マキリニテアトーは彼女を小馬鹿にする様に、小さく笑った。

 「予知魔法使いは本来長い時間を掛けて、『未来を見る目』を養う物だ。
  気の遠くなる様な観察と考察の果てに、漸く僅かに未来を予感出来る様になる。
  だが、リン・シャンリーが目指していた予知魔法使いは、そんな生易しい物ではない。
  彼女は私を超越しようとしていた」

 「超越!?」

驚愕するジラを睨み付けて、彼は続ける。

 「予知魔法の究極は、未来を己が思う儘に導く。
  そこで2人の予知魔法使いが搗ち合い、同時には適えられない相反する予言をしたら、
  どうなると思う?」

ジラは数極思案して答えた。

 「……どちらかは外れる……」

 「そうだ。
  何れかは敗れ、予知魔法使いの資格を失う。
  予知の出来なくなった予知魔法使いは、死す他に無い」

 「何故……?」

高が予知を外した位で、どうして死ななければならないのか、ジラには解らない。

 「共通魔法使いには解らないか?
  翼を失った鳥、脚を折った馬、牙を抜かれた虎の定めだ。
  その命は魔法と共にあり、魔法失くして生きては行けない。
  それが真の魔法使いなのだ」

マキリニテアトーの言葉を聞いても、彼女は納得出来なかったが、これ以上理由を問うても、
同じ事を言われるだけで無駄だろうと察した。