「なんでそんな物が列車にあるんだ?
ナイフと交換してくれ。」
「倒木が線路にあった時の為です。
後は・・・刺又が二本有ります。」

そこにヒルダと斉藤達もやってくる。

「連中の弓矢を三セットばかり奪いました。
扱ったことのあるのが姫様だけなので・・・」
「あら、私も使えるわよ。」

乗客の中から恰幅のよい主婦が名乗りを上げる。

「多少、ブランクがあるけどJK時代は弓道部だったから。
和弓だから勝手が違うかもだけど、心得がない人よりはマシでしょ?」

JKと言われて浅井、斉藤、久田が顔を見合わせるがヒルダが弓を主婦の市原に渡す。
狭い通路で使うのだから期待は出来る。

「てつはうもまだ2個あります。
直接、投擲する必要がありますが。」

色々とツッコミたいところがあったが、てつはうは土器で出来ているし火薬自体はすでに大陸でも流通しているので大陸技術流出法には違反していない。

「乗客の中に七人ばかり冒険者をしている日本人もいます。
今は貨物車から彼等の武器を持ち出させています。
日本刀や薙刀とか持ってきてましたね。」

転移から九年、大陸進出してくると六年も経過すると色んな日本人が出てくる。

「前方車両のドアを守らせてくれ。
乗客の移動は勘づかれないように頼む。」
「浅井さん壁が破られた!!
連中が入ってくる。」
「八号車両客室を放棄!!
鍵を掛けて、七号車両で抵抗線を作るぞ。」

通路ならケンタウルスも自由に動けずこちらが有利だ。
腕時計で時間を確認する。

「通報から45分・・・」



族長トルイは些か焦っていた。
連れてきた兵は自分も含めて70騎ばかり、既に戦死が18騎、負傷して戦えないのが16騎。
戦でもないのに半数がやられたことになる。

「大損害だ。
割には合わん・・・」
「族長、もう退くべきではないか?
今なら近くの村でも襲って首をとって日本人ということにしておけば面目は立つ。」

顔は焼いとけば問題はない。
女はその場限りになるが、事が済めば口を封じればいい。
日本人どもにも一矢を報いた。

「よし退くか、角笛を」
言い掛けたところで先頭の機関車が煙突から煙を吹き出し、下方からは水蒸気を噴出させ始めた。
バリケードからは数人の人間が機関車に駆け出している。