「黒雪姫」
 大きなベッドに黒雪姫が仰向けに寝転がっていた。不貞腐れたような顔で、すこぶる機嫌は悪い。
 その裸体に群がるのは七人の小人であった。額に汗して奉仕に努める。
 黒雪姫がわざとらしい溜息を吐いた。
「おい、右の乳首を吸ってるおまえ。もっと心を込めろよ」
「わ、わかりました」
「歯は立てるんじゃねぇぞ」
 言い足りない不満は溜息で紛らわした。
 黒雪姫は頭を少し浮かせた。股間に顔を埋めていた小人の横っ面に膝頭をぶつけた。
「おまえは犬か。舐めるだけしかできないのかよ。技巧を駆使しろ」
「す、すみません」
 痛む頬を摩りながら頭を下げた。小人は言われた通りに舌先に微妙な変化を加える。
「少しはマシになったな。やればできるじゃねぇか。もう少し励んだらバイブ役に任命してやるぜ」
 直後、黒雪姫の表情が苦痛に歪む。柳眉を逆立てて左を睨み付ける。狙い澄ました肘が小人の頭頂を捉えた。
「てめえは揉み過ぎなんだよ! 爪を立てるな! おおおおい、俺の新雪のような肌に爪痕が残ってるじゃねぇかっ!」
「ご、ごめんなさい。許してください」
「許すか、ボケッ! てめえはクビだ。森で野垂れ死んでろ!」
「そ、そんなぁぁ」
 気配を絶っていた屈強な二人が小人の両腕を拘束した。足が宙に浮いた状態で部屋から連れ出されていった。
 他の小人達は横目で見ながらも黙々と作業を続けた。明日は我が身という言葉が魂に刻まれていたのだ。
「にしても、つまんねぇな〜。もっとマシな小人はいないのかよ。明日は森で小人狩りだな」
 腹黒い本性を隠そうともしない。黒雪姫は品の良い唇をひん曲げてクククッと嗤った。

「ないわー。こんな世界はあり得ないわー」
 テレビの画面に向かって不満を零す。
 展開についていけなくなったのか。持っていたコントローラーを投げ出した。
「おい、黒雪姫! いつまでゲームしてんだ! 出番だぞ!」
「またなの? 今日は三回目なんだけど」
「これが見えないのか」
 小人は自分の股間を指差した。一部がこんもりと膨らんでいる。興奮の度合いが見て取れた。
 黒雪姫は大きな溜息を吐いた。
「はいはい、わかりましたよ。住み込みの条件ですからね」
「他の小人も待っている。早く用意をしろよ」
「わかってますって」
 部屋を出る間際、小人は舌打ちした。黒雪姫は逆撫でしないように媚を含んだ笑いを見せる。
「はあ〜、これが現実なのよね。ホント、性奴隷は楽じゃないわ〜」
 ボリボリと頭を掻きながら黒雪姫は部屋を出ていった。