大人だろう?」
「やっぱ高校生じゃねぇか! 犯罪はイヤーー!」 そこへいきなり習近平が入って来た。もちろん全裸だ。
「やぁ、ハー君。突然聞くが、君は中国共産党が好きかね? 中華人民共和国は好きか?」 ウォン警備会社に勤めるチャウは、部下いびりに精を出す一方、社長にはへつらう自称鬼警備隊長だった。
しかし、社長の息子ファンが身分を隠して視察のために入社してきた。
副隊長やドジな新米隊員ロンたち対するいびりや横暴さが御曹司にばれ、やり方が時代遅れだとチャウはヒラ隊員に降格されてしまう。元部下と立場が逆転したチャウは名誉挽回に奮起するが…… な、なぜ国家首席がこんな所に? しかも全裸で……
ハオは思ったが、すぐに合点がいった。
ハハァ……またドッキリだな? 習近平そっくりのニセモノだ。よーし、それなら正直に言ってやろう。
「はい。私は中華人民共和国が嫌いです。中国共産党は全員死ねばいいのにと思っています」
習は眉を吊り上げ、聞いた。「ほほう、なぜかね?」
「政府の与える自由しか許されないからです。主権は人民にありません。台湾や日本のような民主国家に早くなればいいと思っています」
「貴様! それは問題発言だぞ!」
「ファッ!?」
「それに台湾が国だと言ったな? 台湾が我が国の領土ではなく、独立国家だとでも言うつもりかッ!?」
そこで習はトーンを少し落とした。
メイファンが少し悲しそうな顔をしたのだ。
「メイファンに免じて今回は不問に付しておいてやる。だがこれだけは覚えておけ、私は独裁者を志し、祖国を世界の盟主へと導く者、習近平だ」
そう言い残すと部屋から出て行った。 部屋から出て習は身をけねらせた。
「もぉっ! 今私が怒ったのは本気じゃないんだからねっ!」 習が出て行ってからハオとメイファンは暫く黙りこくっていた。
「……で、」
ハオがようやく口を開いた。
「なんで裸なの?」 メイファン「それは『人はなぜご飯を食べるのか?』みたいな質問だな」 チョンボは高級フカヒレが
食べたくなった。
「ここが、珍門飯店か」 メイファンは外ではチャイナ服を着るものの、屋内では全裸と決めていた。
これはメイファンの主義であり、他人にもそれを強要していた。 チョンボは外では人民服を着るものの、食事では全裸と決めていた。
これはチョンボの主義であり、他人にもそれを強要していた。 チョンボ「ビール下さい」
店員「冷たいビール? それとも常温?」
チョンボ「ホットで」 しかしハオは不思議だった。
17歳の美少女が目の前に全裸で立っているのに、自分の如意棒はぴくりともしないのだ。
背が低いとはいえ柔らかそうなプロポーションにお椀型の胸、ぷりんとした尻、黒々と繁った陰毛、
いくら自分はシューフェン一筋と決めているとはいえ、この極上の美少女を前に欲情しないのはあまりに不自然だった。
メイファンからは女の匂いを感じない。
どちらかといえば猫、あるいはネコ科の猛獣のような匂いを感じてしまうのだった。 チョンボ「だから、ビール下さい!ホットで」
店員「冷たいビール? それとも常温?」
チョンボ「ホットだよ!温かいやつ!」 二日経ってもハオは帰って来なかった。
リウと待ち合わせの約束の時間を過ぎてもシューフェンは、部屋でハオの帰りを待ち続けた。
「何かあったのかしら……」 「約束の時間を守らん奴は嫌いだ」
リウはカフェのテーブルに足を組んで座り、カチカチと指でコーヒーカップを弾いていた。
「約束の時間に遅れる女は嫌いだ」
リウを囲んで立つ取り巻きの男達がハラハラしながら見守っている。
「おい」
リウは取り巻きの一人をぞんざいに見上げながら聞いた。
「有名人リウ・パイロンとの約束をすっぽかす女が存在すると思うか?」
「か、帰りましょうか」
へらへらと笑いながらそう言った取り巻きにコーヒーを投げつけ、リウは立ち上がった。
「アパートの場所、覚えてるな? 行くぞ」 アパートの前に乗りつけたリウは、運転手に聞いた。
「どの部屋だ?」
「わ、わからないよ」
返事を待たず外へ出ると、叫んだ。
「シューフェン! リウだ! リウ・パイロンだ! 心配になって迎えに来たよ! 何かあったのかい!?」
近所の人々がそれを聞いてぞろぞろと出て来た。
「リウだって?」
「リウ・パイロン?」
「本物だ!」
老若男女がリウを取り囲み、ぺたぺたと体に触れて来た。
「サインして!」
「抱っこして!」
「結婚して!」
キックをしてくる子供を軽く優しくあしらいながら、リウはイライラした口調で言った。
「シューフェンという女性がこのアパートのどの部屋にいるか知ってる者はいないか? シューフェンだ。姓は知らん」
「恋人なの?」
「わぁ、こりゃスクープだ」 シューフェンはリウの叫び声や野次馬の騒ぎを窓の外に聞きながら蹲っていた。
「こんな顔じゃ会えないよ……」
あの日買った化粧品はまだ一度も使っていなかった。
ハオが帰って来たらそこで初めて使い、綺麗になってびっくりさせてやろうと思っていた。
窓の外で大家のおばさんの声が聞こえた。
「シューフェンの部屋の鍵ならあたしが持ってるよ。開けよっか?」
「おばさん……! 余計なことを!?」
シューフェンはとっさに身構えた。
しかしすぐに車のドアを閉める音がし、窓から様子を窺うと、リウの車が帰って行くのが見えた。
「あ……帰っちゃうんだ……」
外もようやく静かになり、シューフェンは康福茶を淹れるとベッドにとすんと腰掛けた。
「あたし……凄いチャンスを逃しちゃったのかな……」
康福茶をこくんと飲んだ。
「でも、いいや。あたしが一番大切なのは、ハオだから」 「いいんですか? 帰っちゃって」
取り巻きの運転手が聞く。リウは岩のような表情で答える。
「天下の散打王が不法侵入なんぞできるか。あのババァ、面白がりやがって」
リウの頭の中はもう自分との約束をすっぽかした信じられない女のことで一杯だった。
「初めてだ、こんなに気持ちを燃え上がらせてくれた女は……」 突然、空が震える程の轟音が響きわたった。
野次馬は騒ぐのをやめ、辺りは静寂に包まれる。
「なんだ?」
流石のリウも不安そうに呟いた。
次の瞬間、凄まじい地響きをたて大地が揺れ始めた。未曾有の大地震が街を襲ったのだ。 超大規模な停電が襲った上での大地震に、人々は災害情報を聞くことも出来ず、孤立した。
電気が消え静まりかえっていた大都市上海は、一瞬にして瓦礫の山と化し、炎に包まれた。 地震が襲ったのは上海だけでなかった。
中国沿岸にある天津などの、ありとあらゆる都市が軒並み壊滅したのだ。 だがそれは現実ではない。
すべては共産党政府が極秘で開発している仮想空間の出来事だった。
記憶操作をされたわずかな者たちを除きすべて虚構の世界だった。 / ̄ ̄\
/ _ノ \
| ( ●)(●) おっと そこまでだ
. | (__人__)____
| ` ⌒/ \
. | /( ○) (○)\
. ヽ / ⌒(n_人__)⌒ \
ヽ |、 ( ヨ |
/ `ー─− 厂 /
| 、 _ __,,/, \ ドス
| /  ̄ i;;三三ラ´ |
| | | ・i;j: | | 現実世界の李青豪ことハオは火事により散打生命を絶たれた元王者だった。 「チョンボ、お前はいいよな…。
なんかお前のことがうらやましいよ。
……。
おれなんかダメさ。
だけど、チョンボ…ま、いいよ。
いつまでも仲良くやっていこうぜ、な。」 この仮想空間に来る前までのメイファンは自由と愛を渇望する女性型ミュータント。
チョンボは少数民族出身の売れない発明家。
そしてシューフェンは元散打王の李青豪のファンだった少年。
…そして、習近平。彼だけは紛れもない国家主席本人だったが今は影武者にその座を奪われ失脚してしまった。 シューフェンは夢を見ていた。
この世が夢である夢。
夢は未曾有の大地震に見舞われた。
アスファルトが裂け、シューフェンを飲み込もうとする。
「シューフェン!」伸ばした手を男の手が掴んだ。「助けに来たよ」
「やっぱりあなたなのね」
嬉しそうに笑う彼女が見つめるその人はーー 酔拳の使い手、ジャッキーがすべて丸く納めてくれた。
彼は栄誉を称えられこの町の市長に抜擢されんだ。
しかし、彼は自分は適任ではないとそれを辞退。
ジャッキーの答を快く思わなかったギャングの元締、チョンは必要にまで嫌がらせを仕掛けてくるようになる ハオは少しずつ分かり始めた。
まず、ここはどうやら上海ではない。
かと言って、誰もが綺麗な普通話を話すので、僻地の町ではないようだ。
広東語を欠片も耳にしないのでおそらくは広州や香港でもない。
どこかわからないが、習近平はこの地に暫定政府を置き、何やら物騒なことを始めようとしている。
その計画に自分も取り込まれつつあることが何となくわかった。
メイファンは毎日ハオに稽古をつけた。
何かと言えば口癖のように「お前は中国政府の秘密兵器になるのだ」と言った。
「今日から私のことを老師と呼べ」
「お前が先生?」ハオはぷっと笑った。「呼んでたまるか」
この建物は広く、中を歩き回るのは自由だった。
研究員、偉そうなおっさん、雑用係、様々な人間がいて、普通に話も出来たが、ここはどこか? と話を振ると誰もが口をつぐんだ。
玄関は普通に解放されており、みんなはそこから普通に出入りしていたが、
ハオがそこから出ようとすると必ずどこからともなくメイファンが棍棒を持って現れ、尻やら鎖骨やらを激しく突いた。
周囲をしっかり確認しても、玄関から出ようとするとメイファンは忽然と現れるのだ。
もしかしてコイツ、瞬間移動の能力者なのだろうか? とハオはいぶかしく思っていた。 「お前の捌きのテクニックは天才的だ」
道場でメイファンはハオを前に立たせ、言った。
「が、今はまだ動物や雑魚には通じても、たとえば私のような猛者には通用せん。磨きをかけろ」
「あー、どうでもいいから」ハオは面倒臭そうに言った。「服を着てくれよ」
全裸のメイファンは無視して命じた。
「稽古を開始する。私が棒でお前を突く。お前はそれを捌いてみろ」
「ハイハイ」
虎の猛攻をすべて捌ききった自分が小娘の棒ごとき捌けないわけないだろ、そう思いながらハオは構えをとった。
掛け声もなくメイファンの棒が襲って来た。
「痛い!」
ハオの手は空を切り、先端に布を巻きつけた棒は、鎖骨に命中した。
声もなく無表情にメイファンは棒を次々と繰り出す。
「痛い!」
「痛っ!」
「やだ!」
「もう!」
「やめてください……!」
「なぜ虎の攻撃は捌けたのに私の攻撃はすべてヒットしたのか、わかるか?」
メイファンは泣いてうずくまるハオを見下しながら言った。
「動物は嘘をつかん。攻撃しようとする部位を見ながら攻撃する。ゆえに予測がつく」
「私はお前の脇腹を払う動きをしながら鎖骨を突き、チンポコを突くと見せかけビビらせておいて脳天を叩く」
「嘘つきに簡単に騙されるお前はテクニックがあっても弱い。まるで箱入り娘の格闘家だ。まずは世間の荒波に揉まれるがごとく騙されないことを覚えろ」 「もう……帰してください」
ハオは鼻水を垂らしながら懇願した。
「シューフェンのところへ帰りたい」
メイファンは笑いもせずに淡々と言った。
「大丈夫だ、5日も会わなければ女は次の男を見つける。忘れろ」
「シューフェンはそんな女じゃねぇ!!」
「女なんて例外なくそんなもんだ。今頃どうせ他の男と腰の振りあっこしてる。諦めろ」
「てめぇ!!!」
「女が欲しいなら私の姉のララを紹介してやる。私と違ってフェロモンぷんぷんの21歳だ」
ハオは激怒してメイファンに殴りかかった。メイファンはその腕を取ると、自分よりも遥かに大きいハオの体を軽々と持ち上げ、ゴミのように投げ捨てた。
「己を磨け。お前は中国政府の人間兵器となるのだ」 稽古が終わるとハオは汗を流すため浴室に入る。メイファンも一緒だ。
シャワーを使用する前に二人は体を寄せ合いキスをし、舌を絡ませる。
メイファンの背中に回していたハオの手が下におり、彼女の小さなお尻を撫で回した。
「俺はシューフェン一筋のはずなのに、体が勝手に動く」 「…はぁ、私もう我慢できない」
前戯ばかりでそこから一向に進まないハオにしびれを切らしたメイファンはハオを押し倒すと
上に跨がり、反り立つハオの男根を自分の中に入れた。 ジャッキーはそんな少年に同情していた。
私が稽古を付けてあげられたら…
そうだ、夕食後の小一時間なら拳を合わす事ができる筈だ。
そう思い立つなりジャッキーの足は少年の居住区へ向かっていた。
そしてその現場を見てしまう。 「月並みな妄想だな」
メイファンはハオの頭からもわもわと浮き上がっているエロいふきだしを棒で突き、パァンと割った。
「私は死ぬまでセカンドバージンの予定だ。特に『ハァ!?』などというふざけた名前の上に、美少女の前で鼻水垂らして泣くようなアホに抱かれるつもりはない」
「俺の名前は『ハァ!?』じゃねぇ! リー・チンハオって立派な名前があるわい!」
ハオがそう言うとメイファンの顔が一際険しくなった。
「貴様……なぜ騙した?」
「騙してねぇよ! お前が勝手に…」
「まさか貴様、アメリカのスパイか?」
「何だそりゃ!!」
「その上その名前、私が追っかけをするリー・ロンハオ様に激似で腹が立つ。殺す」
メイファンは棒を捨て、手刀に凍気を漲らせた。
死んだな、俺。そう思ったところへ習近平がやって来た。 習近平は青少年が殴り合うのを遠目からニヤニヤと笑って見ている。
「ケンカ、ダメ、分かる?」
二人の仲裁に入ったのはジャッキーだった。 ハオとメイファンは声を揃えて言った。
「ケンカと一方的な殺戮の違いもわかんないのかよ」
「ケンカと一方的な殺戮の違いもわからんのか」 ジャッキーはやれやれとため息をつくと
ハオとメイファンの秘孔を突いた。
「・・・なにをした?」
とメイファンは一瞬動揺したがすぐに平静さを取り戻した。 ジャッキーはニコニコ笑っている。
「あれ、体が」
メイファンは闘気を込めた手刀を突きつけようとしたが
からだに力が入らない。 「ヴヴヴヴヴ…」
ハオは白目をむき泡を吹きながら、
獣のような呻き声を上げだした。 ハオはメイファンを押し倒すと、そのお椀型の美乳のハリと滑らかさを味わい
激しいピストンのあとたっぷり中出しした。
メイファンはハオとジャッキーを地獄の果てまで追いかけてでも殺すと誓った。 まず、ハオの腹部に牛尾刀で切れ込みを入れ腸を取り出します。 「……どうしようもなく低俗な妄想しか出来ん奴らだな」
メイファンは棒でジャッキーの妄想を突いて割った。
「そして私が使うのは闘気ではなく凍気だ。相手に殺気すら私は悟らせん」
そう言うと机の上の紙切れを1枚手に取り、それをヒュッと振った。ジャッキーの首が落ちた。
「っていうか誰だお前。しまった殺す前に聞いておけばよかったな」 自分に与えられた部屋でハオは休んでいた。
普通にアパートのワンルームのような部屋で、家具もベッドもTVも備え付けられている。
「アイタタタ……ちくしょう。棒であちこち突きまくりやがって」
ハオは今日も部屋中を見回し、盗聴機やら隠しカメラを探したが、やはり見つからない。
「絶対あるはずだ。くそっ、オナニーも出来やしねぇ」
すると外からドアがノックされた。
「入んなボケ」とハオは答えたが、答える前にドアが開き、オドオドしながら一人の女性が顔を覗かせた。
「入っちゃ……ダメですか?」
どこか見覚えのある知らない女性の顔にハオはうろたえた。
「あっ……ごめんなさい。どうぞ。っていうか誰……」
「っていうか。もう入ってました。ごめんなさい」
そう言いながら女性は入って来るとペコリと頭を下げ、、自己紹介をした。
「ラン・ラーラァーと申します。みんなは私のことをララと呼びます。妹が痛い目に遭わせてごめんなさい」 「あぁ……糞メイファンのお姉さん? 21歳の」
ララは頬を赤らめ、「なんで……歳まで……」とうつむいた。
メイファンと同じ顔だ。しかし雰囲気はまったく違う。
猛獣のような目をしたメイファンに比べると、ララはいつも優しく泣いているような目をしている。
何より体つきが違った。すばしっこい黒豹のような妹に対し、姉は白く、ほんのりと桃色も混じり、そしていかにも草食系だ。
乳牛のような柔らかさとインパラのような華奢さを兼ね揃えていた。
「え……と……」何をしに来たのかな? と目で聞くハオに気づき、ララは慌てて言った。
「あ、あの。ハオさんの手当てをしてあけるよう言われて……来ました。ご迷惑なら帰りますけど……」 香港TV局マウスTVに契約をしているタレントのチ・マン。
彼は8年契約をしているのにも関わらず、1年経過しても何の仕事ももらえずにいた。
そんなある日キャットTV曲からクイズの司会の仕事を請け負う。
これが中々人気を博し、チはマウスTVに契約解除を申し出る。
しかしあと7年も残っているとこいことで即座に却下されてしまった。
そこでチは自称発明家の弟チョンボと共にマウスTVに忍び込み、金庫から契約書を盗み出す計画をする。
返送して侵入し契約書を持ち出したもののボディガードに見つかり、逃走。
チョンボは咄嗟に隠れた金庫に閉じ込められてしまう。
チョンボの彼女は兄のミヤケのロンと手品師としてショーをして稼いでいた。
チ・マンはロン兄弟のところに行き金庫を開けてくれと懇願する。
その間にもボディガードに追われているチは再び逃走、逃げ込んだ場所は生放送の番組だった。
はちゃめちゃになった番組だったが、弟が作った謎の笑いガスを仕掛けたため会場は大爆笑。
このことがきっかけでマススTVの会長から局長になってくれないかと頼まれるのだった。 ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています