物流「大動脈」山陽線が寸断 暮らし・経済に大きな打撃
2018年7月16日16時13分

https://www.asahi.com/articles/ASL7G7642L7GPLFA002.html


JR西「復旧計画まだこれから」

 「被災状況はほぼ把握できたが、再開にどのくらいの期間がかかるかは、まだこれから」。
JR西日本の担当者はこう述べ、山陽線も含めた復旧計画の策定を急いでいる。
18日に来島達夫社長が記者会見し、路線や区間ごとの大まかな復旧見込みを公表する予定だ。

 JR西日本で復旧に1カ月以上と見込まれるのは、広島県を中心に岡山県や山口県などの10路線11区間。
大動脈の山陽線は、広島の三原駅と海田市(かいたいち)駅間(延長約65キロ)で土砂流入や盛り土崩壊が相次ぎ、復旧まで数カ月と見られている。

 利用者の多い区間では、土砂を取り除いて安全確認ができれば、折り返し設備のある駅との間で順次運行を再開している。
比較的早く復旧した山陽新幹線は、広島―福山(広島県福山市)間などで在来線の代行輸送をしている。
不通区間の定期券があれば新幹線の自由席に乗ることができる。

 鉄道被害は地域の足を奪った。広島県東広島市の県立河内(こうち)高校は153人の生徒の大半が
JR山陽線を利用しており、登校できない状況が続いている。
鉄橋が流されたJR芸備(げいび)線は、復旧まで1年近くかかると見られている。
広島県三次(みよし)市から広島市まで芸備線で通う女子中学生(13)は高速バスに切り替えたが、「往復で約3千円かかるので金銭的にきつい」と話す。

 JR四国の被害も深刻だ。愛媛県を中心に、主な豪雨被害は約20カ所にのぼる。
同社幹部は「発足30年、これほどの被害は記憶にない。過去最大級ではないか」と話す。

 高松市から松山市を経て愛媛県宇和島市までつづくJR予讃(よさん)線は、JR四国の幹線だが、香川県内で鉄橋が傾き、復旧まで数カ月とみられている。
宇和島市で22〜24日に予定されていた「うわじま牛鬼まつり」は、昨年は延べ20万人を超える人が訪れたが、今年は中止に追い込まれた。

 JR四国は1987年の旧国鉄の分割民営化による発足以来、本業の鉄道事業で黒字になったことがない。
今年3月期の決算では、昨年9月の台風18号などの豪雨災害の復旧工事費や災害対策費の影響で大幅減益となり、営業損益は99億円の赤字だった。
今回の被害について、担当者は「経営面への影響はまだ何とも言えない」と話すが、今後、復旧費用が重くのしかかる。